映画『刑法175条』が7月21日、22日、23日にBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で限定上映される。
ナチ政権下で迫害された同性愛者たちを描いた『刑法175条』は2000年に制作されたドキュメンタリー映画。記録映像や写真、刑法175条によって迫害を受けたゲイ男性たちとひとりのレズビアンへのインタビューによって歴史に隠された一面を暴き出す。
劇中に登場するクラウス・ミュラー(アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館)の調べによると、ナチ政権下で刑法175条により約10万人が捕まったとされ、強制収容所に送られた1万~1.5万人のうち生存者はおよそ4千人。映画制作時に生存が確認できたのはわずか10人に満たなかったという。同作は強制収容所に送られた同性愛者が存命だったタイミングで撮影された。Bunkamura初配給作品『大いなる自由』の公開を記念して35ミリプリントで上映。
監督は『ハーヴェイ・ミルク』で1984年の『アカデミー賞』長編ドキュメンタリー賞を受賞したロブ・エプスタインと、『セルロイド・クローゼット』をエプスタインと共同監督し、公私にわたるパートナーでもあるジェフリー・フリードマン。ナレーションは『アナザー・カントリー』に出演し、自身もゲイであることをカミングアウトしている俳優ルパート・エヴェレットが担当した。インタビュアー兼アソシエイトプロデューサーはクラウス・ミュラー。
7月22日の上映後には北丸雄二、秋田祥によるトークショーが開催。
【ロブ・エプスタイン監督、ジェフリー・フリードマン監督のコメント】
アメリカユダヤ委員会が1993年に行った調査によれば、ナチスが同性愛男性を見分けるための印としてピンクトライアングルを着けさせていたということはおろか、ナチス政権のもとでゲイが弾圧されていたことすら、知っているのはイギリスでは成人の約半数、アメリカではわずか4分の1だという。『刑法175条』では、これまで映画で扱われたことがなく、歴史の本ですらめったに言及しようとしなかった歴史に斬り込んでいった。何万人もの人々が迫害され殺害されたというのに、なぜ記録から抹殺され続けてきたのか?
私たちがこの問題に関心をいだいたのは、まずは私たち自身がゲイ男性でありユダヤ人でもあるから。私たちにとって、当時についての証言ができる人たちが生きている間にできる限りの記録を残しておくことは、切迫した必要性のあることだった。また、映画作家の立場からいえば、このテーマの曖昧さに魅かれた。虐待される同性愛者、同性愛のレジスタンス闘士、同性愛のナチス及びシンパが同時に存在していたのだ。また、ナチスは一貫して同性愛者を迫害していたが、一方で敵陣からは、ひとりのナチス高官が同性愛者であることを理由にナチス全体が同性愛の巣窟だというプロパガンダを流されてもいたのである。
ナチスの迫害から逃れたゲイはかなりの数にのぼったが、彼らはどうやって生き延びたのだろうか?英雄と悪人の境目は何なのか?そして、どうして私たちは人間の経験にグレーゾーンがあることに不安になるのだろうか?
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