書籍『デレク・ジャーマンの庭』が本日4月9日に刊行された。
1942年にロンドンで生まれた画家、舞台美術家、映像作家のデレク・ジャーマンはHIV感染が判明した1986年から、イギリス南東部の最果ての岬、原子力発電所にほど近いダンジネスに移住。1994年にエイズ合併症により逝去する直前まで「プロスペクト・コテージ」と呼ばれる小屋と庭を慈しみ、育て続けたという。
同書はジャーマンのエッセイと、友人で写真家のハワード・スーリーが撮影したプロスペクト・コテージのビジュアルブック。日本語訳版は長らく絶版だったが、製版をデジタルリマスターし、没後30年記念として新訳復刊された。訳者は美学者で庭師の山内朋樹。
【日本語版訳者あとがきより抜粋】
(前略)この庭は、ハワード・スーリー——訳者の疑問に真摯に答えてくれた——の写真が物語るように、たんにみずみずしい植物に満たされているだけではない。謎めいた立石群、廃材やくず鉄や戦争遺物からなる奇妙なオブジェがひしめきあい、生きて再生し続けるものと朽ちて滅びたものとが、あるいは規範的なものとクィアなものとがせめぎあい、混淆(こんこう)する場所だ。庭の花や石やオブジェには、花に魅了された少年期にはじまり、同性愛者として生き、HIVとともに暮らした彼の個人史が、草花の風景のただなかに原発や戦争の影をたたえるダンジネスの歴史が、幾重にもたたみ込まれている。(後略)
山内朋樹
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