2025年NHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』の題字が発表された。
同作は、江戸郊外の吉原の貧しい庶民の子として生まれた蔦重こと蔦屋重三郎が貸本屋から身を興して「江戸の出版王」に成り上がり、時世は移り変わって幕府から弾圧を受けながらも筆の力で戦い続ける姿を描いた作品。横浜流星が蔦屋重三郎役を演じる。作は森下佳子。
題字を担当したのは、1945年福井生まれの書家・石川九楊。現在までに書作品2千点以上、著書100点以上を世に送り出している。京都精華大学名誉教授。
【石川九楊のコメント】
「べらぼう」を書く
石川九楊
題名が「べらぼう」だと聞いたとき、なかなか含蓄のある憎い命名に舌を巻いた。
語源は江戸時代の見世物小屋の醜貌の畸人・便乱坊(ルビ・べらぼう)。今では転じて痴れ者など負の意味合いが強調されて使われることが多いが、そこには、尋常ならざる、異界の人などの正の意味も重なっている。
ここを見定めて書き始める。「べらぼ」まではすんなりと筆は進むが、「う」の箇所で、「ウッ」と筆が渋る。正書法は「う」だが、実際の発音は限りなく「お」に近い。「べらぼー」と音引きするか、「べらぼお」と口を大きく開いて書き終える誘惑にかられる。「う(U)」と口をすぼめて終る気になれないのだ。そこで行きついたのが、やや口を開いた「う」字。
また副題「蔦重栄華乃夢噺」では、人名「蔦重」が異質。そこでここは違った署名風の書体で書くことにした。
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