「ノートにメモをする」「友達と文通をする」「レコードで音楽を聴く」。便利になった世の中でも、アナログなカルチャーに触れながら、自分の好きなことをぶれずに発信するモデルの小谷実由さん(以下、おみゆ)。
そんな彼女の価値観は、一体どのような体験を経て、生まれてきたのだろう。今回CINRAでは、MIYASHITA PARKとタイアップし、開業3周年を記念したイベント『MIYASHITA PARK 3rd ANNIVERSARY "SESSIONS”』のイベント初日をレポート。「体験」に力をいれる店舗のポップアップや展示をおみゆさんと見てまわった。
記事前半では、おみゆさん執筆のMIYASHITA PARKの思い出と、イベントをめぐった様子と感想を、後半では彼女の価値観を変えた、服・仕事・旅についてのコラムをお届けする。

小谷実由(おたに みゆ)
1991年東京生まれ。14歳からモデルとして活動を始める。自分の好きなものを発信することが誰かの日々の小さなきっかけになることを願いながら、エッセイの執筆、ブランドとのコラボレーションなどにも取り組む。 猫と純喫茶が好き。通称・おみゆ。毎週金曜配信J-WAVE original Podcast『おみゆの好き蒐集倶楽部』が4月よりスタート。
※記事で訪れた「HIGHTIDE STORE」「CLOUDY」「SAI」のポップアップや展示は現在終了。11月5日(日)までは別の店舗がポップアップを実施
おみゆとめぐる『MIYASHITA PARK 3rd ANNIVERSARY "SESSIONS"』
10月13日(金)から11月5日(日)の期間、MIYASHITA PARK では開業3周年を記念したイベント『MIYASHITA PARK 3rd ANNIVERSARY "SESSIONS"』を開催中。イベント初日は、「HIGHTIDE STORE」、「CLOUDY」、「SAI」の3店舗が、「体験」をテーマにしたワークショップやポップアップを展開した。CAINRはおみゆさんと各店舗を巡り、気になるアイテムや展示をチェック。MIYASHITA PARKの思い出を綴ったおみゆさんによるコラムと、当日撮影したビジュアルやまわった感想を紹介する。

開業3周年を記念した『MIYASHITA PARK 3rd ANNIVERSARY "SESSIONS"』(外部サイトを開く)
MIYASHITA PARKの思い出|小谷実由
MIYASHITA PARKは、アートギャラリー「SAI」での友人アーティストの展示や、コスメブランド「THREE」と「FIVEISM × THREE」によるコンセプトショップ「VISIONARIUM THREE」のイベントで行ったことをよく覚えています。
どちらもいままで何度も目にしていたものが違う印象に見えたり、何かがプラスされたりすることによって、知っていたものに新たな一面が見えて、より魅力的に感じた体験をしたように思います。
私は日ごろから何か欲しいものや出会いが見つかるかもしれないと思いながら街やお店に訪れますが、アイテムはもちろん、自分の新しい気持ちや感覚も見つかることがあるかもしれないと思うと、とてもわくわくしています。



イベント期間中はMIYASHITA PARK の2Fにある美竹ブリッジとSouth3F にあるFOOD HALLガラス面に、グラフィックアーティストの矢入幸一さんの作品が展示される

手帳をはじめとした文具・雑貨がそろう「HIGHTIDE STORE」
最初に向かったのは、福岡を拠点とした文房具と雑貨のセレクトショップ「HIGHTIDE STORE」。蔵前にある文具店「カキモリ」が監修するオーダーノートを体験した。ノートが大好きというおみゆさんはどんなノートを制作する?

オーダーノートでは、表紙、裏表紙、中紙、リングの色を選ぶ。

おみゆさんが表紙に選んだデザインはグリーンのスパタ柄。アメリカの学生のあいだで親しまれている「コンポジションノート」がモチーフだそう

今回は特別に製本にもチャレンジ


表紙、裏表紙、中紙にパンチで穴を開け、リングを閉めて完成
おみゆ:じつは、いつもHIGHTIDE STOREの文房具を使っているんです。今回のオーダーノートの監修をしている蔵前の「カキモリ」にも行ったことがあります。
オーダーノートがつくれることも知っていて、前からやってみたいと思っていたので、体験できて嬉しかったです。ノートが好きで、家にもたくさんあるのに、お店で良いなと思うものを見つけたらついつい買っちゃうんですよね。
アフリカを支援するアパレルショップ「CLOUDY」
続いて向かったのは、アフリカンテキスタイルを使ったアパレルブランド「CLOUDY」のポップアップ。このブランドはアパレルとNPOを運営し、ショップの売上の一部を、ガーナでの学校建設費や雇用支援、給食費などNPOの活動費用にあてている。ポップアップでは期間限定のアイテムが並んだ。


ガーナ北部のボルガタンガ地方にて生産されているバスケット



ガーナの伝統的ファブリック「キテンゲ」を使ったエプロン
おみゆ:エプロンやスリッパ、バッグなどは、私たちが日常的に使うもの。それを購入することでアフリカの支援にもつながるのは、良い取り組みだなと思いました。
デザインもガーナ特有のものですし、こういう出会いは普段生活していると、なかなか遭遇する機会が少ないと思うので、良い刺激になりました。
デザインも、見ているだけで元気が湧いてくるような、エネルギッシュで楽しげなものですてきですよね。柄物を手に取ってこなかった私でも、使いやすいなと思ったアイテムが多かったです。
アートとカルチャーとの出会いを生むギャラリー「SAI」
最後に訪れたのは、アートギャラリー「SAI」。おみゆさんも訪れたことのあるSAIでは今回、アートをはじめ、スケートボード、ファッション、音楽などのカルチャーを紹介するフリーマガジン『HIDDEN CHAMPION』の20周年を記念した展示を開催。MIYASHITA PARK内South2Fの吹き抜け広場を大きく使って行われていた展示と物販を見てまわった。





アーティスト Ragelow さんのロンTと絵本『DAYOFF』
おみゆ:ストリートカルチャーに興味はあるけど、これまで通ってこなかった文化でした。でも、今回実際に雑誌やグッズを手に取ってみて、あらためてかっこいいなと思いました。とくにアーティストのRAGELOWさんの作品が気になりました。
この展示はMIYASHITA PARKの吹き抜けのスペースに大きく設置されていて、通りすがりの方たちも立ち止まって見ている様子が印象的でした。カルチャーについて知らない人でも、出会うきっかけが生まれる場となっていて、すてきな空間だと思いました。
豊かな体験は「立ち止まること」から生まれる
ひととおりポップアップを見てまわったあと、おみゆさんに感想を聞いてみた。「体験」に力をいれるポップアップから何を感じ取ったのだろう?
――MIYASHITA PARKをまわってみていかがでしたか?
おみゆ:MIYASHITA PARKは商業施設というだけでなく、自分の思い出を振り返っても、発見を提供してくれていた場所だったと思いました。
今回訪れた「HIGHTIDE STORE」「CLOUDY」「SAI」もそうでしたけど、ほかのお店も覗いてみて、こんなに面白いお店がたくさんあるんだという気づきがあり、あらためてMIYASHITA PARKのことを知れた気がします。
私自身、渋谷には仕事やプライベートでも来ますし、この3周年イベントもまだ続くので、「またここに寄ろう」という気持ちにさせてくれました。

――とくに気になったワークショップやポップアップはどちらですか?
おみゆ: HIGHTIDE STOREのオーダーノートが楽しかったですね。特別に製本の作業も体験できて嬉しかったです。ノートは普段からよく使っていて、エッセイや仕事のアイデアとかをよく書いているんです。私は書いて頭のなかを整理するタイプなので、打ち合わせ前など何かに取り組む前に、アイデアや考えをまとめたりしていますね。
――おみゆさんは、ノートのようなアナログなものや純喫茶のような昔ながらの空間についてもよく発信されていますよね。
おみゆ:アナログなものや古くからあるものが好きなんですよね。ノートだけじゃなく、友達に手紙を書いたりもしています。気軽に会える距離にいて、メールでもLINEでも連絡できるし、普通に会って話したりもするんですけど、もう何年も手紙で文通している友達がいるんです。
手紙という方法でしか浮かんでこないこともあって、自分の手を動かして文字を綴るっていう行為がすごく好きだから続けています。

――文通は驚きです。
おみゆ:本当にアナログなカルチャーが「もの」として好きなんです。レコードも好きで、レコードショップでジャケ買いをよくするんですけど、そうすると聞いてこなかったアーティストやジャンルを知るきっかけにつながったり、もっとディグしようと気持ちが生まれて楽しいんです。
――ものとの出会いを通じて、さらに追求していく姿勢がとてもすてきです。
おみゆ:私が普段から刺激を受けているアナログカルチャーのように、ちょっとでも気になるものがあれば、立ち止まってもう少しその対象のことを調べてみると、日常生活の楽しみ方も変わってくるんじゃないかなと思います。
「自分には関係がない」と思って通り過ぎるんじゃなくて、「出会う姿勢」でいることを意識するのが大切なのかもしれません。

11月5日(日)までのイベント期間中、対象の店舗で買い物をすると先着でオリジナルアクリルキーホルダーをプレゼント。「10月20日(金)~10月24日(火)にワークショップを開催する『KAPOK KNOT』はずっと気になっていたブランド。ブランドや生産背景について知れるのはとっても貴重で気になる」とおみゆさん
服と仕事、旅についてのコラム。歳を重ねることで変わった価値観
MIAYSHITA PARKでの体験を通じて、「もの」と出会う姿勢やアナログカルチャーに対する思いを話してくれたおみゆさん。あらためて彼女のことが気になったCINRAは「価値観」をテーマにコラムを依頼。服、仕事、旅という生活の身近にある体験から、得られた気づきを綴っていただいた。
年を重ねてもずっと着ていたい「Mame Kurogouchi」の服
Mame Kurogouchi は10年前に出会ったブランド。当時22歳だった私は、良いものを長く着るということよりもいろんな種類の服をできるだけたくさん着たいという気持ちが大きい年ごろでした。そんなときに、上質で美しく、シルエットの素敵なMame Kurogouchiの服たちに出会いました。
あまりにも繊細な作りで、袖を通すのも、ジッパーを上げるのも慎重になるドキドキの気持ち。果たして自分はちゃんとこの服を着こなせているのだろうか、この服に恥じないような自分でいたいというという気持ちからくる所作への気遣いなど初めて抱く感情が多くありました。
この大好きな服たちをずっと着続けたいという気持ちも芽生え、それからは迎え入れる服は年齢を重ね続けてもずっと楽しめるものを選ぶことが多くなりました。

「ISSEY MIYAKE」で企画、デザインを経験した、デザイナーの黒河内真衣子が手がけるブランド「Mame Kurogouchi」/写真提供:小谷実由
初心を思い出させてくれたPodcastの収録
今年の4月から自身がナビゲーターを務めるPodcast番組が始まりました。いままで私は進行を務めるような経験がなく、いくら準備を重ねても初めての収録当日までは不安が拭えず、メディアに出る仕事を始めてから一番緊張したかもしれません。
番組が始まって約半年が経ちましたが、聴きやすい声のトーン、スピード、間など、少しの違いでも言葉の伝わり方が変わってくるような気がしています。
日常生活でもラジオや音声コンテンツを聴くときは出演者の方がどんな風に話しているか、意識して聴くようになりました。収録はいまでもやっぱり緊張しますが、それは良い意味での緊張感。初心を忘れずにこれからも経験を重ねたいです。

ゲストの「好き」について話を聞いていくJ-WAVE original Podcast『おみゆの好き蒐集倶楽部』/写真提供:小谷実由
自分の知らない一面を知ったシンガポールの旅
2017年に、友人に会いに初めてシンガポールを訪れました。シンガポールで知っていることはマーライオンぐらいだった私を、友人がいろんなローカルな場所に連れて行ってくれたことで、まるで現地で生活しているような気持ちで旅をするということを経験しました。
それまでは旅に行っても、帰ったあとの現実が自分の頭から離れず、ある種冷静になってしまい、なんだか全力で楽しんだことがあまりなかったように思います。
でも、あの旅でシンガポールの街並みや文化に触れて、本当に自分が「好き」といえるものを発見できました。何かに夢中になる気持ちが芽生えたことで、旅をすること自体が好きになりました。旅は、日常生活では出会えない自分に出会える経験のようにも思えます。

友人に連れて行ってもらったローカルな雰囲気満点のチキンライス屋さん/写真提供:小谷実由
- イベント情報
-
『MIYASHITA PARK 3rd ANNIVERSARY "SESSIONS"』
開催期間:2023年10月13日(金)〜11月5日(日)
会場:MIYASHITA PARK 2F 各エリアおよび各店舗内
MIYASHITA PARKの3周年を記念したイベント。多彩なショップたちが、館内の様々なスペースで物販、展示、ワークショップなどを実施。また、期間中対象店舗でお買上げいただくと、先着でオリジナルアクリルキーホルダーをプレゼント。
- プロフィール
-
- 小谷実由 (おたに みゆ)
-
1991年東京生まれ。14歳からモデルとして活動を始める。自分の好きなものを発信することが誰かの日々の小さなきっかけになることを願いながら、エッセイの執筆、ブランドとのコラボレーションなどにも取り組む。 猫と純喫茶が好き。通称・おみゆ。毎週金曜配信J-WAVE original Podcast『おみゆの好き蒐集倶楽部』が4月よりスタート。
- フィードバック 8
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-