美術館で撮影はNG?どんな服装がおすすめ?アートを安心して鑑賞するための基本マナーを知ろう

メイン画像:Photo by Amy-Leigh Barnard on Unsplash.

美術館に対して、「マナーが難しそう」「堅苦しくて緊張しそう」というイメージを抱いている方もいるかもしれません。しかし実際は、シンプルなルールやマナーを守るだけで誰もが楽しめる場所です。

とはいえ、美術館を訪れるにあたって「作品の撮影ってしていいんだっけ?」「ガムや飴を口の中に入れるのはOK?」「傘って館内に持って入ってもいいの?」などなど、心配になった経験のある方も多いのではないでしょうか? この記事では、そんな美術館に対する不安を取り除くことを目的に、知っておくべきマナーについて解説します。

これらのマナーを知ることで、アート鑑賞初心者の人もリラックスして、自信を持ってアート鑑賞ができるはずです。ベテランの人にとっても、この記事が再確認の機会となれば幸いです。

NG行為

作品にふれること

基本的にNGです。

特に絵画や彫刻などの場合には気をつけましょう。

人の手から出る油脂や汗に含まれる酸性物質は、キャンバスや紙、金属などさまざまな素材にダメージを与えます。油彩画や水彩画は非常にデリケートで、指紋や汚れは修復が難しく、作品の寿命を大幅に縮める原因となります。数百年にわたって保存されてきた芸術作品が一瞬の接触で損なわれることを防ぐため、「見るだけ」のルールを徹底しましょう。

さわってもOKな作品や、メディアアートや現代アートなどで人がふれることを前提にしたインタラクティブな作品もときどきありますが、それはあくまで特例です。さわってもOKな作品はキャプションなどに明記されているケースが多いですが、明記されていない場合はNGと思ったほうが無難です。

食べ物・飲み物の持ち込み

食べ物や飲み物の展示室への持ち込みは、多くの美術館で禁止されています。飴やガムもNGとなっている館が多いため、気をつけましょう。

NG理由は、飲み物がこぼれたり、食べ物の破片が落ちたり付着したりすることで、作品に取り返しのつかないダメージを与えることがあるからです。また、食べ物の匂いが展示空間に広がることで、他の来館者の鑑賞体験が損なわれる可能性もあります。

美術館内にはカフェやレストランが設けられていることが多いので、休憩と飲食はそちらで行いましょう。

長時間の鑑賞で水分補給が必要な場合は、密閉式の水筒を持参し、指定された場所でのみ飲むようにしましょう。

喫煙

最近では公共の場での喫煙は基本的にNGとなっていますが、美術館での喫煙も厳禁です。電子タバコも同様です。火災の危険性のみならず、タバコの煙に含まれるニコチンやタールは作品の劣化を招きます。

喫煙所などの定められた場所でのみ喫煙しましょう。

写真・動画の撮影(許可のない場所・作品の場合)

最近は撮影が許可されている美術館や展覧会もありますが、大前提として「撮影NGの可能性が高い」ということを念頭に置いておくと、マナー違反になる確率は低くなります。

撮影可否のエリア、ルールは美術館や展覧会によって異なっており、さまざまなパターンがあります。

・展示室内は全面禁止

・展示室内は基本的に禁止だが、作品によってはOK

・展示室内は基本的に禁止だが、フォトスポットが用意されている

・展示室内は全面的にOKだが、撮影NGの作品がある

・展示室内は全面的にOKだが、SNS投稿にはルールが設けられている

・写真撮影OKの作品もあるが、動画撮影はNG

・館内は全面禁止

などなど。

実際にどういったルールが敷かれているのかは、事前にオフィシャルサイトなどで確認しつつ、気になるようであれば館内スタッフの方々に質問してみましょう。

フラッシュ撮影

多くの美術館ではフラッシュ撮影が厳しく禁止されています。

その理由は、フラッシュの強い光に含まれる紫外線が、絵画の顔料を徐々に退色させる光化学反応を引き起こすと言われているためです。

特に古い絵画や水彩画、版画などは光に対して非常に敏感です。一回のフラッシュ撮影のダメージは小さくても、何千人もの来館者が撮影を繰り返せば、作品に蓄積的なダメージを与えることになります。

撮影が許可されている場合でも、必ずフラッシュをオフにし、美術館の撮影ルールを確認してから撮影しましょう。

大声での会話

大声での会話や笑い声は、他の来館者の集中力を妨げ、作品との対話の時間を奪うことになります。

音の反響が大きい展示室では、小さな声でも思った以上に広がることがあります。会話をする際は、ささやき声か、展示室を離れて行うのが望ましいでしょう。

誰かと作品の感想を言い合ったりすることはとても大切で、美術鑑賞の醍醐味のひとつでもあります。しかし、過度に盛り上がったり、ふざけあったり、ヒートアップしたりしないよう、気をつけましょう。

走ること

美術館内を走ることは、安全上の理由と作品保護の観点から固く禁じられています。

走ることで他の来館者とぶつかるリスクがあるだけでなく、床の振動が繊細な展示ケースや彫刻に影響を与える可能性もあります。

また、万が一転倒した場合、周囲の作品に手をつくなどして取り返しのつかない事故につながる恐れがあります。

特に子ども連れの場合は、事前に美術館内では走らないことを説明しておくことが大切です。

電話での通話

美術館内での電話通話は、静かな鑑賞環境を乱す行為として避けるべきです。

来館前にスマートフォンはマナーモードに設定し、重要な電話を受ける必要がある場合は、展示室を出て指定された場所で通話しましょう。多くの美術館ではロビーや屋外スペースなど、通話可能な場所が設けられています。

また、音声メッセージの再生も控え、テキストメッセージでのコミュニケーションを心がけましょう。

スマートフォンの操作のみはOKの美術館が多いですが、スマートフォンの画面に見入って作品の前で長時間立ち止まってしまう、といった迷惑行為は避けましょう。

鉛筆以外の筆記用具の使用

鉛筆以外の筆記用具の使用が禁止されている美術館が多いです。ボールペン、マジックペン、万年筆、毛筆だけでなく、シャープペンもNG、というのが注意すべき点でしょう。カッターやハサミ、定規といった尖った文房具の使用も厳禁です。

作品を模写したり、メモを取る際には美術館が許可している筆記用具のみ使用しましょう。

自撮り棒、三脚、ドローンの使用

自撮り棒や三脚、ドローンなどの使用は、展示空間内で使用禁止となっている美術館がほとんどです。

その理由は、他の来館者や展示作品に接触するリスクがあるためです。フォトスポットなど撮影可能なエリアで記念撮影をする場合は、通常のカメラやスマートフォンを使用し、周囲の状況に十分配慮しましょう。

傘や大きな荷物の持ち込み

傘や大きな荷物の持ち込みを禁止している美術館が多くあります。

リュックサックやキャリーバッグなどの大きな荷物は、展示室内で身に付けたまま移動すると、気づかないうちに他の来館者や作品にぶつかるリスクがあります。また混雑した展示室では、手に持った傘や背中に背負ったリュックサックの位置感覚が掴みにくく、作品を傷つける危険性があります。

ほとんどの美術館には傘立てや手荷物預かり所(クローク)が設置されているので、来館時に荷物を預けると身軽に鑑賞できます。

100円玉を入れて鍵を閉め、荷物を取り出す際に100円が返却される方式のロッカーを設置している美術館もあります。そのため、100円玉を1枚用意しておくと安心です。

クロークがない小規模な美術館でリュックを持ち歩く場合は、胸の前で抱えるようにして移動すると安全です。

また、旅行中で荷物が多い場合は、美術館に向かう前にホテルやコインロッカーに預けておくと良いでしょう。

補助犬以外の動物の連れ込み

一般的に、美術館には補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)以外のペットの入館は許可されていません

これは、作品保護、アレルギーを持つ来館者への配慮、また動物の毛や匂いが展示環境に与える影響を最小限に抑えるためです。

補助犬を同伴する場合は、事前に美術館に連絡して受け入れ態勢を確認しておくと安心です。ほとんどの美術館では、補助犬の同伴を法的に認めていますが、混雑状況や特別展の性質によっては特定の対応が必要な場合もあります。

ペットと一緒に外出する予定の場合は、美術館訪問を別の日に計画するか、ペット同伴可能な屋外の彫刻庭園や、ペット預かりサービスのある施設を選ぶと良いでしょう。

服装

適切な服装

極端に露出の多い服装は避けましょう。

特に宗教的なテーマを扱った展示や保守的な文化の美術館では、肩や膝が見える服装を控えるなどの配慮が必要な場合もあります。近年は日本各地で夏になると猛暑が続くため、薄着になるのは致し方ないことではありますが、館内で羽織るものなどを持参していくのもおすすめです。

フォーマルな服装をする必要はありません。コンセプチュアルな展覧会などでドレスコードが設けられている場合も稀にありますが、通常は服装に厳格な決まりはありません。

靴の選択

靴選びも重要なポイントです。

美術館内は長時間歩くことが多いため、静かで歩きやすい靴を選ぶことで、自分自身の疲労を軽減できるだけでなく、靴音による騒音も防げます。ハイヒールなど硬い素材の靴底は音が響きやすいため、できればスニーカーやソフトな素材の靴が望ましいでしょう。

また、子ども連れで来館する場合、音が鳴る靴は避けたほうがよいでしょう。光るスニーカーは館内ルールで禁止となる場合もあります。

香水は控えめに

香水やコロンなどの強い香りも、閉鎖的な展示室では他の鑑賞者の不快感につながることがあるため、控えめにすることをおすすめします。

音が鳴るアクセサリーはできるだけ避ける

アクセサリーについて、明確な基準を設けている美術館は多くありません。しかし、金属がふれ合って音が鳴ってしまうアクセサリーなど、他の鑑賞者の集中力を削ぐものはできるだけ避けたほうがよいでしょう。

コート類の管理

冬季や冷房の効いた夏場の美術館では、温度差によってコートの着脱が必要になることがあります。展示室内で暑くなったからといって、コートやジャケットを手に持って歩くと、不注意で作品にふれてしまうリスクが高まります。多くの美術館ではクロークサービスを提供しているので、入館時にコート類を預けると快適に鑑賞できます。

また、長いマフラーやストールは、知らないうちに垂れ下がって作品にふれたり、他の鑑賞者の邪魔になる可能性があるため、きちんとまとめておくことが大切です。

帽子の扱い

美術館内では帽子を取ったほうがよいとされています。しかし禁止が明記されている美術館は多くありません。

しかし、大きなつばのある帽子は他の来館者の視界を遮る可能性がありますし、他の鑑賞者のじゃまになることがあります。小さめのベレー帽やニット帽などは、展示の邪魔にならない場合が多いため、美術館のルールに従って判断してください。

また、宗教や健康上の理由で被りものを取ることができない場合もあるため、マナー違反と決めつけるのは避けたいところです。

最後に

ここまで美術館のマナーをいくつか挙げてきました。

重要な点ですが、禁止事項は美術館によって異なる場合があります。ある美術館ではOKな行為が、他の美術館ではNGとなることもあります。各館の利用ガイドを確認のうえ、観覧してください。

作品の破壊、劣化を招く行為、著作権を侵害する行為などは「マナー違反」の範疇に収まらない「犯罪行為」となることもあります。

しかし、最低限のルールを守りさえすれば、美術館は恐れるような場所ではありません。緊張せずに楽しみましょう。



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