Amazon Prime Videoで9月から配信されたドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』で、有色人種の俳優がエルフやドワーフなどの登場人物を演じていることをめぐり、激しい論争が起きている。製作陣は9月8日、Twitterに「有色人種の共演者が受けている人種差別に反対する」と声明を出した。
キャスティングをめぐり激しい論争に
『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』は、J.R.R.トールキンのファンタジー小説『指輪物語』に基づく新ドラマシリーズで、9月2日からAmazon Prime Videoで配信が始まった。
今回のドラマ版は、大ヒットを記録したピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブザ・リング』シリーズ3部作(2001年〜2003年公開)、『ホビット』シリーズ3部作(2012年〜2014年)の数千年前の「中つ国」第二紀が舞台。映画版でケイト・ブランシェットが演じたエルフのガラドリエルなど、原作に登場するキャラクターも登場するが、ドラマ版オリジナルのキャラクターが多数登場する。
本作をめぐっては、配信が始まる前から、エルフやドワーフ、ハーフットなどさまざまな種族の登場人物に黒人など有色人種の俳優がキャスティングされたことに対し、「原作の設定と異なっている」「世界観を壊している」などと反発が起きていた。
キャストリストを見るとその多くが白人の俳優だが、エルフの戦士アロンディア役のイスマエル・クルス・コルドバ、ハーフット族のサドック・バロウズを演じるレニー・ヘンリーなど、有色人種の俳優が起用されている。
配信が始まると、非難の声が再燃。現在も激しい論争がネット上で続いている。
多様なキャスティング、イライジャ・ウッドらが歓迎
そうした批判が続くなか、映画版の主人公を務めたイライジャ・ウッドが9月8日、Twitterに写真を投稿。同じくホビット役を演じたメインキャストのドミニク・モナハン、ビリー・ボイドと並び、白人以外の俳優のキャスティングへの支持を表明した。
3人は、さまざまな種族の耳のイラストが描かれたTシャツを着ており、その肌の色は多様だ。ツイートには、「みなさんを歓迎します」とするコメントが添えられた。
また、メインキャストのもう一人、ショーン・アスティンもTwitterに写真を投稿。同じイラストがデザインされたキャップをかぶる写真を投稿した。
4人が身につけているTシャツやキャップは、『ロード・オブ・ザ・リング』のファンでTikTokユーザーのDon Marshall氏が製作したもので、オンライン上で販売されている。売上の半分は有色人種をサポートするチャリティに寄付されるという。
ドラマ製作陣が声明。「中つ国は白人だけの世界ではありません」
さらに、ドラマ版の製作陣も公式Twitterを通して声明を発表した。「『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』のキャストである私たちは、強い団結力をもって、有色人種の共演者が日常的に受けている容赦のない人種差別、脅迫、ハラスメント、誹謗中傷に反対します」と宣言し、「私たちはそれを無視したり、容認したりしません」とキャスティングをめぐり巻き起こった差別的な攻撃を批判した。
声明では、トールキンは「多文化的な世界を創造した」とも説明。「私たちの世界が白人だけの世界だったことはなく、ファンタジーも白人だけだったことはありません。中つ国も白人だけの世界ではありません。黒人、先住民、有色人種の人たちは中つ国に存在し、そしてそこに暮らしているのです」とつづっている。
声明の全文は以下の通り。
「『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』のキャストである私たちは、強く連帯し、有色人種の共演者が日常的に受けている容赦のない人種差別、脅迫、ハラスメント、誹謗中傷に反対します。私たちはそれを無視したり、容認したりしません。
J.R.R.トールキンは、当然ながら、多文化的な世界を創造しました。人種や文化の異なる自由な人々が仲間になり、悪の勢力に勝利する世界です。 『力の指輪』の物語はそれを反映しています。私たちの世界が白人だけの世界だったことはなく、ファンタジーも白人だけだったことはありません。中つ国も白人だけの世界ではありません。黒人、先住民、有色人種の人たちは中つ国に存在し、そしてそこに暮らしているのです。
最後に、私たちの愛と友情を、私たちをサポートしてくださるファン、特にこのファンダムのなかにいるだけで攻撃の対象となっている有色人種のファンの方々に捧げます。あなたを、あなたの勇気を、尽きぬことのない創造性を私たちは見ています。あなたのコスプレやファンカム(※編集部注:いわゆる「推しカメラ」)、ファンアート、考察は、このコミュニティをより豊かな場所にし、私たちが目指すべきものを思い出させてくれます。あなたは正当であり、愛されており、ここにいます。あなたはLOTRファミリーにとって欠かせない一員です。 私たちを支えてくださり、ありがとうございます」
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