李相日監督の映画『怒り』の音楽を坂本龍一が担当することがわかった。
9月17日から全国東宝系で公開される『怒り』は、吉田修一の同名小説をもとにした作品。現場に「怒」という血文字を謎として残したまま未解決になった八王子の夫婦殺人事件が人々の気持ちに歪みを与えていく様を千葉、東京、沖縄を舞台に描く群像劇だ。
坂本は原作や脚本を読んで李監督からのオファーを快諾。撮影現場の見学や李監督との度重なるディスカッションをもとに音楽を制作したという。録音は坂本が『レヴェナント:蘇えりし者』の音楽制作時にも使用したアメリカ・ワシントン州のバスティア大学内にあるチャペルで実施。演奏はシアトルを中心に活動するノースウェスト交響楽団が担当した。また坂本が手掛けた主題曲の演奏には、クロアチア出身のチェロ演奏家デュオ2CELLOSが参加している。
李監督は坂本による劇中音楽について「音ひとつひとつの響き、厚み、深みが想像以上に音が感情表現している。聴かせていただいた音楽の力で何ステップにも映画が上がっていく瞬間をじかに見せていただいた。責任がさらに増している感じがあります。嬉しい責任ですけどね」と語っている。
今回の発表とあわせて同作の新たな予告編とポスタービジュアルが公開。予告編では、千葉、東京、沖縄にそれぞれ現れる前歴不詳の男役の松山ケンイチ、綾野剛、森山未來の姿や、彼らと交流する人々を演じる渡辺謙、宮崎あおい、妻夫木聡、広瀬すずの様子、広瀬や宮崎が泣き叫んでいる場面や、綾野と妻夫木が体を重ねているシーンなどが確認できる。
坂本龍一のコメント
李相日さんと初めて仕事をした。
事前の噂では大変に難しい人だという。
実際に仕事をしてみると、なるほどしつこく、粘り強くこちらに様々な要求をしてくる。
しかしそれは「もっとよい方法があるのではないか」「もっとよくなるのではないか」という李さんの作品へのこだわりからくるものであり、モノを作る人間ならば当然の欲求であって、逆にそれがないのがおかしいと言わざるを得ない。
『怒り』は日本映画としては珍しくエンターテインメントに流されず、骨太でパワフルな映画になったと思います。李相日監督のコメント
「怒り」……これは誰の目にも見えるわけではない。けど、間違いなく誰の側にもあるもの。
そんな雲をも掴み取ってしまうような鋭い感性が坂本さんには存在する。
映像から受けた刺激と、僕のゴタクに忍耐強く耳を傾け、ミリ単位に及ぶ緻密で壮大なサウンドが生み出される。
登場人物たちは多様な顔を見せ始め、シーンは様々な解釈を生じさせていく。もっと深く、もっと濃密に…
思えば、“坂本龍一”という名の大きさに呑まれぬよう自分を叱咤していた。
気付けば、呑まれたのは、『怒り』に臨む坂本さんの姿勢。剥き出しの、その情熱に。2CELLOSのコメント
このような日本映画の大作に、そして日本を代表する偉大な作曲家、坂本龍一氏とご一緒できて大変光栄です。
僕たちは2人とも映画やアニメなど、日本の文化が大好きなので、このプロジェクトに参加できてとてもワクワクしています。