社会学者・雪村まゆみの初単著『アニメーションと国家 戦うキャラクター、動員されるアニメーター』が3月26日に刊行された。
同書は、アニメーションと戦争、国家との関係を新たな視点から捉え直した1冊。国家の文化政策、アニメーターという職業の形成、配給システムの変遷、戦時中に制作された『桃太郎 海の神兵』などの作品分析を通して、文化がどのように制度化されるのか、アニメーションが国民文化として根付いていく過程を浮き彫りにする。
また、戦時下のフランスにおけるアニメーションの状況にも焦点を当て、日本との共通点を明らかにするほか、高畑勲や宮﨑駿に影響を与えたフランスのポール・グリモーの『やぶにらみの暴君/王と鳥』を取り上げ、戦時中から続くアニメーションにおける空間表現の特質を考察する。
デザインは戸塚泰雄(nu)、装画は西島大介が担当。
【目次】
序章 アニメーションの制度化と戦争──空間の再編成の表現様式
第1章 戦前のアニメーションとその社会的位置──個人制作から集団制作へ
第2章 文化政策に動員されるアニメーション──他者への認識と文化の序列化
第3章 アニメーターの誕生──アニメーション産業の基盤の胚胎
第4章 境界と他者の二類型──『桃太郎 海の神兵』における空間の再編成
第5章 フランスにおけるアニメーションと国家──植民地および連合国へのまなざし
第6章 拡張する空間とアニメーション──国家、他者そして宇宙
第7章 聖地巡礼による空間価値の創出──背景美術と能動的オーディエンス
第8章 現代日本のアニメーション産業とアニメーター──戦争を経て現在に
終章 受け継がれる「漫画映画(アニメーション)の志」──グリモー、高畑勲から宮﨑駿へ
あとがき
索引
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