貪欲すぎるLiLiCoの才能 人は苦難をどこまで受け入れられるのか

TBS『王様のブランチ』の映画コーナーでお馴染み、いつもパワフルかつ軽快なトークで視聴者に笑いと元気を与えるタレント・映画コメンテーターのLiLiCo。しかし、ご存知だろうか、今や超大物ハリウッドスターの取材やイベントに引っ張りだこの彼女が、駆け出しの頃5年もの間、ホームレスで車上生活を送っていたことを。公園の水道で体を洗い、サービスエリアのお茶で飢えをしのぎ、夜はスナックやカラオケバーのどさ回り営業で歌わせてもらうことで、子どもの頃から夢だった歌手への道を繋いできたのだ。

そんなLiLiCoが、「渋滞学」という独自の学問を追究する、東京大学先端科学技術研究センター教授・西成活裕とコラボレーションする。それに先立ち、LiLiCoが「渋滞学」に触れたことで感じた思いの丈を、単独インタビューさせていただけることになった。

森羅万象を「渋滞」というキーワードで結びつけ、MUJICOLOGY!研究所所長としても活動する西成の「渋滞学」を、果たして5年間車中生活を続けたLiLiCoはどう感じ取ったのか。テレビでは決して見ることのできないLiLiCoの「強さの秘密」に迫る、貴重なインタビューをぜひご覧いただきたい。

2020年の『東京オリンピック』、今のままだと本当に心配です。「おもてなし」とか言っているけど、その前に基本的な「思いやり」がないっていうところで。

―タレント・映画コメンテーター・歌手と、多方面で活躍をされているLiLiCoさんですが、今日はテレビではあまり見ることのできない一面を引き出すべく、いろいろとお話を伺いたいと思っています。

LiLiCo:どうぞ、何でも聞いて下さい(笑)。よろしくお願いします!

―LiLiCoさんは4月に、東京大学で「渋滞学」を研究されている西成活裕教授と、イベントでの対談が予定されていますね。「渋滞学」は、交通渋滞だけでなく、社会や環境に存在するさまざまな事象や問題を、「渋滞」というキーワードで研究・改善していく画期的な学問として注目されています。LiLiCoさんとの対談は意外な組み合わせにも感じたのですが、「渋滞学」についてどのように感じられましたか?

LiLiCo:すごく勉強になりましたし、面白かったです。私は国土の面積が日本の倍以上もあるスウェーデンの生まれなので、何十キロの渋滞なんて日本に来るまで見たこともありませんでした。「先頭の人は何やってんだろう?」と、いつも不思議に思っていた渋滞が、みんなで車間距離を保ったり、強引な車線変更を減らすといった「思いやり」によって緩和できるなんて、ちょっと感動的でしたね。ただ、「思いやり」ということにおいては、まだまだ私たちにも課題があるんじゃないかとも思いましたが。

―と、いいますと?

LiLiCo:私は日本に住んで26年になるのですが、昔と比べて「思いやりのある人が減ったなぁ」って如実に感じるんです。特に雨の日なんですが、私が日本に来たばかりの頃は、道ですれ違うときに傘を斜めに傾けて通りやすくしてくれることが多かった。だから狭い道で混んでいても、けっこうスムーズに歩けた記憶があります。でも今は、傘同士ぶつかり合ってでも強引に行こうとする人が多くて、余計渋滞になってしまっているんですよ。些細なことですけど、一事が万事こういう感じだと、みんなイライラして「お前がそうするなら俺もそうする!」っていう悪循環になるのは当然ですよね。

―たしかに、特に都心部などでは人口密度が高すぎて、思いやりが希薄な世の中になってしまっている気がします。電車のドアでも先に降りる人を待たない人が本当に増えましたよね。

LiLiCo:そうなんですよ! 今は、車掌さんが「降りる人を先に通してから乗ってください」って、当たり前のことをアナウンスしなきゃいけない時代になってしまっていて(笑)。変ですよね……2秒考えればわかることを、どうして考えようとしないのか。私は2020年の『東京オリンピック』、今のままだと本当に心配です。「おもてなし」とか言っているけど、その前に基本的な「思いやり」がないっていうところで。

LiLiCo
LiLiCo

―結局、みんなで「思いやり」を軽視する方向に飲み込まれちゃっている。テクノロジーの進化でいろんなことが便利になって、1人でもある程度生きていける世の中になったことも原因の1つかもしれません。

LiLiCo:私は世の中が便利になることや、それを求めること自体は、決して悪いことじゃないと思います。できたら歩きたくないし、考えたくないし、何もしたくないって思うのは普通だし、別に止めようとも思いません。でも、何が残念かって、こんな小さな国の中に人がいっぱいいるのに、お隣さんと友達になろうとすら思っていないことなんです。友達にまでならなくてもいいけど、お近づきになるどころか離れようとしているでしょう。それがすごく寂しいなって。

―正論だと思います。また、こういうことをちゃんと注意できる人も減ってきてしまっているのかもしれませんね。

LiLiCo:「人に優しくすることって格好いいじゃん!」って思いませんか? エレベーターのドアを開けてあげるとか。でも今、そんなことを大きな声で言ったら、たちまち「ウザいことを言う人だ」って煙たがられてしまうのもわかります(笑)。わざわざそんなことしなくたって普通に生きていける。でも、今の日本の人たちにとって「ウザいこと」であっても、大事なことは伝えてあげないといけない義務があると思う。だから私はこれからもガンガン「ウザいこと」を言っていこうと思っていますよ(笑)。

だって、私5年間もホームレスをして車で生活していたんですよ!? 最悪そこに戻ったとしても、全然やっていける自信はあります。

LiLiCoさんと言えば、自著『ザリガニとひまわり』でも触れられていた、幼少時代の家庭崩壊に始まって、学校でのイジメ、日本の来てからの5年間のホームレス時代など、あまりにも壮絶すぎる人生が有名です。一方、先ほどからお話をお伺いしていて感じるのは、すごく前向きな性格の持ち主なんですね。

LiLiCo:良く言えば前向き。悪く言えばスキのない可愛くない女なんですよ。今年の目標としてスキを作ろうと思っていたんですけど、やっぱりできない(笑)。自分がキチンとしてないな、甘えているなって感じちゃうと、バチが当たるんじゃないかって心配になってしまうんですよね。

―あれほど壮絶な経験ばかりされていて、挫折したり、腐りそうになったことはないんですか?

LiLiCo:腐りそうに? ……うーん、この仕事を好きだから頑張っているわけで……。仕事に対して挫折とか、もうやりたくないっていうのはないです。

―すごい(笑)。そんなLiLicoさんを作り上げたのは何だったのか? というところに興味があります。環境だったのか? 持って生まれた性格なのか? あえてターニングポイントをあげるとするなら、どこになるでしょうか?

LiLiCo:たぶん、歌手を目指して日本にやって来て、5年間ホームレスで車中泊だった時代のマネージャーとの営業経験だと思います。

―『ザリガニとひまわり』にも登場するパンチパーマの守さんですね。

LiLiCo:そうです。あの人は厳しかったですね。もう、しょっちゅう殴り合いの喧嘩をしてましたから(笑)。でも、日本で歌手になるって心に決めて、言葉も文化も何もわからないままスウェーデンからやってきた私にとっては、守さんしか頼る人がいなかったんですよ。礼儀作法だったり、ステージでの表情だったり、「赤いものでも、俺が青といえば青なんだよ!」って、ほとんどマインドコントロールに近いようなやり方で……。「なんだクソ!」って思いながらも、でも、売れるんだったら、やってみる価値あるじゃないですか。じゃあやってみよう。そうしたらうまくいくわけですよ、やっぱり。

―今振り返ると、そこで……。

LiLiCo:厳しくなりましたね、自分自身に。あのときは売れるために1か月半で23キロもダイエットしましたからね。今なんて2キロも痩せられない(笑)。今は付き人もスタイリストもいないし、メイクも自分できるし、洗濯だって、仕事現場への交通手段だって、全部自分でやってしまうんです。もちろん、お金を払って、マネージャーにやってもらうこともできますよ。でも、ここでダラダラしてしまうと、これまで積み重ねてきたものが、全部崩れ落ちてしまうんじゃないかという怖さもあるんです。

―もし、今の仕事が続けられなくなってしまったとしたら、どう考え、どうされると思いますか?

LiLiCo:ふふふ、意地悪な質問ですね(笑)。でも、大丈夫だと思います。だって、私5年間もホームレスをして車で生活していたんですよ!? 最悪そこに戻ったとしても、全然やっていける自信はあります。それに、ずっとこの状態でいられるなんて全然思っていないんですよ。たまたま2年前に、私みたいなハーフで怒りキャラが他にいなかったから、テレビの世界でハマっただけなんです。いつか飽きられてしまう日は来るでしょうし、新しい魅力的な人もどんどん芸能界に入ってきますから、いずれ埋もれてしまうかもしれません。それでも、自分がここまでやってきた努力は本物なわけじゃないですか。だから、今度はその努力と、これまでの経験や知識を合わせれば、何だってできると思うんです。夢がある人は、もちろん、死ぬほど努力してその夢を実現させてほしい。でも、その夢が叶わなかったとしても、それですべてがゼロになってしまうわけではないと思うんですね。

LiLiCo

何かを犠牲にできないなら、その夢は結局自分にとってそれほど叶えたい夢ではなかったということだと思うんです。

―LiLiCoさんの人生にとって、「夢」は重要なキーワードなんですね。

LiLiCo:最初に渋滞の話をしましたけど、今あらためて過去を振り返ってみて、遠回りだったかもしれないけど、自分はいい渋滞にハマっていたんだな……って、思いました。駆け出しだった頃は、仕事もないし、お金もない。恋人どころか友だちもいない。持っていたのは、寝泊り兼移動用の車と、「絶対に芸能界で成功するんだ」という一途な夢だけでした。本当に辛くて、ふとした瞬間、悲しい気持ちでもないのに、涙が自然と溢れてくるんですよ。当時は、「芸能界で成功すること」と「生きること」が、ほぼイコールで結ばれていたような気がします。

―夢に向かって一歩ずつ進みつつ、行き詰まってもいたんですね。夢を追い求める人なら、誰もが陥る状態なのかもしれませんが、その頃を振り返ってみて、結局何が今に繋がっていったと思いますか?

LiLiCo:「自分の目指しているゴールにたどり着くために、どれだけの犠牲を払えるのか」ということだと思います。夢を叶えるためには、その倍以上の何かを犠牲にしなければいけません。時間やお金はもちろん、恥やプライド、ときには恋愛や友情みたいなものも、秤にかける対象になるかもしれない。私はヌードだって、死体役だって、何でもやってきました。所持金が43円になっても、ショーパブで白鳥のコスプレで踊ることになっても、スウェーデンに帰ろうとは思いませんでした。何かを犠牲にできないなら、その夢は結局、自分にとってそれほど叶えたい夢ではなかったということだと思うんです。

LiLiCo

―「休みたい」って思うことはないんですか?

LiLiCo:仕事に関して言えば、まったくないですね。私は、今いる芸能界という場所に、憧れて憧れて、死ぬほど努力して、ようやく立つことができているんです。人気商売ですから、どれだけ頑張っても報われない人が星の数ほどいる中で、いまだにちゃんと仕事をいただけているんですよ。それで「お休みしたいです」なんて言ったら、罰が当たるどころか、神様に直接、石のハンマーかなんかで頭を叩き割られますよ。

―なるほど(笑)。

LiLiCo:この間、インフルエンザにかかっちゃったんですけど、もう自分の中で、大失態だと思いましたよ。出張はダメになるわ、スケジュールはずれるわ、各方面に大迷惑をかけてしまいまして。これは怒られても仕方ないなって思っていたら、誰も「それは、休めってことなんだよ」って言うだけで、私を怒らなかったんですよ。もう、その状況に頭がきちゃって。「なんだこの甘やかされ方は……おい、LiLiCo。お前、周りの人が優しいからって、それに乗っかるわけ?」って試されている気がしたんですよね。だから結局、最初の1日だけ寝て、次の日からはずっと家でできる仕事をしていました。

―す、すごいですね……。

LiLiCo:私が最近、自分のテーマにしていることは、「未来の私のために」なんです。未来の私っていうのは、5年後とか3年後じゃなくて、明日の私でいいんです。「明日の私のために、今日できることは全部やろう」って思いながら生きると、不思議といいことがあるんですよ。仕事が終わって深夜近い時間に家に帰ると、次の日も仕事なのですぐ寝ちゃうのが普通です。でもそこで、もうひと踏ん張りして、来週までに観ておかないといけない映画のDVDを観たりするんです。そうすると、本来、そのDVDを観ようと確保していた時間に、飲み会のお誘いが入ったりする。行くと、今度はそこで会った人と仕事が生まれたりするんです。そういうことが何回か続いたので、これは、ちょっと続けていこうかなと思いましたね。

今でもずっと歌手で成功をしたいと思っていますよ。そのために、映画コメンテーターという仕事は回り道なのかもしれない。でもそこで出会った人たちはいい人ばかりで、ラッキーだったと思います。

―ずっと歌手になることを夢に頑張ってこられたLiLiCoさんは現在、映画コメンテーターとしての活動を中心にされています。ぶしつけな質問かもしれませんが、今のご自身については、どのように感じられているのですか。

LiLiCo:つまり、私は成功していないんですよ。歌手として活動していますけど、ヒット曲があるわけでもない。「いただいたお仕事は何でもやってみよう」と思ってやっていたら、映画コメンテーターとしてお仕事をいただけるようになったということなんです。でも私は、今でもずっと歌手で成功をしたいと思っていますよ。そのために、映画コメンテーターという仕事は回り道なのかもしれない。でもそこで出会った人たちは、みんなすごくいい人ばかりだったので、ラッキーだったと思います。

―夢を実現するために、何かを「受け入れる」ということについて、LiLiCoさんは寛大な人なんじゃないかと思うんです。駆け出しの頃の経験しかり、歌手以外の仕事にしても、映画のコメンテーターにしても。

LiLiCo:人生で大変な経験をしてきたことが、逆にラッキーだったと思っています。何でも受け入れられますよ(笑)。大胆に言えば、苦手な人の方がちょっと興味あるんです。「この人とは絶対に友達になれないけれど、なんでこんなに性格が悪くなってしまったんだろう?」って。これはもうインタビュアー魂だと思うんですけれど。映画『キャプテン・フィリップス』で、ソマリアの海賊が貨物船をジャックして船長を人質に取ったりしているのに、でも最後に感動して涙が出るのは何でだろう? って。海賊の人たちも過酷な状況に追い込まれていて、シージャックをしないと生きていけない。だからその人たちの悲惨な人生もそこにはあるんですよ。もちろんジャックするのはだめですよ。でも性格が悪くなった人たちも、何かしらの理由があると思うんです。お父さんと戦っていたとか、周りに悪い友達ばっかり置いていたとか。私が仲良くさせていただいているある方は、親とすごく仲が悪かったそうなんです。私も親とすごく仲が悪かったから、やっぱりそういう人とは何か感じ合えるところがあるんですよね。

―今日、LiLiCoさんのお話を聞いていて、「想像する」ことで、本当に世界の見え方って変わるんだなあって、あらためて思いました。

LiLiCo:映画は私の視野を広くしてくれます。私、興味のないことって基本的にはないというか、なくそうとしているんですよ。興味がなくてもそこに行ってみよう精神というか。幕張メッセでいろんなショーをやっているじゃないですか。自転車を持っていないし、欲しくもないのに、自転車ショーとかに行ってみるんですよ。で、そこに行くと、サドルが何百個とか並んでいて、それを見つめている男性たちがいて、「どれでもいいじゃん」って思うんだけど(笑)。でも、ちゃんと見ていると、なるほど、この男性は通勤で自転車を使っていて、一生懸命サドルを選んでいるんだなって、そういう世界もあるんだなって思えてくる。そうすると道で自転車が倒れていたりすると、このサドルも一生懸命選んだ人がいたのかなって思えて、起こしてあげたりとか。さすがに何台も倒れていたら嫌だけど(笑)。

LiLiCo

―もう、その貪欲さは才能でもありますね(笑)。普通、やっぱりそこまで思わない人もいるわけじゃないですか。コメンテーターという仕事も、ものすごく幅広い対象を相手にするわけで、相当大変な仕事なんだろうなって思います。

LiLiCo:コメンテーターなんて誰でもできると思われているように感じることが多いんですけど、そんな簡単にできませんよ。テレビで話す技術って、めちゃくちゃ高度なものを要求されるんです。大体みんな初めはもうロボットみたいになっちゃって(笑)。

人生でいいことなんて勝手には何一つやってこないですよ。私は自分で人生を楽しもうとしているから楽しくなるだけで、全部自分で作っているんです。

―LiLiCoさんが、初めてコメンテーターの仕事をされたときは、どうだったんでしょうか?

LiLiCo:いやもう酷かったですよ。喋れないですもん。人様の作品を母国語じゃない言葉でどうやって人に伝えればいいんだ? っていう話で。それはもうディレクターさんやいろんな方に教えられたり、自分で言い方を学んで知恵にして。

―コメントされるときに気をつけていることってありますか?

LiLiCo:「私、この映画が好きだから紹介します」って、やっているわけじゃないんです。日本には1億3000万人くらいの人がいて、趣味なんてそれぞれですから、人の好みとは関係なく伝えないといけない。だから、ただ「面白かったです」とは言わないようにしています。それじゃ私と趣味を共有している人にしか伝わらない。でも、「今はちょっと振られてしまって、恋をするのは疲れちゃったなって思っているかもしれないけれど、この映画を見たら、もう一度新しい恋をする勇気がもらえるよ」って言われたら、「あ、なるほど」って、誰でもわかるじゃないですか。『ワイルド・スピード』みたいなカーアクション映画なら、「このままビールジョッキ3杯いけるよ!」って(笑)。たぶん大事なのはそこなんですよ。視聴者と映画をどうやってつなげるのか。

―素晴らしいですね。まさに「メディア=媒介」の仕事というか。

LiLiCo:こういうタイプの人がいなくなっちゃだめだなって思いますよ。自分の好みだけでしゃべっている人が非常に多いので。

LiLiCo

―そうですね。特に今はネットの影響もあって「一億総批評家時代」とも言われていて、どうしてもみんな批評家になりたがってしまう。それがいい部分も勿論あるんですけれど……。

LiLiCo:私は、悪く言うのは素人だと思っているんですよ。どうしても言いたかったら飲み屋で言えばいいんです。あの映画は自分に合わなかったとか、「あの主人公、甘くない!?」みたいな、共感できないことだっていっぱいありますよ。それはそうですよね、私自身はこういう人生で、自分の基準で物事を見ているわけですから。でも、映画を観ているときは、素人目線のLiLiCoとプロ目線のLiLiCoがいて、さらに女性のLiLiCoと、男性のLiLiCoと、オカマのLiLiCoがいるんですよ。だから、私はオカマちゃんとも気が合うし、よく「あんたはオカマの中のオカマよ!」って言われるんですけど(笑)。あと、レズビアンにも気に入られますし、おじいちゃんやおばあちゃんも、「LiLiCoちゃん!」とか言ってくれて。

―今日はLiLiCoさんのことをたくさん伺ってきましたけど、お話を伺えば伺うほど、懐の深い方だなあ……という印象で、ひょっとしたら本当のLiLiCoさんはまだ他にもいるんじゃないか、っていう気もしているんです。

LiLiCo:そうなんですよね~! でも、そこは謎のままですよ(笑)。ひょっとしたら私はLiLiCoを作り上げていて、今話しているのは、そのLiLiCoかもしれない。じつは家に帰ったら、「あ~~~」とか言ってるのが本当のLiLiCoの姿かもしれない。でも、もしそうだったとしても、LiLiCoっていう1人のタレントを作り上げるのもプロとしての仕事です(笑)。

―もし、本当のLiLiCoさんがいたとして、その心を動かす作品、映画でも本でも何でもいいんですけれど、フェイバリット作品ってどういうものなんでしょうか?

LiLiCo:映画だったら、『歓びを歌にのせて』というスウェーデンの映画です。生きる喜びを優しく、そしてアグレッシブに教えてくれるから。人生は自分だけのものだよって、そういうことを説教っぽくなく、気付かせてくれる映画なんです。だって、人生なんて楽なもんじゃないし、いいことなんて勝手には何一つやってこないですよ。私は自分で人生を楽しもうとしているから楽しくなるだけで、全部自分で作っているんです。

書籍情報
『ザリガニとひまわり』

2010年12月発売
著者:LiLiCo
価格:1,470円(税込)
発行:マガジンハウス

プロフィール
LiLiCo(りりこ)

スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳の時来日、1989年から芸能活動スタート。TBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演しているほか、フジテレビ『ノンストップ!』『SHELiCoの夜活』など、レギュラー出演番組も多数。映画、ファッションのイベントやトークショー、ラジオ、映画やアニメの声優も演じるなど、マルチに活躍している。



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