最果タヒの第12詩集『恋と誤解された夕焼け』が本日5月30日に刊行された。
映画、写真、展覧会、街とのコラボレーションなど、詩の可能性を模索してきた詩人・最果タヒ。同作には、文芸誌『新潮』で3年間にわたって連載された詩を中心に、SNS発表作品を加えた43篇が収録される。
【最果タヒのコメント】
生きるために必要のないもの、星の光とか、そういうものをまっすぐに信じている時だけ、まっすぐに歩める気もする。現実や生活と呼ばれる時間の中に、たくさんの夢や「信じなくては消えてしまうもの」はあって、たぶんそれは詩も同じだ。現実に根ざすわけではないけれど、現実の中で息をする一瞬一瞬に混ざっている、そんな光を形にすることが、言葉にはできる。言葉は曖昧で、そうして案外便利ではなく、いろんな繊細な気持ちを語るにはどうしても不十分なことが多いから、相手が受け取ってくれると信じてなんとか組み立てた言葉を差し出すしかなく、そうして受け取る時も相手の瞳の光が見えるような、そうしてその奥の気持ちがなんだかわかる気がする、と予感を胸に手を差し出すしかないことがある。たくさんの「確かではないこと」のために言葉はずっと息をしていて、私はだから言葉を書くのが好きで、言葉を読む人に、言葉を差し出す瞬間のことを、とても眩しくて、光に満ちたことだと信じている。夢を見ている。詩集が出ます。どこかの誰かが、この本を手に取って、不意に言葉がそこから読み取れる「意味」を超えた何かに見えた時、その人が言葉や自分の見ている世界を美しいと思えたら、私はそれが一番幸せです。
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