BTS、バイデン大統領と会談へ。「私たちは耐えてきました」アジアンヘイトに彼らが発信してきたメッセージを振り返る

BTSのメンバーが5月31日、アメリカ・ワシントンD.C.のホワイトハウスを訪れ、ジョー・バイデン大統領と会談する。ホワイトハウスの声明によると、会談ではコロナ以降増加しているアジア系の人々へのヘイトクライムや差別問題などについて話し合うという。

若年層からの支持が厚く、世界的な人気を誇るBTSとの交流を通じてアジアンヘイトの抑止につなげる狙いとみられるが、K-POPアーティストがホワイトハウスから招待を受けるのは異例だ。

未だなくならないアジア系へのヘイトクライム。3月には高齢女性が襲われる事件も

ホワイトハウスが報道陣向けに発表したリリースによると、会談ではヘイトクライム問題のほか、アジア系の人々のインクルージョンやリプレゼンテーションについても議論するという。BTSの影響力について、「世界中に希望とポジティブなメッセージを届ける若い世代の代表者」とも表現しており、BTSが持つプラットフォームについても話し合うとしている。

アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミック後、アジア系や太平洋諸島系(AAPI)の人々へのヘイトクライムや差別、偏見が深刻化した。連邦捜査局(FBI)がまとめた全米でのヘイトクライム統計によると、2020年には279件のアジア系ヘイトクライムの事件が報告され、2019年から77%も増加したという(*1)。

また、アジア系人権団体「Stop AAPI HATE」は、2020年3月19日から2021年12月31日のあいだに1万件以上ものヘイトクライムの報告を受けたと発表している(*2)。同団体は女性の方が被害の標的になる傾向が高いとも報告しており、今年2月にも、アジア系女性7人が路上で男から突然殴られるなどの暴行を受ける事件(*3)が発生。3月には、ニューヨークのアパートで60歳代のアジア系女性が男から125回以上殴打される事件が起き、人々を震撼させた。

BTSとアジアンヘイト。「#StopAsianHate」の抗議声明を振り返る

BTSは遡ること1年前の2021年3月、「#StopAsianHate」というハッシュタグを添えて、アメリカやヨーロッパでアジア系の人々へのヘイトクライムに抗議する声明を発表していた。

きっかけとなったのは、同月16日に米南部ジョージア州・アトランタのマッサージ店で起きたヘイトクライムだ。この日、当時21歳の白人の男が3か所のマッサージ店を銃撃し、アジア系女性6人を含む8人が犠牲になった。

事件後、アジア系の人々に対する差別やヘイトクライムへの抗議活動「#StopAsianHate」が全米で波及した。

リアーナやケイト・ハドソンら著名人からの発信も相次ぐなか、BTSも韓国語と英語で差別に反対する声明を発表。「私たちは人種差別に反対です。私たちは暴力を非難します」と訴え、100万回以上のリツイートを得るなど大きな反響を呼んだ。

声明では、「私たちはアジア人として、差別に直面したときのことを思い出しています。私たちは、理由もなく罵倒され、見た目を嘲笑されることに耐えてきました。なぜアジア人が英語で話すのかと聞かれたことさえあります」と、アジア人の「当事者」として自らの経験を打ち明け、「いま起きていることは『アジア人』としての私たちのアイデンティティーと切り離すことはできません」と暴力を非難。

「あなた、私、そして私たち全員が尊重される権利を持っています。私たちはともに立ち向かいます」と力強く宣言した。

グループ名「防弾少年団」の由来に「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自分たちの音楽を守り抜く」というメッセージが込められているように、BTSのメンバーはこれまでも、音楽活動のなかだけではなく、その外側でも社会課題の発信や貢献に熱心に取り組む。

2020年には黒人差別に対する抗議運動「Black Lives Matter」を支援するため100万ドル(約1億円)を寄付し、2018年、2021年には国連本部で若者のメンタルヘルスについてスピーチを披露した。

6月10日発売(日本は6月13日発売)のニューアルバム『Proof』で、カムバックを控えるBTS。バイデンとの対談でどんな意見が交わされるのか、会談の行方に注目したい。

「Black Lives Matter」の支援のために寄付を表明したツイート。「私たちは人種差別に反対です。私たちは暴力を非難します。あなた、私、そして私たち全員が尊重される権利を持っています。私たちはともに立ち向かいます」という言葉は、アジアンヘイトへの声明でも繰り返し使われた。

(メイン画像:Shutterstock、2019年撮影)



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