メイン画像:Japan-Insider, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
マーク・ロスコやクロード・モネなどの収蔵作品で知られるDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)が、2025年1月に休館する。同館を所有・運営する印刷インキなどの化学メーカーDIC(本社・東京)は、規模縮小と移転を基本方針とし、「美術館運営の中止の可能性も排除しない」としている。同社が保有する作品の資産価値は今年6月末の簿価ベースで総額112億円ともいわれ、その行方にも注目が集まる。さらに9月5日には、地元から存続の署名運動も立ち上がった。
広大な自然と名物建築。続く赤字で運営を見直し
同館は1990年5月、千葉県佐倉市の総合研究所敷地内にオープンした。20世紀美術を中心に754点の作品を所蔵しており、このうち同社は384点を保有する。モネやピカソの作品のほか、マーク・ロスコやジャクソン・ポロックら米国の現代美術のコレクションが有名だ。
建築は戦後モダニズムの代表的建築家・海老原一郎によるもので、約3万坪の庭園も特徴のひとつ。2008年に増築された、ロスコの絵画のみで構成された空間「ロスコ・ルーム」でも知られている。
休館が発表されたのは8月27日。同館は、維持費や企画運営費などのコストに対して近年は赤字運営が続いていたといい、今年4月に外部から取締役会に助言する機関として「価値共創委員会」を設立していた。
同委は検討の結果として、東京への移転を想定した規模縮小もしくは運営中止を助言。それを受けて同社は、年内に今後の運営方針を決め、現在の美術館は2025年1月下旬から休館すると発表した。具体的な日時は今後、同館ウェブサイトで発表すると告知。作品の売却も視野の範囲内とし、これまで非公開だった主要美術品リストも開示されている。
前澤友作氏も反応。存続を求める署名は一晩で1万人超え
休館の発表に、実業家でアートコレクターの前澤友作氏が反応。前澤氏は同館が旧蔵していた長谷川等伯筆の『烏鷺図屏風(うろずびょうぶ)』を収蔵している。Xの引用リポストというかたちで、「僕に何かできることがあれば美術愛好家として協力したいと思っています」と発言した。
同館の地元である佐倉市は9月5日、存続を求める署名活動を始めたと発表した。一晩明けた6日午前10時の時点ですでに、11291件の署名が集まっているという。
署名活動の主体は、市観光協会や佐倉商工会議所、市内の国立歴史民俗博物館などの代表者とつくる「DIC川村記念美術館の佐倉市での存続を求める会」。同会はウェブサイトにて、「DIC川村記念美術館は、芸術・自然・建築が高いレベルで調和するひとつの『作品』であり、移転・閉館といった運営方法の見直しは、我が国の文化芸術の普及・発展にとって大きな損失」としている。署名は9月30日まで続けるという。
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