Grooving Night―“寝る前に、グルーヴ溢れる夜を過ごそう”

SIRUPとTENDRE、盟友によるツーマンで語られた「音楽が社会にできること」とは

3月19日、アーティストSIRUPがホストを務める「寝る前に、グルーヴ溢れる夜を過ごそう」をコンセプトにしたイベント『Grooving Night』が開催され、大阪Zepp Nambaが熱狂に包まれた。これまでiri、OKAMOTO’Sをゲストに迎え、第3回目となる今回はSIRUPの盟友・TENDREが満を持して登場。

鍵盤やベース、ギターにサックスなど、あらゆる楽器を演奏する河原太朗によるソロプロジェクトTENDREは、2017年のデビュー以来、『森、道、市場』や『FUJI ROCK FESTIVAL』などの音楽フェスへの出演、CMタイアップなど着実に活動の幅を広げ、デビュー5周年となる昨年は全国ツアーを成功させた。

これまでコラボ楽曲を2曲リリースし、互いのライブに客演として参加、プライベートでも交友の深い2人が、「音楽・社会・人をつなぐ」をコンセプトにした本イベントでどんなグルーヴを魅せてくれるのか。レビューと、終演後のSIRUPとTENDREに、混沌とした社会で音楽を届ける理由について伺ったインタビューをお届けする。

「誰も取り残さない」ライブ現場を目指して

第3回目となる『Grooving Night』では、SIRUPが活動を通して伝える「誰も取り残さない」ライブ現場を目指した取り組みが新たに実施された。

その一つが聴覚や視覚に障害のある人への鑑賞サポート導入だ。障害のある人にとってライブを鑑賞するうえでハードルとなっているものを低減し、さらに楽しめる環境をつくるために試験的に導入された。

聴覚障害のある人たちには、ステージにリンクさせた字幕や映像が映し出されるメガネ型ディスプレイを導入。装着した状態でステージを見ると、視界の下部にカラオケのように歌詞が表示されたり、楽曲に合わせた波形が映像として映し出される。事前に準備することのできないMC中の言葉はリアルタイムで入力され、瞬時に何を話しているかを確認することができる。VRゴーグルのような大きなものではなく、まさにメガネ型でとても軽量。数時間あるライブでも、首や肩が疲れることなく楽しめるのも魅力的だ。

また、弱視の人たちを対象に、ステージ上の映像を手元で鑑賞できるタブレットを導入。タッチパネルで見たい部分を指で拡大することもでき、自分にあった距離感でステージを楽しむことができる。

もう一つの取り組みが、LGBTQ+を含む性的マイノリティとその家族、アライ(※)の尊厳と権利を守り、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指す団体・認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」が運営する『プライドセンター大阪』のブース出展だ。

同性婚が法制化されていない現状や、性的マイノリティが課されている多くの問題に対して声をあげ続けてきたSIRUP。会場にはLGBTQ+を表すレインボーフラッグとともに写真を撮り、アライであることを表明できるフォトスポットや、『プライドセンター大阪』がセレクトした書籍の紹介、オリジナルグッズの販売が行なわれた。

(※)アライ……性的マイノリティの課題を理解し、ともに生きやすい社会を創り出そうとする人たち

個人的には、ライブやイベントに行く際に、ノンバイナリーを自認する私が入れるトイレがあるのか不安に感じることがよくあるが、今回は多目的トイレの目印に「オールジェンダートイレ」の表記も並んでいたことがとても嬉しかった。

こうした取り組みにSIRUPは「これまで楽しみたくても楽しめなかった人も、心地よく過ごせるだけでなく、みんなが学んでいける場になると思います。誰もが音楽を楽しめない限り、音楽の自由はないと思っています」と語った。ゲストのTENDREも「ライブはみんなでつくるものであって、立場による差があってはいけない」と今回の取り組みに賛同し、あらためて今後のライブのありかたを考えるきっかけになったと話した。

あたたかさで人を躍らせる、TENDREが織りなすグルーヴ

ライブパートの開始時には、SIRUPのアナウンスで「盟友」の紹介を受けたTENDREが登場し、2020年にリリースされた自身の人生歌“LIFE”を披露。会場中に響き渡るTENDREの甘い声が、緩やかに私たちを『Grooving Night』へと導き、これから始まる夜に期待を膨らませる。

続けて“FANTASY”と“DOCUMENT”で会場は暖かさに包まれたダンスフロアと化し、4曲目にSIRUPとのコラボ曲“ENDLESS”のイントロが流れると、ステージ上にSIRUIPが登場し、客席から歓声が広がった。

過去2回の公演ではゲストのステージに立つことはなかったSIRUPだが、今回は特別。TENDREの低音とSIRUPの高音によるマリアージュは文字通り至福であった。

ライブ後のトークセッションに合わせてMCで「あとでベッドで“はなし”をしよう」と告げ、デビューEPから“hanashi”を披露。バンドのアレンジによって、楽曲に何層ものレイヤーを持たせ、深みある音楽体験へと導き、ラストは力強いギターのサウンドで締めたのも衝撃的だった。

全6曲のライブパートを締めくくるのは、ダンスチューン“RIDE”。心から踊らされるライブを体感した私たちは、激しさだけが踊る理由ではなく、あたたかさからも踊ることができるのだと感じさせられた。

混沌とした社会でも、喜びを忘れないSIRUPの思いの体現

続くSIRUPのライブパート、1曲目は“Need You Bad”。アレンジの効いたパフォーマンスで魅了し、開始早々会場は一体となっていく。その盛り上がりを冷ます暇なく“Superpower”が始まり、ステージはレインボーに輝いた。まるで多様な性のあり方を祝福し、ともに闘っていく意思が映し出されているようにも見えるこの演出は、意図があったかはわからないがSIRUPらしいなと感じる。

代表曲の一つとも言える“LOOP”を圧倒的な歌唱力で披露したあとは、「友達と一緒に遊びますね!みんなも一緒に遊んでくれる?」と声をかけるとTENDREが登場。コラボ楽曲である“PLAY”を、「6年ぶり ツーマン」と替え歌をしながら歌ったりと、まさに2人で楽しんで遊んでいる姿を見せてくれた。

5曲目には先日リリースされたばかりの新曲“Your Note”を披露。じつはこの曲、SIRUPがプロデュースした香水に使われている香りと音階を紐付けた「香階」という手法をもとにつくられている。軽やかに始まったと思えば、ラストには深みを増していくサウンドが印象的だ。

続く“SWIM”ではフルートの音ともに心もカラダも軽やかになり、「Everybody 自由に!」のかけ声とともに、空を飛んでいるかのように気持ちが舞い上がる。SIRUPのライブパート最後の曲は、今年1月にリリースされた“GO!!”。最高なダンスチューンには、この混沌とした社会でも、希望、楽しみ、喜びを忘れないSIRUPの思いが込められている。ライブを通して、その思いを私たちに体験させてくれる姿がそこにはあった。

「社会に存在しているものすべてに力はある」一人ひとりが持つその力を信じて

ライブパートのあとは、2人がパジャマ姿で登場し、トークセッションがスタートした。

今回用意されたトークテーマは、「お互いの曲で気になる歌詞は?」「ライブや音楽が社会にできることとは?」「心が疲れたときのセルフケアってどうしてる?」の3つ。

1つ目のテーマ「お互いの曲で気になる歌詞は?」では、TENDREはSIRUPの“Need You Bad”から<許容する幅が増えると愛せることもまた増えると誰が言ったの?まるで泥沼 突き刺さるのさ愛の言霊>という歌詞をあげ、「歌詞の書き方が面白いし、ラブソングでもあるし人生の歌でもあるなって感じた」とコメントを送った。

SIRUPはTENDREの“LIFE”で歌われている<終わりには敵わない>という歌詞に対して、「この終わりって何を意味してるの?」と問いかける。「この曲はバンドメンバーのためにつくった曲。身内や憧れの人の死や、パンデミックを経験して、必ず終わりがくることを感じていた。いまのバンドメンバーとも、いつまで一緒にできるかわからない。終わりがくるからこそ、それまでみんなで楽しみたいと思って書いた曲」と思いを語った。

「ライブや音楽が社会にできることとは?」の問いに、SIRUPは「まだまだ社会は成長の途中。音楽産業ってじつはすごく小さいけど、エンターテインメントはやっぱり影響力がすごく強いから、その影響力をより良い社会づくりに還元したいし、するべきだと思っている」と語った。

TENDREも共感を示しながら、「いまを忘れて楽しんでって言いたいけど、そうできない現状もある。ただ僕のなかでは音楽って会話の一つで、僕の思いを歌うことが、誰かの代弁にもなることもある。今日みたいなライブのあり方をもっと増やしていきたい」と続けた。2人の音楽が持つ力と、ここにいる一人ひとりが持つ力が影響し合い、より良い社会を目指すための対話がこの空間に巻き起こっているのだろう。

最後に、「心が疲れたときのセルフケア」を聞かれると、TENDREは「自分にご褒美を買います。スキンケアもよくて、まるで植物を育ててる気分なんです(笑)」と話す。こうしたご褒美を与えるのは「無理なく生活をアップデートしていくと、気分が良くなるし、自分に合うものが見つかる」からだという。

SIRUPは「嫌なものを見ることは自傷行為につながるから、なるべくSNSと距離をとる」と前置きし、「思ってなくてもいいから、とにかく自分に褒め言葉を言い聞かせる」というアイデアを教えてくれた。何をすると自分の心や身体がケアされるのか、そして嫌な気持ちになるのか、それを知ることは「自分を探す旅」だと2人は話してくれた。

トークセッションの最後には、それぞれの楽曲“hanashi”と“LOOP”のマッシュアップを披露。ほろ苦さと甘さが混ざり合う歌声と、ゆっくりと回るミラーボールの光の粒が会場を包み込み、第3回目の『Grooving Night』の幕を閉じた。

6年ぶりのツーマンで見えた根底で繋がるもの

ーまずはお疲れ様です!2人ともとてもリラックスした雰囲気とともに終えられていましたが、6年ぶりの対バンはいかがでしたか?

TENDRE:6年ぶりと聞くとかなり長く感じるんですけど、客演も含めていろんなライブの現場でも会っていたし、プライベートでもずっと仲良くしてるので、あらためてお互いのいまのムードを知れたのは嬉しかったです。このイベントだからこそ話せたことも多かったし、自分にとってはすごくいい時間でした。

SIRUP:僕も同じ感覚で、リラックスモードが高かったですね。このイベントのホストという視点でいうと、申し訳ないですけど、非常に気が楽でしたね(笑)。

ーそのリラックスした雰囲気はこちらにも伝わってきたし、見てるこちらも緊張せずにいられました。そもそも2人の出会いっていつ頃なんですか?

SIRUP:出会いは、今日のサポートをしてくれたキーボードの井上惇志がやってるshowmoreっていうバンドに誘われて、showmoreとTENDREとSIRUPでスリーマンライブを渋谷でやったときですね。

TENDRE:お互いデビューして曲を出していくタイミングがすごく近くて、「どんなやつなんだ?」みたいな感じだったんだよね。

SIRUP:ランキングで、SIRUPとTENDREが行ったり来たりしてたよね(笑)。

TENDRE:そうそう。ライバル視ではないけど、ずっと注目してた人だったので、会った瞬間に仲良しになりましたね。

ー以前から『Grooving Night』にTENDREさんを迎えたいと話していましたが、3回目にしてゲストに呼んだ理由を教えてください。

SIRUP:音楽の親和性もあるし、普段から社会や音楽業界に対する考えかた、人との付き合いかたみたいなことをめちゃくちゃシェアしてるから、このイベントにTENDREがフィットすることはわかってたんですよね。実際にすごくフィットしていて。ホストとしての考えですけど、このイベントの方向性を固めるうえでも今回でバチッとはめたかったんです。それは今日やってみても実感しました。

ー実際にライブを観ていかがでしたか?

SIRUP:僕の場合は、歌いながら動き回って、バンドメンバーとグルーヴを重視しながらどこで爆発するかを考えてライブをしているんですけど、TENDREもやり方は違えど、お客さんはきっと近しいものを感じていると思うんです。お互い違う到達点にいってるけど、芯に持っているものは同じ、ミュージシャンシップみたいなところが結構似てるなと感じました。

精神的なところで言うと、できるだけ誰も取り残さないという精神がTENDREのMCにも出てて、自分のなかでもそれは一番大切なことで。でも、そうした精神を共有できるミュージシャンってそこまでいないので、すごく嬉しかったですね。

ーTENDREさんは今回『Grooving Night』に参加してみていかがでしたか?

TENDRE:事前にイベントのコンセプトや取り組みの話をしっかり聞かせてもらったので、ここだからこそ生まれる一体感をイメージしやすかったし、自分自身もこういうことを試してみようと思えて、すごく安心してライブができました。あと、SIRUPもそうだし、スタッフ含めて知っている人がたくさんいたので、いままで以上に無邪気なライブになりました(笑)。

本当はあれぐらい自由でいいのかなって思ったりもして。ショーとしてつくり込まれている楽しさもあるんですけど、個人的には、僕もお客さんもリラックスしながら楽しむことができているのがいいなって思いました。

対話を通して築いた2人の絆

ープライベートでも仲良くて、お仕事でもコラボ楽曲を出していたりと、心地いい関係性を築いているんだろうなと思うのですが、2人の関係で大事にしていることはありますか?

TENDRE:お互いがそれぞれ自分の言葉で歌詞を書いて曲を出していくこともそうですけど、やっぱりその歌を通して相手の意思を知るというか。歌詞の意味をさっきのトークセッションでも聞きましたけど、素直な状態でお互いのことを紐解いていくことが多かったから、特段何かを意識することはないように思いますね。立場もわりと近いというか、いろいろと経験したうえでソロ活動をしてるっていう共通点も多いからじゃないかな。

SIRUP:いま言ってくれたみたいに、お互いにいろんなことを経てここに到達したので、そういうところでも仲良くなるのが早かったんですよ。自分たちのやってる音楽のルーツもめっちゃ近いけど、いい感じにアウトプットは違う。

でも今日ひさびさにツーマンして思ったのは、ミュージシャンとしてのスタンスがすごく似ているなということ。偶発的なものを楽しめるというか、何が起きてもそれを楽しもうみたいなところが似てるからかな。

ー公私ともに「楽しさ」を共有しながら対話を繰り返すことが、2人にとっての関係性を心地良くしている要素なのかもしれないですね。

TENDRE:尊敬もすごくあるし、自分自身友人から学ぶことがすごく多いんですが、SIRUPと話すことでそういう考えかたがあるのかとか、自分にないものを発見できるなと思います。お互いアーティストとして活動しているので、ここまでの距離で接した方がいいなとか、変に踏み込み過ぎたり言葉を求め過ぎたりしないという、相手を察せられる関係を築けたのはすごく大きいかもしれないですね。

SIRUP:とはいえ、僕たちがプライベートで遊ぶときって、5時間くらい喋ってるんです。だから対話はめっちゃ大きいと思います。人のことって基本的にはわからないことのほうが多いけど、TENDREとはわりと酸いも甘いも話してきた。同じくらいのタイミング、年齢で、新しいプロジェクトでデビューして、いろんな対話を通して相手を感じていくっていうことをこの5年でかなりやってきたのは大きいですね。

「誰も取り残さない」「みんなでつくる」に一歩近づいた2人

ー事前に『Grooving Night』のInstagramで公開しているショートインタビューで「希望を歌うことが大切」とTENDREさんは話していましたが、なぜ希望を歌うことが大切だと感じますか?

TENDRE:これは大きい話になってしまうんだけど、希望を歌うことは大切とはいえ、ただ闇雲に希望を歌うことはよくないって思っていて。世の中の状況だったり、悲しいニュースを聞いて落ち込むことがあるなかで、それでも生きていかないといけない現状がある。

そのなかで曲をつくることで自分自身が救われることもあるし、ほかの人の曲によって救われてきた部分もすごくあるんです。ただ、全部がポジティブソングかって言われたら決してそういうわけではなくて。たとえ悲しい曲だとしても、自分が闇のなかに光を見出せたのであれば、それは1つの希望だと思います。つくり手によって希望の表現って全然違うんですよね。

作者が何を抱いてそれを言葉や音にしたのかが重要だと思うので、僕としては、自分のなかで悲しい出来事が起こって、こういう声明を出したいって思って出したものが誰かの希望につながるんだったら、音楽家冥利に尽きる。闇雲に前を向けってことではなく、前を向けるタイミングがあったら、そのときは一緒に同じ方向を見れたらいいよね。リスナーとの距離感を考えながらつくることが多いかもしれません。

SIRUP:僕も最近、絶望することがたくさんあって、その絶望している状態を肯定することが、真の希望に繋がるんじゃないかなって思って。特にいまの混沌とした社会や世界では、「なんとかなるよね」ではなんとかならない。ちゃんと自分がアクションしないと、自由や希望は勝ち取れない状況があったりする。

だから、そういう時の自分の感情をすごく肯定してくれるものになればいいなと思っています。結局、僕が書いていることって、多くの人が経験するようなことだと思うんです。自分たちはアーティストとして、自分たちの言葉や個性を外に出して、音楽としておもしろいものにしようとする。それが派生してみんなの生活の肯定に繋がって、何かのエネルギーになればいいなと思っています。そのエネルギーが希望だと思うんですよ。

でも、狙いすぎるのも寒いなと思ったりもするので、純粋に自分の感情を肯定する曲を書き進めて、後半くらいで、「この曲で同じ気持ちの人の気が少しでも楽になればいいな」って思っています。

ー今回、障害のある人の鑑賞サポートを導入したり、プライドセンター大阪のブースを出展したりと、新たな取り組みもありました。開演前に2人は実際に体験していましたが、いかがでしたか?

SIRUP:こうしたサポートによってより音楽を楽しめるのはめちゃくちゃにいいですよね。もちろん、マイノリティ性や障害のある人にとっていいものであればいいなと思います。これまでに伝えてきた「誰も取り残さない」という思いで現場づくりをしたいっていう自分の夢に1つ近づいたのは嬉しいですね。あとは、自分が表現できるクリエイティブが1つ増えた喜びもあります。こうしたシステムやサポートを導入できるのであれば、この鑑賞サポートを使用する人にだけ見てもらえる「この曲のここでこれを見せたい」みたいなアイデアを考えられそうでワクワクしました。

TENDRE:昔描かれてた近未来の感じがあって、純粋に感動しましたし、それを行動に移せてること自体が感動でもありました。口では「みんな平等に楽しもう」って言えるけど、こうしたサポートを導入することで、より多くの人がライブを楽しめるというのは自分のなかでもめちゃくちゃ大きな発見です。そして、こうしたサポートの存在をみんなが知ることで、これまでは当たり前のようにライブを楽しんでいたけど、障害のある人たちはこういう気持ちでライブを見てたんだな、来れない人もいたかもしれないって、多くの人たちが気づきを得られたんじゃないかなと思います。今後もっと自然なかたちで取り入れていけたらいいなと思いました。

SIRUP:いまは自分たちの持ち出しでやると予算的な面で続けることが困難な場合もあるから、そのハードルが下がったり、国の制度がどんどん拡充したりされるといいなって思いますね。

長く続く闘いのために

ー最後に、いろんな問題が山積み状態のいまを生きるみんなへメッセージをお願いします。

SIRUP:いま起こっている虐殺や戦争を含む多くの問題は、人間が進化する途中で退化していることだと思っていて。突如出てきた問題というよりかは、もともとあった問題だと思うんです。苦しい状況が続いているけど、声を上げている人と連帯して、手をつなげる場所を、このイベントもですし、アーティストとしてもつくっていきたいです。長く続く闘いのなかで、連帯しているんだという意識を持てる共同体を、一緒に過ごしていけたらいいなって思っているし、ミュージシャンもそうしたセーフゾーンをつくる努力をしてほしい。僕ももっと努力していきたいし、できることがあるならもっとやっていきたいと常々思っているので、みんなでネクストステージへ行きましょう。

TENDRE:現実ではないようなことがたくさん起こっているし、政治に関しても、このままだと本当に危なくなると感じています。自分自身も、自分の大切な人も守れなくなる状況になりかねない。だけど、多くの情報を一挙に知ろうとするのは、大事なことだけど危険なこともある。SNSを見ているとたくさんの情報が飛び込んできちゃうので、まわりの人たちと一緒に、自分たちができることは何なのか、身近なところからやれることを探していくことが大事だと思います。

音楽を介してコミュニケーションをしていくことで、誰かの気づきやアイデアにつながったらいいなとあらためて思いました。自分自身も足を止めずに、でも自分のペースを守りながら頑張って活動していきたいです。

イベント『Grooving Night』について
公演名:Grooving Night #3(グルーヴィングナイト) 出演:SIRUP/TENDRE 日時:2024年3月19日(火)18:00開場 19:00開演 会場:Zepp Namba
主催:読売テレビ/キョードー関西
企画制作:読売テレビ
協賛:牛乳石鹼/Bison/Zentis Osaka/Billboard Live OSAKA/大阪スクールオブミュージック専門学校
協力:CINRA/The ONOE FURNITURE



今回のインタビューは、『Grooving Night』の公式Podcastで音源としてもお楽しみいただけます。記事には載せきれなかったお話や、2人の関係が垣間見れる雰囲気をぜひお楽しみください。
プロフィール
SIRUP

ラップと歌を自由に行き来するボーカルスタイルと、自身のルーツであるネオソウルやR&BにゴスペルとHIPHOPを融合した、ジャンルにとらわれず洗練されたサウンドで、誰もがFEEL GOODとなれる音楽を発信している。2021年には2nd フルアルバム「cure」をリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVALʼ21」に、国内のR&Bアーティストでは異例となる初出演でメインステージ GREENSTAGEに立ち、圧巻のパフォーマンスを魅せた。2022年に入ってからも世界的ポップスター「Years & Years」のRemix参加や、アイリッシュ・ウイスキー「JAMESON」、オーディオブランド「BOSE」とのコラボを発表、11月には自身初となる日本武道館公演を開催するなど、日本を代表するR&Bシンガーとして音楽のみならず様々な分野でその活躍を広げている。2023年4月に最新EP「BLUE BLUR」をリリース。

TENDRE

ベースに加え、ギターや鍵盤、サックスなども演奏するマルチプレイヤー、河原太朗のソロ・プロジェクト。 2017年12⽉にTENDRE名義での6曲⼊りデビューEP『Red Focus』をリリース。同作はタワーレコード“タワレコメン”、HMV“エイチオシ”、iTunes “NEW ARTIST”、スペースシャワーTVミドルローテーション“it”に選ばれるなど、各⽅⾯より⾼い評価を獲得。 2018年10⽉には、tofubeatsによるリミックスも話題となった配信シングル『RIDE』を含む1stフル・アルバム『NOT IN ALMIGHTY』をリリース。 2019年4⽉・5⽉と連続して配信シングル『SIGN』『CHOICE』をリリース。前者はオーストリアのスポーツサンダル・ブランドTevaとコラボ レーションしたMVも話題を集め、その楽曲はJ-WAVE "TOKIO HOT100"で最⾼位4位を記録。 また、Hondaが⼿がける旅とバイクの新プロジェクト「Honda GO」のテーマソングとして新曲『ANYWAY』が起⽤。



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