わたしたちのヘルシー

和田彩花、瀬戸あゆみたちと学ぶ、誰もが知るべき生理と妊活の話

1986年の男女雇用機会均等法を皮切りに、2016年には女性活躍推進法が施行され、より女性が社会で活躍しやすい環境づくりが進められている昨今。

しかしながら、女性特有の健康問題や、妊娠、子育てなどに対する社会的なケアは未だ課題が残っている。とくに妊活においては、パートナー間の意識差や不妊治療に伴う高額な治療費など、当事者になって初めて見えてくる問題も多い。

そこでCINRAでは、女性が健やかに輝き続ける社会を目指すWomen's Health Action実行委員会とともに、オンラインイベント『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~』を10月10日に開催。

同イベントは今年3月に初めて開催され、医療ヘルスケア分野の専門家のほか、タレントやミュージシャン、漫画家やエッセイストらが参加。女性特有の心とからだの悩みについて正しい知識で向き合うことの大切さを伝え、計2万1千人が視聴した。

第2回目となる今回は、医療ヘルスケア分野の専門家とアイドルやモデル、執筆家などの文化人を招き、生理にまつわる基礎知識やセルフケア、事前に知っておきたい妊娠や不妊治療のことなど、「月経」と「生殖」をテーマにトークセッションを行った。本記事では当日の様子をレポートする。

自分にとってのウェルビーイングを、「知ること」で追及

今回のオープニングトークに登場したのは、Women's Health Action(WHA)の副代表を務める対馬ルリ子医師と、前回のイベントのプロデューサーを務めたme and you, Inc.の野村由芽さん、竹中万季さんの三名。CINRA・山本梨央の司会によって、トークが進んでいった。

現代日本における女性の健康推進と課題について、産婦人科医の視点から知見を広めている対馬医師は、そもそもなぜ「心とからだの話」をすることが重要なのかについて、こう語る。

医療の現場で実際に診る病気の多くが、事前に知っておけば予防もできたし、早いうちに手が打てたのに……と残念に思うものばかり。普段から自分の心とからだについて話し合い、知ることで、まったく違う未来が拓かれる可能性があるのです。

生理は健康のバロメーター。正しい知識と日頃のケアが重要

オープニングトークに続いて、最初のトークセッションに登壇したのは、モデルの瀬戸あゆみさんと原田美由紀産婦人科医。これからはじめたい生理との向き合い方が語られた。

まずテーマとなったのは「生理について話すこと」。瀬戸さんは、「自分のからだについて話すことが恥ずかしかったり、誰に話していいかわからなかったりすることがあります」と語る。

私は生理不順(※1)を改善するために低用量ピル(※2)を飲んでいるのですが、ピルに対してマイナスなイメージや偏見を持つ人も一定数いるので、このことはあまり話していませんでした。

また、生理のときに起こる痛みの強さは、人それぞれ異なります。生理痛(※3)がひどく、救急車を呼ばなくてはいけなくなった人もいました。「ただの生理なのに」と思われてしまうことを恐れて、限界まで我慢してしまったそうなんです。

生理について多くの人が知ること、話し合える環境をつくることはとても重要だと思います。私自身も常に女の子の味方でありたいですし、みんなが悩んでいることをもっと発信して、1人じゃないということを伝えていきたいです。

原田医師は、「しょうがないからといって我慢するのではなく、積極的に知識を得ようとすることで、改善策が見つかるはず」と語る。

生理にまつわる主な病態は、大きく4つにわけられる。「月経周期の異常」「月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)」「月経量の異常」「月経困難症」(※4)だ。

特に生理前は、PMSによってさまざまな不調が引き起こされる人も多いだろう。瀬戸さん自身も、PMSやPMDDを避けるため、日頃から規則正しい生活やからだのケアを心がけているという。

私は冷え性なので、生理痛がひどくならないようにとにかくからだを温めることを大事にしています。また生理中は便秘や肌の不調を避けるため、キムチや玄米など、乳酸菌や食物繊維を豊富に含む食材を摂ることも心がけています。

生理による不調を避けるため、ケアを行う瀬戸さんの話を受け、原田医師は「生理は鬱陶しいもの、来てほしくないものと思われがちですが、生理は健康のバロメーター的な存在です。

たとえばストレスを溜めすぎたり、体重が急激に減ったりすると、生理は止まってしまいます。生理が一定の周期で来なかったり、来ても量が多すぎたりするのは、からだが発するヘルプサイン。そのサインを見逃さず、不調を感じたらすぐに産婦人科へ行き、相談するようにしてください」と語った。

私は低用量ピルを使うことで生理不順が改善しましたが、他の人も同じ処方が良いかはわかりません。症状によって改善策は変わりますし、お金もかかることです。悩みを抱える人がいたら、まずかかりつけ医に相談するようにおすすめしていきたいですね。

また原田医師は、市販の鎮痛剤やPMS治療薬を服用することについて、「常用すると効かなくなる」「限界まで我慢したほうがいいんじゃないか」という意見を患者からよく聞くという。

痛み止めなどの薬は、症状が悪化してから飲むのでは遅いです。たとえば鎮痛剤は痛くなりはじめたタイミングですぐに飲んだほうが効果的。薬を上手に使うことで、よりコントロールがしやすくなると思います。

次のテーマでは、生理を快適に過ごすための、最前線のグッズを紹介。吸水ショーツのプロデュースをしているという瀬戸さんは、吸水ショーツを使うようになってからトイレに行く回数が減り、とても快適になったという。

「第三の生理用品」ともいわれる月経カップなどフェムテック関連のアイテムはこの1年で急速に浸透し、選択肢も増えてきた。最新グッズのなかには、着脱可能で月経周期に伴う温度変化を測ることができる、ヘルスケアデバイスも登場している。

デリケートゾーンのケアアイテムも浸透していることを受け、「フェムテックに可能性を感じますね。デザインも心おどるものが多いから、楽しみながら試してみることで、からだや心の健康にもより良い影響があるのではないでしょうか」と、今後の発展に瀬戸さんも期待を寄せた。

自分で考え、判断する。知っておきたい「生殖」のこと

次のトークセッションに登壇したのは、エッセイストの犬山紙子さんとベーシストの劔樹人さんご夫妻、そしてアイドルの和田彩花さん。対馬ルリ子医師、原田美由紀医師を招き、トークが進んでいった。

まず、妊娠に対してどのように捉えているか、司会の野村さんがゲストの二人に聞くと、和田さんは「まだ27歳なので妊娠は考えていませんが、知っておきたい内容ではあります」とコメント。

犬山さんも20代の頃は和田さんと同じような考えだったと同調しつつ、「当時は親の介護をしていて、妊娠について考える余裕もありませんでした。ただ知識がなかったので、漠然とした不安は感じていましたね」と、無知ゆえの不安があったと語る。

以前は「女はクリスマスケーキ」と言われ、結婚や妊娠を20代半ばまでに済ませたいと考える人が多くいました。

現在は20代で妊活する人が減る一方で、30代から40代にかけて妊活に悩む人が増えています。気がつかないうちに生殖に影響を及ぼす病気にかかってしまうこともあるので、将来「妊娠」という選択肢をもてるようにするために、早いうちからセルフケアの意識や正しい知識をもつとよいでしょう。

トークセッションでは医師から登壇者へクイズ形式で質問が投げかけられる場面も。「閉経前までは妊娠できる?」という質問に和田さんは、「生理があれば妊娠が可能なサインと聞いたことがありますが、年齢を重ねると妊娠がしづらくなるということを踏まえると、バツかなと思いました」と回答。見事に正解した。

卵子は生まれたときが一番多く、年齢とともに数が減り、妊娠しやすい卵子の割合も少なくなっていきます。妊娠率は30代後半から下がっていき、流産の可能性が増えていくことを知っておきましょう。

「不妊症男性の割合は何%?」という質問には、劔さんが悩みながら80%と回答しつつも、正解は40%。

男性側に不妊の理由はないと思い込んで、女性だけが不妊治療を続けていた場合、心身や家計に大きな負担がかかるうえに、結果にも結びつかない。そういったことを防ぐためにも、2人で検査することが重要です。

数年前、実際に妊活をして子どもを授かった犬山さんと劔さん。当時は犬山さんが基礎体温を毎日測り、劔さんは犬山さんの排卵日には熱いお湯に入らないよう心がけるなど、妊娠のためにできることを二人で話し合い、協力しながら取り組んでいたそうだ。

妊活を成功させるためには、男性側も当事者意識を持つことが重要。そのためにもまずは、妊活のことやパートナーの状況を知ること、話し合うことが大事だと感じています。

妊活をして1年経っても妊娠しない場合は不妊が疑われる。不妊症かどうかを知るためには、月経周期に合わせて行うスクリーニング検査で原因を見つけていく。

不妊治療(※5)は大きく分けて、一般不妊治療(タイミング指導、人工授精)と特定不妊治療(体外受精治療)(※6)の2種類があります。

私たち医師が不妊治療でもっとも大切にしているのは、カップルの意向を最大限尊重すること。そのために、医師からは治療にまつわる十分な情報を提供し、不妊治療の進め方をカップルが決断できるようにサポートしています。

続けて原田医師は、不妊治療の助成金についても説明。今年1月に不妊治療の助成金が拡充され、2022年からは不妊治療に公的医療保険の適用が拡充される見通しだ。適用範囲は現在議論が進められている。

助成額が引き上がり、男性不妊治療にも適用されたことはすばらしいと思います。不妊治療中の方へ取材したとき、パートナーと温度差があるという悩みを多く聞きました。女性側が一人で苦しんでいることに、男性が気づいていないことが多い。男性起因の不妊が40%もあるというお話がありましたが、制度が変わることで経済的に助かる人がいるのはもちろん、男性側への啓発にもつながるでしょう。

一方で残念なのは、対象が夫婦に限定されていることです。法律婚をしていないカップルや、同性カップルも対象となるよう、条件が緩和されていくことを願っています。

「日本で不妊状態にあるカップルの割合は、10%〜15%といわれています」と原田医師。妊活にまつわる悩みをもつ人がいた場合、周囲ができることは何があるのだろうか。

結婚した人に妊活にまつわる悩みを、周囲からあえて聞く必要はないと思います。悩みをもつ人が自ら話しはじめたら傾聴すること。また、妊活について科学的根拠のないアドバイスをすることも避けましょう。悩んでいる人の思いをただ聞いて肯定するだけでもその人は楽になれるはずです。もちろん、知っている確かな情報があれば、上から目線ではなく伝えることも良いと思います。

人生の選択は本人が決めること。決めつけるのではなく、尊重していくことが大切だと思います。

最後は「愛について」の問いが対馬医師から投げかけられた。

ジェンダー論を唱える社会学者・上野千鶴子さんの書籍『女の子はどう生きるか』のなかで、学生が上野先生にしている質問です。みなさんならどう答えますか?

「母親に父親との結婚の理由を聞いたところ、『三高(高学歴・高収入・高身長)で条件がよかった』という答えが返ってきました。愛とはそんなものなのでしょうか」

愛のかたちは人それぞれだと思います。たとえば私は、条件よりも相手と話し合えること、お互いの意見を尊重し合えることのほうが重要で。一人ひとりが「自分にとっての愛とは何か」を考えていけるといいのかなと思います。

自分で考え、判断する。これは、世界的目標のSDGsにもつながる「セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス ライツ(性と生殖に関する健康の権利)」(※7)の考え方だ。自分の将来を決めるのは、自分自身。これこそ、これからの女性が生きる上で欠かせない姿勢だと対馬医師は述べ、トークセッションは終わった。

(※5~※6)参考記事:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ 「不妊」
(※7)参考記事:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「現代女性の健康問題」

みんなの心とからだが、ウェルビーイングであるために

クロージングトークでは、WHA代表である吉村泰典医師、副代表である大須賀穣医師、対馬ルリ子医師の三人が登壇。

トークセッションでも出てきた、「セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス ライツ(性と生殖に関する健康の権利)」などについて、あらためて三人それぞれの視点から女性たちに伝えたいメッセージが語られた。

どういう人とパートナーシップを組むか、子どもをつくりたいのか、そうでないのか、子どもをつくるとしたらいつ妊娠したいか、何人出産するか、どう育てるか。これらはすべて、女性も男性も個人で決めていいことです。

卵巣にやさしい生活を心がけることが、女性の健康につながることを意識しましょう。卵巣は妊娠のために必要なだけでなく、髪の毛、皮膚、骨、うつの症状にも関係しています。甘いものを食べすぎない、適度に運動する、ストレスを溜めすぎないことなどがとても大事です。

15歳から39歳で発症したがん患者の約8割が女性。とくに20代から30代では、子宮頸がんが多く発症しています。しかし近年では医学が進歩し、がん患者の生存率もあがってきました。そこで課題となってくるのが、「将来子どもをもちたい」という患者の願い(※8)を叶えることです。

医療によって卵子を凍結したり、経済的な支援制度を整えたりと、社会的にも整備が進められています。健康でいるためのケアがまずは大事ですが、もしもがんになってしまっても、ぜひ希望をもってもらえたらと思います。

me and you, Inc.の野村さんは、「心とからだについて考えを深め、さらになにを実践すべきか具体的になったことで、より積極的に行動していこうと意識が変わりました」と、前回との手応えの違いを語る。

竹中さんは、「月経と生殖についてそれぞれ1時間のトークセッションを経て、より深く、多角的に考えることができました。女性という視点を超えて、さまざまなジェンダーや社会に目が向く内容だったと思います」と、視座の変化がもたらされたと話した。

女性が健やかに生きる社会を目指して、WHAではオウンドメディア「心とからだの話をはじめるメディア~わたしたちのヘルシー」を10月末にオープンする。自分の人生の選択を、自分自身で行うことのできる人を増やしていくために、知っておくべき心やからだのメカニズムなど大切なことを発信していく。

(※8)参考記事:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「妊孕性温存診療」

協賛企業
インテグロ株式会社

月経カップや吸収型サニタリーショーツという新しい生理ケアを提案し、女性が生理によって自由な活動を制限されることなく、だれもが自分らしく生きやすい社会を目指します。
ディーバカップ

2002年の月経カップ「ディーバカップ」発売以来、快適でエコな生理体験を提供するだけでなく、生理のタブーをなくし、教育と生理ケアへの平等なアクセスを訴え、世界中の女性をエンパワーメントしています。
協賛企業
ゼリア新薬工業株式会社

ゼリア新薬は、「健康づくりは幸せづくり」をモットーに、独創的で価値ある製品の開発・製造・販売を通じて、健康と美しさを願うすべての人々の豊かな生活の実現に貢献することを目指しております。
協賛企業
帝人株式会社

「melito (ミライト)」は、帝人がこれまで培ってきた「健康」への取り組みの成果を、女性の健康と未来の社会を支えるために活かしたいという想いから生まれた、健やかな毎日を応援するヘルスケアブランドです。
協賛企業
トッパン・フォームズ株式会社

『女性のリズム』を把握するための新しいセルフケアIoTサービス『わたしの温度🄬』。寝ている間に女性特有のリズムを自動計測する新習慣デバイスと専用ブラのセットで、あなたの毎日に寄り添いながら、ココロとカラダのキレイを応援します。
協賛企業
株式会社ファイブテイルズ

サロン開発のデリケートゾーン専用ケア製品「Ibiza Beauty」を通じて、繊細な心と体に寄り添い、女性が活き活きと輝くライフスタイルをエンパワーメントするフェムケア・カンパニーです。
協賛企業
ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

ちょっとした悩みでも相談できる、かかりつけの婦人科はありますか?
産婦人科はどんなところで、どんな病気が診てもらえるかなどご紹介します。
ウェブサイト情報
わたしたちのヘルシー【心とからだの話をはじめるメディア】

Women's Health Action×CINRAがお届けする、女性の心とからだの健康を考えるウェルネス&カルチャープラットフォームです。月経・妊活など女性特有のお悩みやヘルスケアに役立つ記事、専門家からのメッセージ、イベント情報などをお知らせします。
イベント情報
10月11日の国際ガールズデーにあわせてオンラインで開催された1日限定のオンラインイベント『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめようin Oct. 2021〜 produced by Women's Health Action & CINRA』。アーカイブは下記より見られます。ヘルスリテラシー向上を願う医療ヘルスケアの専門家と豪華ゲストの方々のトークをお楽しみください。


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