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11人組ガールズグループのME:Iが今年の『第75回NHK紅白歌合戦』に初出場する。
デビューから1年での『紅白』出場を成し遂げたが、そこまでの人気を得たのは、どんな理由なのか。
ME:Iメンバーの魅力や、バックグラウンドにあるオーディション番組の面白さ、これから注目したい番組などについて解説する。
ME:Iのデビュー曲“Click”のPV
視聴者がプロデューサーに。ME:Iを生み出した「日プガールズ」とは
「新しい日本の世代を代表する“未来のアイドル”」として出発したME:I。デビュー1年目で『NHK紅白歌合戦』初出場を決め、『第66回 輝く!日本レコード大賞』では新人賞を受賞。CMキャラクターにも引っ張りだこで、ディズニー映画『モアナと伝説の海2』のエンドソング担当という大役にも抜擢された。2023年12月16日の結成から丸1年、快進撃が止まらないままに、彼女たちは大充実の2024年を締めくくろうとしている。
なぜME:Iがいま、ここまで熱い支持を得ているのか。その考察をする際にまず欠かせないのが、サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』(以下『日プガールズ』)を通して結成されたグループであるという、彼女たちの出自だ。
『PRODUCE 101 JAPAN』は、韓国の音楽専門チャンネル『Mnet』で放送された人気シリーズの日本版。日本では2019年にシーズン1、2021年にシーズン2が放送され、JO1、INIという2組のボーイズグループが誕生した。JO1は3年連続で『紅白』出場を決め、INIは今年リリースした6thシングル『THE VIEW』がミリオン認定を受けるなど、それぞれ絶大な人気を誇っている。
『PRODUCE 101』シリーズにおける最大の特色は、完全なる視聴者投票でデビューメンバーが決まること。視聴者が「国民プロデューサー」となり、101人の参加者のなかから最終的に多くの票を獲得した上位11人のみが、デビューを叶えられる。それゆえ、国民プロデューサーは自分の推しをなんとしてでもデビューさせるべく、SNSで魅力を発信したり、友人や家族に投票を依頼して回ったりして、熱い広報合戦を繰り広げるのだ。
オーディション番組では、参加者の成長劇や、夢へ向かうひたむきな姿勢が感動を呼び、視聴者が彼女たちに没入することで、大きな熱狂が生み出されていく。『日プガールズ』は日本初の女性版ということで話題を集め、TBSテレビで生放送されたファイナルの総投票数は、1083万673票にも上った。
元ハロプロアイドルから芸能未経験者まで。個性を生かし合うME:Iメンバーの魅力
結成時から熱狂的なファンが多く付いていることは、ME:I人気の基盤になっている。しかしオーディション時からの人気だけでは、デビュー後にここまでの活躍は成し遂げられなかっただろう。では、グループとしてのME:Iの魅力とは何か。1つは、メンバーの個性の豊かさだ。
11人のメンバーは、芸能活動の経験者からまったくの未経験者まで、実に彩り豊か。頼り甲斐のあるリーダーのMOMONAは、ハロー!プロジェクトのグループ・アンジュルムのメンバーとして2021年まで活動。またRANはLDHのGirls2、COCOROは韓国のガールズグループ・Cherry Bulletに、かつて所属していた。そしてMIUはNiziU、Kep1erを生んだオーディション番組に出演していたため、『日プガールズ』スタート時から高い知名度を誇っていた。
残る7人は、芸能活動は未経験ながらも、それぞれ異なる魅力を持つ。軽音楽部出身のAYANEは音楽への深い探究心を持ち、圧倒的な歌唱力が強み。最年少メンバーのTSUZUMIは突き抜けるような高音を出せるボーカリストで、明るい性格からME:Iの「太陽」と言われている。
キレのいいダンスが光るSUZUは、ふわふわとした雰囲気ながら、実は空手の全国大会で優勝したことがあるギャップの持ち主。SHIZUKUは宝塚音楽学校の受験経験を持つ現役音大生で、ラップの実力が高いKEIKOは、ユニークなキャラクターを生かしてバラエティ番組でも大活躍している。そしてKOKONAは三重、RINONは岡山と、地方で暮らすごく普通の女子高生だったが、歌とダンスのスキルを未経験から目覚ましく成長させ、アイドルの原石として見出された。
まるで様々なジャンルの作品が集まった漫画雑誌のように、一見バラバラな11人が集結したME:I。まったく異なる人生を送ってきたメンバーが、個性を殺してグループに合わせるのではなく、それぞれの色を生かしながらお互いに刺激を与え合うことで、無限の魅力を生み出している。
未経験者のメンバーは、経験者組のプロアーティストとしての振る舞いを間近で見ることで、通常の新人グループよりも速く、様々なことを吸収してきたことだろう。過去にME:Iメンバーにインタビューした際、未経験者組が「経験者組に助けられている」と話すのはもちろんのこと、経験豊富なメンバーも「未経験者から刺激を受け、自分をさらに高められている」と、謙虚に話していたことが印象的だった。デビュー後もそれぞれが貪欲な姿勢を崩さないことが、成長し続けられる秘訣なのではないだろうか。
またME:Iは共同生活を送っており、コンテンツやインタビューなどではたびたび、最近メンバー内で流行っている食べ物や、暮らしのなかでの珍事件などを話して和ませてくれる。そんな仲の良さと親しみやすさも、彼女たちをどんどん好きになってしまうポイントかもしれない。
1年間ですっかりプロのアーティストとして成長し、ビジュアル面も磨き続けてきたME:I。さらにアーティストとして高いスキルを持つメンバーが集まっていることも、特筆すべき彼女たちの強みである。ダンスリーダーのRANを筆頭に、11人はキレのいいダンスを繰り広げ、ボーカル面ではAYANEとTSUZUMIの圧倒的な歌唱力がたびたび話題を集める。またKEIKOはハスキー、RINONはキュートと、真逆な声質を持つ2人によるラップも楽曲に深みをもたらしている。
ME:Iのステージをまだ目にしたことがない人は、年末の番組でぜひ、彼女たちの実力に触れてみてほしい。大所帯グループではあるが、見ているうちにきっと、自分だけの「推し」が見つかるのではないだろうか。
「リベンジ組」も登場。新番組が生まれ続けるオーディション番組の魅力
近年の音楽シーンでは、数多くのオーディション番組発のグループが活躍を見せている。NiziUを生んだ『Nizi Project』とBE:FIRSTを輩出した『THE FIRST』は、いずれも朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)で放送されたことが起爆剤となり、大きな話題に。
いずれも視聴者投票型ではなく、プロデューサーによってデビューメンバーが選出される形式だったが、それぞれのプロデューサーであるJ.Y. ParkとSKY-HIが番組内で参加者へ掛けた言葉も感動を呼び、社会現象を巻き起こした。
その後、『Nizi Project Season 2』ではボーイズグループ・NEXZ、『MISSION×2』ではMAZZELと、それぞれの後輩グループも誕生し、音楽界にフレッシュな風を吹かせている。またME:Iと同じく、今年『紅白』初出場を果たすILLITも、オーディション番組『R U Next?』を経て結成されたグループだ。
オーディション番組では、夢に向かって努力する、参加者のひたむきな姿勢に感動させられる。見ているうちに「自分も目標に向かって頑張ろう」と勇気をもらう人も多いのではないだろうか。近年放送された番組の特徴としては、オーディション番組への参加が2回目以上となる、いわゆる「リベンジ組」の参加者が増えていることが挙げられる。ME:IのMIUはその最たる例だが、一度夢破れても諦めずに挑戦を続ける姿が、さらなる感動を呼んでいる。
最後に、現在放送・配信中のオーディション番組の中で、注目タイトルをいくつか紹介しておこう。
『No No Girls』(以下『ノノガ』)は、BE:FIRSTが所属するBMSGが、ちゃんみなをプロデューサーに迎えて行っているガールズグループオーディション。年明けの2025年1月11日に最終審査が神奈川・Kアリーナ横浜で行われ、デビューメンバーが決定する。
YouTubeとHuluで配信されており、毎週金曜日に最新話が公開されると、数日で100万再生を超えるほどの反響を集めている。『日プガールズ』でME:Iメンバーと共に切磋琢磨したKOKONA、MOMOKAが最終選考にコマを進めているので、そういった面でも注目したい。
『ノノガ』の見どころは、参加者のスキルの高さ。歌唱力、ダンス共に、ハイレベルなパフォーマンスを見ることができる。ここから誕生するグループは、2025年のガールズグループ界を激震させることになるのではないだろうか。また絶対に「No」を突き付けない、ちゃんみなの熱い言葉や、参加者の魅力を最大限に引き出す姿勢にも心を揺さぶられる。
Netflixで配信中の、timeleszが追加メンバーを募集するオーディション『timelesz project -AUDITION-』も、毎話大きな話題を集めている。結成14年目を迎えた超人気グループが「仲間探し」をするという斬新なプロジェクトだが、timeleszのメンバー3人が真剣に候補生とぶつかり合う姿に惹きつけられる。菊池風磨が番組内で放った「歌詞、忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと」という言葉は、「菊池風磨構文」としてバズを起こした。
韓国のオーディション番組としては、『PROJECT 7』が12月27日に最終回を迎えたばかり。シグナルソングでセンターを務めた日本出身の練習生・サクラダケンシンもデビューメンバー入りを果たした。結成された7人組グループ・CLOSE YOUR EYESは、年明け2025年1月4日に行われる『第39回 GOLDEN DISC AWARDS』にて、早くもみずほPayPayドーム福岡の大舞台に立つ。また放送中の『UNIVERSE LEAGUE』は、WayVのテン&ヤンヤン、BTOBのイ・チャンソプなど、現役アーティストが「監督”となって優秀な練習生を奪い合い、チーム戦で対抗するというスタイルが斬新だ。参加者の実力も高く、個人的には毎週楽しみに視聴している番組である。
次世代スター誕生の瞬間に立ち会えるオーディション番組は、いまや百花繚乱。年末年始を機会に視聴してみてはいかがだろうか。
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