昨年、誕生から60年を迎えたアンプメーカーのMarshall。もともとは楽器の修理・販売を請け負っていたジム・マーシャルが、顧客からの要望により生み出した「大音量を鳴らせるギターアンプ」がきっかけとなり、Marshallアンプはジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ(Led Zeppelin)らロックの歴史を築き上げた先人たちに愛用されるメーカーとなった。現在もなお、ロックサウンドのアイコンとして不動の地位にあるMarshall。2010年頃からはオーディオ機器にも力を入れ始め、そのスタイリッシュなブランドロゴが入ったヘッドホンはロングセラーとなり、若い世代にとって「Marshall」といえばオーディオメーカーというイメージになりつつある。
そこで今回、Marshallアンプに格別な思い入れがあるというラッパー / トラックメーカーのぜったくんに、Marshallのオーディオ製品で自身の楽曲などを試聴してもらいながら、Marshallアンプとの出会いや、その音楽的な影響について語ってもらった。
アンプが人生を変えることもある。ぜったくんとMarshallの出会い
―ぜったくんがMarshallと出会ったのは、どんな経緯だったのでしょうか。
ぜったくん:僕がギターを始めたのは大学1年生の頃で、当時は「歪み」というものが何なのかよくわからなかったんですよ。それまでは曲を聴いて、「このギターサウンドめっちゃカッコいい!」とは思っていたのだけど、どうやって音をつくってるんだろう? って。それで大学に入学して軽音部に入ったら、部室にMarshallのアンプ「JCM900」が置いてあったんです。キャビネットは1960Aの組み合わせ。先輩が「これにつなげばギターが鳴るよ」と教えてくれて、よくわからないままつなげて鳴らしてみたら、めちゃくちゃデカい音が出たんです。「ええ? このギターからこんなすげえサウンドが出るの?」とものすごい衝撃を受けた。いまでもその瞬間を覚えていますね。それがMarshallとの出会いでした。
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ぜったくん
東京町田生まれ。ごく普通にSMAPを聞き、ゲームをしながら幼少期を過ごす。大学にてギターを始める。大学卒業後、一度は就職した会社を入社わずか2時間という早さで電撃退職。作曲とDTMを勉強しながら、作詞作曲を手がけるバンド「201号室」での活動(Vo,Gt)を始める。そのかたわら、ソロの「ぜったくん」としての楽曲を制作開始。2018年ラストラム主催の新人オーディション『ニューカマー発見伝』にて、グランプリを受賞。
―Marshallの「歪み」に夢中になっていたわけですね。
ぜったくん:最初はもう「歪み」がすべてというか。「とにかくギターは歪んでいればいい」みたいな感じ。それが自分の初期衝動だったんです。ギターはスクワイアのテレキャスターを使っていました。YUIさんと同じモデル。ちなみに、Marshallは歪みだけじゃなくてクリーントーンもすごく好きです。きらびやかさが引き出されるというか、自分のギターの「本当の良さ」を際立たせてくれている感じがして。
―その後、Marshallの機材とはどんな付き合いをしてきたのですか?
ぜったくん:それから大学の4年間ずっとコピーバンドをやっていたんですけど、最初は思うように音がつくれなかったんですよね。ツマミを見ても「このPRESENCEってなに?」状態だったし、TrebleとかBassといった基本的なEQの設定も、慣れるまで時間がかかりました。でも、「このツマミを自在に動かせるようになれば、自分の思い通りのギターサウンドがつくれるんだ!」と思って使い続けていました。知れば知るほど逆に深すぎて、ますますわからなくなっていくんですけど(笑)。「自分にはまだまだ知らないことが、こんなにたくさんあったんだ」とMarshallのアンプを鳴らすたびに思い知らされていましたね。
―ぜったくんの音楽人生の中で、Marshallが与えた影響はどんなことでしょうか。
ぜったくん:「Marshallアンプを使いこなしたい」という思いでバンドを続けていたわけですから、Marshallのおかげで音楽を続けてこられたといっても過言じゃないかもしれないです。もし部室にあったアンプが歪みを搭載していないタイプだったら、また全然違う音楽人生になっていたと思うんですよ。そのあとELLEGARDENやHi-STANDARDが好きになったのも、ギターの歪みに惹かれたからですし、そこで培ったメロディラインはいまの楽曲にも息づいているので。
ぜったくんの最新EP『shuttle 99』
アンプだけじゃない。Marshallオーディオ製品のサウンドを自分の楽曲で体感
―今日はそんなぜったくんに、Marshallのオーディオ機器で何曲か試聴していただき、そのインプレッションを伺っていきたいと思います。まずは据え置きタイプのホームスピーカー「Acton III」から。Marshallのホームスピーカーは3種類あり、Acton IIIはその中で最も小さいタイプですが、いちばんの売れ筋です。
ぜったくん:リファレンスとして、僕の楽曲“Man Say Bien”を選びました。自分の曲がいちばんわかりやすいし、この曲は特にアレンジにこだわっているので、それがどう聴こえるのか試してみたいです。
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Acton III Black(オフィシャルサイトで製品を見る)
ぜったくん:(試聴しながら)おお、やべえ。めちゃくちゃいい音! ベースやキックなど低域の成分がしっかり出ていて、かつ高域の成分、特にハイハットの「チチチチ」というフレーズのきらびやかさが保たれていると思いました。自分の楽曲の、「ここを聴いてほしい」というところをバランスよく再現してくれているのは嬉しいですね。これが家に一台あったらモニタースピーカーいらないかも(笑)。
―MarshallアンプからインスパイアされたActon IIIのデザインはいかがでしょうか。
ぜったくん:ツマミやノブの形状もアンプに寄せているんですね。EQを自分で調整できるのは嬉しい。深夜とか、ちょっと低音を抑えたいときなどすごく重宝しそうです。専用のアプリを使ってEQ設定できるし、壁からスピーカーまでの位置を測定して音質補正までしてくれるのも驚きました。僕、家にギターアンプの小さいやつがあるのですが、それよりも小さいけど音がいい。自分の曲とかできたときに、すぐActon IIIで聴きたくなりそうです。
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「焚き火みたいにみんなで囲んで音楽を聴きたい」外出先で使うことも想定したMarshallスピーカー。
―続いては「Middleton」で、同じく「Man Say Bien」を試聴していただきたいと思います。こちらは外へ持ち出すことも想定し、本体にストラップが付いたポータブルスピーカー。Marshallの防水ポータブルスピーカーは3種類あり、こちらはいちばん大きいタイプです。
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Middleton Cream(オフィシャルサイトで製品を見る)
ぜったくん:Acton IIIよりもかなり小さいから「低音とかどうなのかな?」と思ったけど、ベースもちゃんと芯を残しながら輪郭の部分もしっかり聴こえますね。車に積みたいなあ。僕、車を買って1年くらい河原へ行ってウィンナーとか焼いて食べるのにハマっていた時期があって。そのときにいつも、「何か音楽でも聴きたいな」と思っていたんですよ。これがあったら最強だったなと。屋外に持ち運ぶとなると、雨に濡れるのが心配だから防水機能はありがたいです。見た目もアンプのヘッドみたいで好きですね。
―「スタックモード」を使うと何台もつなげられるんです。ギタリストがステージでアンプを何台も積み重ねているあれ、自宅でも再現できるわけですね。
ぜったくん:あははは。それはすごい! やってみたいです。
― それと、Middletonは「ステレオフォニック」という技術を採用しており、360度どこからでも同じクオリティのサウンドを楽しめるんです。
ぜったくん:え、そうなんですか。試してみていいですか? あ、本当だ。Acton IIIは後ろに回り込むとちょっと音が変わりましたけど、Middletonは全然変わらないですね。これ、キャンプとかに持って行って焚き火みたいにみんなで囲んで音楽を聴いたらめちゃくちゃ楽しそうです。
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バスルームでのフリースタイルラップに最適?手のひらサイズの防水スピーカー
―続けて試聴していきます。こちらは手のひらサイズの防水スピーカー「Willen」です。先の2モデルに比べるとさらに小型ですが、思った以上に音が出ます。
ぜったくん:しかも、音にちゃんと「コシ」がありますね。手で持っていると、低音がドン! って鳴ったときの振動の伝わり方が気持ちいいです。生きているみたい。ジョイスティックのようなノブを指でぐりぐり動かしながら、曲送りや再生、ストップなどの操作ができるのもゲームコントローラーを彷彿とさせて楽しいです。
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Willen Black & Brass(オフィシャルサイトで製品を見る)
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―部屋のどこへでも気軽に持ち運べますし、防水なのでバスルームで音楽を聴くことも可能ですね。
ぜったくん:じつは、バスルームで聴けるスピーカーがあったらいいなと思っていたんです。いまはスマホを濡れないようバスルームの扉の前に置いて、大音量で鳴らして聴いていて。かなり無理矢理なことをしていたのですが、これがあったらめちゃくちゃ重宝しそうですね。
バスルームって何もやることがないから、ビートだけ流してその上でフリースタイルをやったり、メロディを考えたりしているんです。そのときにスマホじゃなくてこのWillenでビートを鳴らしたら、ちゃんと低音も聴こえるし楽しくできそうな気がしますね。
「音楽を聴かないときでも着けていたい」Marshallオーディオ製品の定番ヘッドホンの実力は?
―こちらはMarshallのヘッドホン「Major IV」です。発売から3年が経ったいまも、売上ランキング上位をキープしています。デザインもさることながら、充電すると最大80時間使用できるのも魅力です。
ぜったくん:80時間ってすごいですね! じつは僕、外へ持ち出せるヘッドホンを持っていなかったので、Major IV の試聴をとても楽しみにしていたんです。
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Major IV Black(オフィシャルサイトで製品を見る)
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ぜったくん:低域の聴こえ方がすごくいいですね。50Hzくらいまで出ているような感覚というか。キックがドーンと鳴る感じ、ベースの超低音の響く感じをちゃんと感じます。スタジオのでかいスピーカーで聴いているような気持ちになってテンション上がりました。広がり感もすごくあるし、聴いていてめちゃくちゃ楽しい。
しかも軽いですね。外で聴くときとか絶対軽いほうがいいじゃないですか。装着感もとてもいいです。家にはゲーミングヘッドホンがあって、それで長時間ゲームをやっていると耳が痛くなるんですよ。でも、これはマジで快適。耳を圧迫しているのではなく包み込んでいる感じ……装着しているほうが耳が心地いいくらいで、音楽を聴かないときでもしていたいです(笑)。ルックスも可愛いし、散歩と相性良さそう。値段も手頃ですね。欲しくなりました。
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「自分がつくった曲を聴きまくりたい」音にこだわったノイキャンイヤホン
―最後に、Marshallの最新イヤホン「Motif II A.N.C」を試聴していただきたいです。ノイズキャンセリングのオン・オフ、そして外部の音をあえて取り込んだトランスペアレンシーモードの3つを選択できるんですよ。音質が損なわれない程度に不要なノイズを除去してくれるし、切り替わるときにMarshallのアンプのスイッチ音を再現するなど遊び心も利いています。
ぜったくん:ノイキャンの効き具合がヤバいですね。ノーマルと聴き比べると音の締り方が全然違う。他のメーカーは、ノイキャンにすると左右の定位バランスが崩れるなど、ちょっと気持ち悪く感じるイヤホンもときどきあるんですけど、そういう不自然な音響にはまったくならない。
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Motif ll A.N.C(オフィシャルサイトで製品を見る)
ぜったくん:これもアプリを使って細かくEQを設定できるのですね。個人的には上の帯域の聴こえ方がすごく好きです。嫌味なくすべて聴こえるというか。しかも低域がしっかり出ていて。これで自分がつくった曲を聴きまくりたいです。
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演奏の思い出が蘇る。昔ギターでコピーした曲を試聴
―では、ここからはぜったくんにとって思い入れのある曲を、Marshallのオーディオ機器で試聴していただきたいです。
ぜったくん:わかりました。では最初にASIAN KUNG-FU GENERATIONの“転がる岩、君に朝が降る”を、Acton IIIで鳴らしてみます。
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ぜったくん:アジカンは、それこそカバーしていたときにMarshallのギターアンプをめっちゃ使っていました。リードギターもサイドギターもコピーして、それを重ねて楽しんでいましたね。ギターの多重録音とかにこだわっていた時期に、よく弾いていたのがアジカン。自分にとって初期衝動の象徴のようなバンドだったので、ギターがドカンと歪んでいる音を是非聴いてみたかったんです。
―実際に試聴してみていかがでしたか?
ぜったくん:生のドラムサウンド、めっちゃいいですね。生楽器との相性も、すごくいいんだなと思いました。ギターのクリーントーンのきらびやかな感じも再現されていて。声のニュアンスもちゃんと聴こえるので飽きない。ベースもいいなあ。
―この曲をMajor IVで聴くとどうですか?
ぜったくん:いつまでも聴いていたいです(笑)。ギターの生の音がActon IIIとはまた違う印象なのですが、もちろんヘッドホンの方がステレオ感が増していて、右からリードギター、左からサイドギターがクリーントーンで気持ちよく始まり、歪んだところのサビのダイナミクスがめちゃくちゃテンション上がります。Major IVで聴いても生ドラムがとてもよかったですね。このヘッドホン、かなり気に入りました。
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―あと1曲、ジェイコブ・コリアーの“All I Need”を選んだのは?
ぜったくん;トラックの緻密さとコーラスの聴こえ方を確かめてみたくて。この曲も、まずはActon IIIで試聴したのですが、サブベースがめちゃくちゃいいですね。ちゃんと音程や伸び、キレも再現している。それと、生のベースをスラップしたときの高域のキラっとした部分とかがちゃんと聴こえますし。
―コーラスも、奥行きやクレッシェンド / デクレッシェンドのダイナミズムもしっかり出ている。シンセも心地いいですね。
ぜったくん:本当ですね。声だけになるところとかもめちゃくちゃ気持ちよかった。広がりや奥行きがあって、立体感があるようでした。
―では、“All I Need”をMajor IVで試聴してみてください。
ぜったくん:いやあ、これはだいぶヤバいですね(笑)。この曲、めっちゃ聴いていますけど、それでもいま気がついたミックスの技とかフレーズとかありました。そしてやはりキックのズン、ってくる感じがちゃんとある。そしてベースの輪郭が、ヘッドホンだとより明確に聴こえますね。
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ギターアンプのメーカーというMarshallのイメージが覆された試聴体験。「全国の小学校に配りたい」
―今回、試聴してみてMarshallに対する印象はどう変わりましたか?
ぜったくん:これまでMarshallといえば「ギターアンプのメーカー」というイメージだったのですが、聴いてみたらヘッドホンとか僕の好きなサウンドですし、自分の生活の中にMarshallが入ってくるのは嬉しいですね。スタジオで大音量で鳴らしていた重厚なアンプというイメージだったMarshallが、自分の耳に装着できるのが新鮮でした(笑)。
―用途によってスピーカーを使い分けるライフスタイルも楽しいですよね。部屋でじっくり聴きたいときはActon IIIを、アウトドアでみんなで楽しみたいときはMiddleton、バスルームではWillenみたいに。
ぜったくん:それ、すごくいいと思います。Bluetooth機能を使えば部屋ごとに切り替えられるし、防水機能のおかげでバスルームでもこれだけいい音を聴けるようになったのはかなり嬉しい。生活の中で、音楽がより身近になりそうです。僕は曲をつくっているので、自分の曲がスピーカーによって聴こえ方がどう変わるのかを確認する上でも、複数スピーカーがあるのはいいなと思いました。
―若い世代の音楽ファンに向けて、Marshallのオーディオ機器をどうおすすめしたいですか?
ぜったくん:まずは大谷(翔平)選手が全国の小学校に自腹でグローブをプレゼントしたみたいに、Major IVを全国の小学校に配りたいです(笑)。ちゃんとしたオーディオ環境で、子どもの頃から「いい音」を聴くのはとても大切だと思うんですよ。Acton IIIも1クラスに1台は必要。昼休みとか、生徒がそれぞれ好きな曲をActon IIIで鳴らしてもいい時間とかあったら最高じゃないかな。
―夢が広がりますね(笑)。アンプの老舗メーカーとしてのMarshallの歴史を知らない世代は、それを知ることでよりMarshallオーディオにも愛着が湧くかも知れません。
ぜったくん:たしかに。Marshallオーディオで育った子どもたちが、バンドを始めてスタジオに行ったら同じロゴのアンプが置いてあって「え、Marshallってギターアンプもつくっているの?」とびっくりする逆転現象も、これから起きるかもしれないな。それでギターをつなげて思いっきり歪みを浴びてほしいです(笑)。Marshallの歪みを体験したら絶対に人生変わると思うんですよ。……とか言いつつ、僕のギターはいままったく歪んでないですけど(笑)。
―あははは。
ぜったくん:でも、魂の芯の部分はつねにMarshallで歪んでいますよ!
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- 商品情報
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Acton III Black
価格:43,980円(税込)
Middleton Cream
価格:49,980円(税込)
Willen Black & Brass
価格:15,980円(税込)
Major IV Black
価格:20,980円(税込)
Motif II A.N.C
価格:29,800円(税込)
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