約物の多くは、漢字やひらがなのように正方形、すなわち全角ではなく半分の幅で、その前か後ろを半角空けて全角扱いにします。実はこの約物の空きの使い方が日本語を読みやすくするかしないかに大きく関わってきます。今回、その約物の一つ、ダブルコーテーションの最近よく目にする使われ方について紹介します。
1は誰が見ても間違いだと分かります。実は雑誌などで3もよく見かけますが、1と同じように間違った組み方で、よこ組専用の約物をたて組で無理矢理使用した例です。それぞれたて組で使用する際の正しい向き、約物は、2と4になります。
テレビのテロップに注目してください。各局、番組制作会社ごとに特徴があります。中でもNHKのテロップでのダブルコーテーションの扱い方は、受けの位置が通常と異なり下がってます。NHKの担当者の方の話しでは「視聴者が濁点と間違える恐れがあるから意図的に下げている」ということです。このようなところにも、相手にあわせた配慮があります。このように、ルールや基礎を知った上でアレンジをして約物を使用している例は他にもありますので、探してみるのも面白いかもしれません。
次に、行頭や行末の組版ルールを紹介します。みなさんもご存知の通り、日本語には「段落の頭は1文字空ける」や「句読点は行頭にきてはいけない」など基本的なルールがあり、市販されているDTPソフトの多くは、「禁則処理」機能で自動的に処理してくれます。では、こうした禁則処理の役割を学んでいきましょう。
雑誌なのでベタ組みにこだわらない場合は前の行に全角約物がなくても、約物以外の字間をつめて追い込む場合もあります。
現在ではDTPソフトで自動的に禁則処理が行われるようになりましたが、本来はその本や媒体の目的に応じて使い分けるべき機能です。たとえば「天付き」や「地付き」の処理にこだわりすぎると、書籍ではかえって文字がばらけて読みにくくなるため、特にタテ組の文章は行末が不揃いでもあまり目につかないので、「天付き」処理はしても、「地付き」処理までしないのが一般的です。 その反面、ポスターや雑誌などデザイン性を重視するものは、行頭、行末が不揃えになることを極力さける目的で「天付き」「地付き」の両方の処理を行っているものが多くなっています。いずれにしてもどの処理が正しいというわけではなく、ソフトを使う人自身の目で判断することも必要でしょう。
今回の連載では、文字情報を伝達する上で陰ながら活躍する組版の重要性を紹介しました。しかし、専門家が必ず携わっていた活字や植字時代と違い、誰もがパソコンを使って組版が行える時代になった今、流通している組版の質が低下しているといわれています。そこで次回は、ブックデザイナーとして著名な祖父江慎さんに、そのプロフェッショナリズムをお伺いします。
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