今回のブックカバーコンペティション『Book in TYPO Award』でグランプリを受賞した松本隆応さん(24歳)。専門学校でグラフィックデザインを学んだ後、デザイン会社に勤務していらっしゃる若きデザイナーに、今回の作品や、フォントに対する想いを伺いました。
グランプリ受賞作『ゲーテの詩、詩のゲーテ。』ですが、どのようなコンセプトのもとでお作りになったのでしょうか?
松本:コンペの課題が「文字が活きたデザイン」ということで、まずは自分なりに「フォントの良さって何だろう?」と考えることから始めました。その答えが、僕にとっては「ウェイトの幅広さ」だったんです。それで、文字の太さや濃淡を活かした作品を作ることにしました。
文字がズラッと並んでいますね。
松本:文字をパターンのように配置して、その濃淡で作者ゲーテの図を浮かび上がらせています。文字と作者、両方が活きてくるようなデザインにしました。
様々なフォントがあるなかで、今回MB101を使用した理由は?
松本:MB101はウェイトの幅がとても広いため、デザインの自由度が増して使いやすんです。それと、一番太いウェイトのものがすごく力強い。
実際、今回の作品にも力強さが活きていますね。ブックカバーにするということで気にされた点はありますか?
松本:ブックカバーって、本の表紙を隠してしまいますよね。表紙を隠してしまったら、本を読んでいる人しかその世界を楽しめなくなってしまうので、本の外側にいる人も楽しめるようなデザインにしたいと思いました。このブックカバーをつけた本を持った時に、本を持っている読者の距離感だとゲーテは浮かびあがらないんですが、電車などで向かい合って座っている人の距離感だとゲーテが浮かび上がってくるようになっています。
このブックカバー付きの本を持っている人以外にも、しっかり伝わるものになっていますよね。
松本:そうですね。自分ももともとは、「とにかく自分の中でかっこいいものを作りたい」と思っていたんですけど、デザインを学んでいくうちに、「人に伝えるためにはどうすればいいのか」を考えるようになっていきました。
それこそが、デザインをする上で常に意識されていらっしゃる点でしょうか?
松本:人と人とを繋ぐものとしてデザインがあると思っているので、人に言葉で説明できるようなデザインを必ず心がけています。アートではなくデザインなので、ただ単純に自分の作品を出して「いいでしょこれ」だけではいけないと思っています。
「人と人とを繋ぐものとしてデザイン」の中で、松本さんがフォントにひかれるのはどういうところですか?
松本:デザインする上で、適切なフォントを選択をして然るべき処置を加えると自分のデザインが無限大に広がっていく、そういうところがすごく魅力的ですね。伝えるための本当に重要なマテリアルの一つだと思います。文字自体がすごく理論的で、理由があってこういう形になっているんだっていう部分がすごく面白いですね。
それでは最後に、デザイナーではない一般の読者の方々にフォントの魅力をお伝えいただけたらと思います。
松本:よく言われる例えですが、デザインする側の視点から考えた時に、料理に似てると思っています。フォントの良さを生かすも殺すも使う人次第で、フォントってグルメだなと思って。
なるほど。
松本:だから料理と一緒で、フォーマルな料理だったりカジュアルな料理があったりするように、フォントも明朝のようにすごくかっちりしたイメージだったり、ディスプレイ書体みたいにすごく華やかな感じのものもあったりして面白いんです。そうやって料理と同じように、フォントを味わってみてもらいたいですね。
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