メイン画像:Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』独占配信中
最多ノミネートは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』は4部門で候補に
『第94回アカデミー賞』のノミネートが、日本時間の2月8日に発表された。
最多ノミネートを果たしたのは、ジェーン・カンピオン監督のNetflixオリジナル映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。作品賞や監督賞をはじめ、主演男優賞(ベネディクト・カンバーバッチ)、助演女優賞(キルステン・ダンスト)、助演男優賞(ジェシー・プレモンス)など、12のノミネーションを記録した。
事前の海外映画祭でも高い評価を獲得していた、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』は作品賞、監督賞、国際長編映画賞、脚色賞の4部門にノミネート。日本映画が作品賞、脚色賞にノミネートされるのは今回が初めて。日本人監督が監督賞候補になるのは、『乱』(1985年)の黒澤明監督以来、36年ぶりとなる。
『ドライブ・マイ・カー』予告編(関連記事:カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』の誠実さ 濱口竜介に訊く )
NetflixやApple TV+、Amazonスタジオなどストリーミングサービス配給による作品も多くノミネートされた。Netflixは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と『ドント・ルック・アップ』の2作を作品賞候補に送り込み、10作品27ノミネートを記録。
また、『コーダ あいのうた』は、Appleとして初の作品賞ノミネート作となった。『コーダ』では、ろう者の俳優であるトロイ・コッツァーが助演男優賞にノミネート。同作でコッツァーの妻役を演じた、同じくろう者の俳優マーリー・マトリンは、『愛は静けさの中に』(1986年)で『第59回アカデミー賞』主演女優賞を受賞している。
『コーダ あいのうた』予告編(関連記事:「実際のろう者が使う手話をスクリーンで見てほしい」。米映画『コーダ』手話演技監督の決意)
ジェーン・カンピオンが歴史をつくる。撮影監督も女性として2人目の撮影賞ノミニーに
最多ノミネーションとなった『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、1920年代のアメリカ・モンタナ州を舞台に、牧場を営む威圧的な男とその弟や周囲の人物の人間関係をスリリングに描いた作品。同作は、ニュージーランド出身の映画監督ジェーン・カンピオンにとって12年ぶりの劇場用映画で、2021年12月にNetflixで配信された。
カンピオンは、今回の『アカデミー賞』において監督賞にノミネートされた唯一の女性監督だ。監督賞の候補になるのは、1993年の映画『ピアノレッスン』以来、2度目のこと。1人の女性監督が2回にわたって『アカデミー賞』監督賞にノミネートされるのは、同賞の90年を超える歴史上初めてのことだという。かつて『ピアノレッスン』で女性監督初の『カンヌ国際映画祭』パルムドール受賞者となったカンピオンが再び歴史をつくった。
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』予告編
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で『アカデミー賞』の歴史に名を刻んだ女性はカンピオンだけではない。同作では、撮影監督のアリ・ウェグナーが撮影賞にノミネート。ウェグナーは、『マッドバウンド 哀しき友情』(2017)のレイチェル・モリソンに続き、女性として史上2人目の『アカデミー賞』撮影賞ノミニーとなった。
女性の『アカデミー賞』監督賞受賞者はいまだ2人だけ
「Oscars So White(白すぎるオスカー)」など、ノミネーションにおける人種やジェンダーの多様性の欠如がたびたび指摘されてきた『アカデミー賞』。昨年は史上初めて2人の女性監督が監督賞候補に名を連ね、『ノマドランド』のクロエ・ジャオが受賞者に輝いた。
近年は『レディ・バード』(2017)のグレタ・ガーウィグ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)のエメラルド・フェネルといった女性監督が監督賞のノミネーションを受けたが、『アカデミー賞』の100年近い歴史のなかで、同賞にノミネートされた女性監督の数はいまだ10人に満たない。実際に監督賞を受賞した女性は、クロエ・ジャオと『ハート・ロッカー』(2008)のキャスリン・ビグローの2人のみである。
ちなみに監督賞にはノミネートされていないが、今回の『アカデミー賞』における女性監督の劇映画としては、シアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』が作品賞など3部門、マギー・ギレンホール監督の『ロスト・ドーター』が脚色賞など3部門にノミネートされている。
2019年にアメリカで公開された興行収入上位1,300本の映画を調査したアネンバーグ・インクルージョン・イニシアティブのレポートによれば、同年のトップ100映画の製作者のうち、女性の監督は10.7%、脚本家は19.4%、プロデューサーは24.3%、キャスティングディレクターは70.4%だったという。女性の活躍だけを見ても、ハリウッドのダイバーシティとインクルージョンはまだまだ道なかばだ。
ジェーン・カンピオンが監督賞にノミネートされた『第94回アカデミー賞』の授賞式は、3月27日に行なわれる。
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