K-POP界に現れた新生ガールズグループ、NewJeansはさまざまな面で型破りなグループだ。立て続けにリリースされたMVはそれまでのK-POPの型にとらわれず、コンセプトは独自路線を突き進んでいる。NewJeansとはどんなグループなのか?
リーダーを置かないNewJeans、なぜ注目されるのか
7月22日、MV“Attention”とともにお披露目されたNewJeans。グループ名には「いつ着ても飽きないジーンズのように、時代のアイコンになる」という意味が込められている。
メンバーは、ミンジ(18)、ハニ(17)、ダニエル(17)、ヘリン(16)、ヘイン(14)の5人。ハニはベトナム人の両親を持ち、オーストラリアのメルボルンで育った。ダニエルの父親はオーストラリア人で、母親は韓国人だ。ミンジとハニはBTSの“Permission to Dance”に出演した経験を持つ。全員が2004年以降に生まれたティーンエイジャー。メンバー全員が英語に堪能で、リーダーを置いていないことも特徴だ。
NewJeansは、デビュー前から大きな注目を集めていた。K-POP界で著名なディレクター、ミン・ヒジンがプロデュースしているためだ。
ミン・ヒジンはもともと、大手事務所「SM Entertainment」に所属。2000年代の後半からクリエイティブディレクターやアートディレクターとして、少女時代やSHINee、EXO、Red Velvetなど、成功を収めた多くのグループのブランディングを担当していた。2022年3月には、米誌『Variety』で「グローバルに影響力をもつ女性」にも選出されている。
f(x)やRed Velvetなどのガールズグループの幻想的で独特な世界観をつくった彼女は2019年、BTSが所属するHYBEに移籍。CBO(ブランド統括)として、また現在は傘下のADORの代表(CEO)として、NewJeansを全面的にプロデュースしている。
ミン・ヒジンが手がけたf(x)のアルバム『Pink Tape』のアートフィルム
少女時代“The Boys”のMV
NewJeansは2019年9月からメンバーのオーディションが行なわれ、2020年初めから2年にわたって練習生として訓練を積んだ。ミン・ヒジンはインタビューで、「熟練」を目指すよりも「楽しむこと」に目標を置いているといい、「心から楽しむ人から出てくるエネルギーはものすごく強力で、見る人までも踊らせるほどだ」「K-POPは競争よりも楽しむ文化になってほしい」と語っている。
ティーザー映像はなし、デビューと同時にMVを公開
ミン・ヒジンがプロデュースするNewJeansは、デビューと同時に複数のMVを公開する手法でも話題になった。
多くのK-POPグループは30秒ほどの短いティーザーを公開したうえで本編を公開するのが「お約束」。だが、NewJeansはそのような枠にはとらわれず、デビューと同時に多くのMVを公開し、K-POPファンを驚かせた。
筆者が特に注目したのは“Attention”のMVだ。アメリカの青春映画を思わせる凝ったつくりで、清涼感にあふれた映像が特徴だ。薄めのメイクとロングヘアー、色彩感覚に優れた配色で、洗練された魅力がある。
彼女たちがステージで見せる踊りは軽やかで、とにかく楽しそうだ。自然な笑顔も印象的で、「パフォーマンスを楽しむ」というミン・ヒジンの考えが反映されているように見える。
デビューから2か月も経たないうちに、グループは数々の記録を打ち立てている。9月6日にはアルバム『New Jeans』の4つの収録曲が、Spotifyで合計1億再生を突破。
“Attention”はアメリカのSpotifyの「デイリートップソング」で183位(2022年9月3日)を記録し、デビュー曲でこのチャートにランクインした韓国初のガールズグループとなった。韓国の音楽番組では5冠を達成し、国内の各種音楽チャートで1位を記録するなど、デビューして早々、記録的な人気を誇っている。
独自のアプリを使った発信。ガラケー彷彿させるデザイン、NewJeansの一線を画すコンセプトとは
SNS展開でも攻めた姿勢を貫く。
NewJeansはデビューして早々、専用アプリ「Phoning」を発表。自らSNSをつくり出し、そこでメンバーたちの魅力を最大限に発信しているのだ。
「Phoning」は、1990年代の「ガラケー」を彷彿とさせるデザインのアプリ。メンバーの写真、アバターの着せ替え、スケジュール、メッセージ動画などを公開している。LINEのような画面ではメンバーからのメッセージも確認でき、リアルタイムライブも配信している。
従来のアイドルは動画や写真の配信には「VLIVE」や「Weverse」を使うことが多かったが、NewJeansはアカウントの開設すらしていない。「Phoning」を使ってさまざまなコンテンツを配信し、独自の世界観を構築する狙いだ。情報発信の方法ひとつ取っても、それまでのガールズグループとは一線を画すコンセプトが窺える。
"Cookie"をめぐっては論争も
一方で、アルバムに収録された"Cookie"の歌詞をめぐって論争も起きている。
恋する相手に焼いたクッキーについて歌っている楽曲をめぐり、「歌詞の『cookie』は女性の生殖器を示唆しているのではないか」という声が英語圏のファンを中心にあがったのだ。
10代のガールズグループに歌わせるのは性的すぎるのではないかという批判に対し、ADORは8月27日に声明を出し、「韓国語では『CDを焼く』と『クッキーを焼く』という表現が同じだというアイデアをもとにした」と性的な意味を込めたことを否定。「楽曲のビジョンが明確だったため、アルバム製作中、“Cookie”の歌詞にいかなる疑問も持っていなかった」とし、「こうした誤解が生じないように今後最善を尽くしていく」と述べた。
K-POPは世界中にファンがいるグローバル産業である。10代前半もいる未成年のグループをマネージメントする側の姿勢が問われている。
デビュー曲は米ビルボードに6週連続でチャートインし、10月から単独のリアリティー番組の放送も決まっているNewJeans。今後の活躍や挑戦に注目したい。
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