伝統的工芸品は素敵だけど、ちょっぴり使いにくい……。そんな正直な悩みを解決するデザイン酒器
現代では「和のもの」に触れる機会はめっきりと減りましたが、和服や伝統的な行事など、たまの機会に触れると「やっぱり、いいなあ」とほっとできるのも、和のものならではの持ち味だったりします。なかでも日本酒は、「お正月」「雅やかな結婚式」「祝いの席での鏡開き」など、ハレのシーンに繋がるおめでたいお酒、というイメージが強いもの。
そんなおめでたいムードを暮らしに取り入れてみたら、毎日がもっと楽しくなるのでは? おいしい料理や飲み物を入れるお気に入りの食器があるように、日本酒を呑んだときのハレ気分が味わえる新ブランド「朱器<SHUKI>」を、いま人気のクリエイター四人と漆の器「村上木彫堆朱」がコラボレートして作りました。
村上木彫堆朱とは、木地に彫刻し、漆を塗り重ねて制作する、新潟・村上市に江戸時代から伝わる漆器のこと。彫りや塗りも全て手作業で行い、実に26以上の工程を経て1つの器を制作(制作過程はこちら)。あえてツヤ消しで仕上げることで、使い込むほどにツヤが出て鮮やかさが増す「使ってこそ」の伝統的工芸品ですが、牡丹や唐草など、中国から影響を受けた伝統的な絵柄が多いこともあり、気軽に使うものとしては敷居が高いのも事実でした。
そんな背景を踏まえて、イラストやテキスタイルの作家がテーマごとに模様を考案し、腕利きの職人が再現することで、堆朱を日常使いしやすいものとして生まれ変わらせたのが「朱器<SHUKI>」というわけです。その制作行程から見えてきたのは、単なるリプロダクトではなく、使う人の暮らしの幸せを願う普遍的な眼差し。ここからは、手に取ると笑顔がほころぶような、愛らしいコラボレートをご紹介します。
シュールな柄選びが粋。「愛」をテーマにした塩川いづみ
塩川いづみの朱器<SHUKI>(CINRA.STOREで詳しく見る)
塩川いづみが作る朱器は「結婚は山あり谷あり」を表現した、夫婦ぐい呑。裸の胸とお尻を模した、ちょっぴりシュールな絵柄が粋です。アンニュイな雰囲気が漂う線描が強みの人気イラストレーターが描く線だからこそ、より雄弁にストーリーが広っていく彼女の持ち味が生かされた器になりました。
はじめはくすんだ表面が、徐々に鮮やかなツヤと朱色が出てくるのが村上木彫堆朱の特長の一つなので、使い込むうちにお尻や胸がテカテカしてくると、生き物みたいに見えてきそう。「育てがい」がありそうなこの酒器は、いつだって腹を割って話したい関係の二人にどうぞ。
構築的な線画がモダン。「祝う」をテーマにしたsneeuw
sneeuwの朱器<SHUKI>(CINRA.STOREで詳しく見る)※実物は、器のまわりを一周するデザイン
シンプルななかにユーモアを感じるデザインのファッションブランド・sneeuw。デザイナーの雪浦聖子が作り出したのは、村上の街や自然と、祝いの席のモチーフである水引を組み合わせた山並みのデザイン。
村上木彫堆朱のめでたい気分を引き連れて、テーブルの上をぱっと明るくしてくれそうな明るい器です。ぽってりとした形に直線がリズムよく施され、普段の食卓にのぼっても違和感なくはまりそうな雰囲気は、江戸時代から伝わる伝統ある漆器とは思えないほどモダンです。
お酒をそそぐと魔法がかかる。「新潟」をテーマにしたとんぼせんせい
とんぼせんせいの朱器<SHUKI>(CINRA.STOREで詳しく見る)
3本の線を引くと、どんな物にでもたちまち立ち現れるとんぼせんせいのマジカルな顔がお米に憑依して、漆器の内側に刻み込まれました。お酒がそそがれる部分に柄をデザインしたため、特別に器の内側に黒漆を溝に塗り込む技法で作った器は職人の力作。何年経ってもお米の絵はきれいなまま残るよう作られています。
平たくて大きな口の朱器にお酒をそそぐと、つるりとした水面に画が浮かび上がり、今度は日本酒にとんぼせんせいが憑依したような心持ちに……! お酒にも魔法がかかってしまうような、そんなキュートさのある朱器になりました。
そこにいるだけで愛らしい力士の存在感。「愛でる」をテーマにしたはしのちづこ
はしのちづこの朱器<SHUKI>(CINRA.STOREで左の商品を見る、右の商品を見る)
手描きのお相撲さんのイラストレーションが人気のはしのちづこ。ハレの雰囲気を引き継ぐ村上木彫堆朱に、そこにいるだけでめでたい雰囲気のふくふくしたお相撲さんとくれば、似合わないわけはありません。
さらに、人と器の縁をつなげるという意味の「円(縁)」のポーズを取った朱器は、手彫りの線もお相撲さんのおおらかさとマッチして、なんともかわいらしくてめでたい表情。しまい込まず、飾って楽しみ、飲んでまた楽しむ。まさに「愛でる」にうってつけの器です。
作り手の思いを想像しながら、酒器を使う楽しみ
個性豊かな朱器から伝わってくるのは、クリエイター四人も漆器の職人も「楽しんで作っている」ということ。「和」という言葉には、「なごやか」「調和」という意味もあります。村上木彫堆朱がハレの席向けのものだったからこそ、そのイメージに引き寄せられて、各々が思い思いの「ハレのシーン」や「和」について改めて考えた……そんなクリエイターの思考の跡と、村上木彫堆朱の職人がそれを面白がってプロダクトにしている姿が同時に浮かぶようでした。
使う人のことを思って作られた器からは、作り手が日常のどんなところに楽しみや幸せを見出しているのかを垣間みることができます。そんな作り手の思いに共感しながら使うのも、きっとこの「朱器<SHUKI>」の楽しい使い方。器を通して交わされるそういった作り手と使い手のコミュニケーションは、実は何百年経っても変わらずに人の心に響く、普遍的な幸せのかたちなのではないでしょうか。
- プロダクト情報
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- 酒器 / ぐい呑み「朱器」(塩川いづみ)
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価格:7,128円(税込)
- 酒器 / ぐい呑み「朱器」(sneeuw)
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価格:8,964円(税込)
- 酒器 / ぐい呑み「朱器」(とんぼせんせい)
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価格:7,452円(税込)
- 酒器 / ぐい呑み「朱器」(はしのちづこ)
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価格:6,480円(税込)
- 村上木彫堆朱 新ブランド「朱器」
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現代のクリエイターと村上木彫堆朱の職人のコラボレーションから生まれた、普段使いの漆器ブランド。気持ちを晴れやかに演出する“朱色”を活かしたデザインモチーフで、ひとつひとつ職人の手によって作られています。使い続けるほどに飴色に色づいていく朱器は、世界中に二つとない、あなただけの器となります。第一弾は「朱器の酒器」。酒杯を交わす度に色づく朱色と愉しい絵柄を愛でながら、今宵も一杯、ハレ気分。
- プロフィール
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- 塩川いづみ (しおかわ いづみ)
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イラストレーター。1980年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。広告、雑誌、商品などのイラストレーションを手がけるほか、展示発表も行う。
- とんぼせんせい
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「三本の線を引くだけでどこにでも現れる」をコンセプトに、人物、動物、風景、プロダクトなど、様々なイメージに憑依するイラストレーター。個展やグループ展の参加、企業・出版社へのイラスト提供から、ワークショップ講師、トークの司会など、多岐にわたる活動で活躍中。
- sneeuw (すにゅう)
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2009年スタートのユニセックスのアパレルブランド。コンセプトは「clean and humor」。シンプルな中に遊び心のある仕掛けをちりばめて日常を、少しだけ浮き上がらせる身の回りのものを作っていく。
- はしのちづこ
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イラストレーター。2012年美術大学を卒業。2013年のイベントをきっかけに手を繋いだお相撲さんのライブペイントやグッズを作り始める。
- フィードバック 3
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