のん、『ワーハピ』にて高橋幸宏らと共演
のんの音楽活動が本格的にスタートした。8月6日、葛西臨海公園・汐風の広場にて開催された『WORLD HAPPINESS 2017』にスペシャルゲストとして出演した彼女。まずはコトリンゴのステージに登場。映画『この世界の片隅に』(片渕須直監督、2016年公開)のオープニングテーマとなった“悲しくてやりきれない”を二人で歌った。コトリンゴの繊細な歌声と、のんの丁寧にメロディーを辿る歌声が、絶妙に溶け合っていた。
続いてはフェスのキュレーターをつとめた高橋幸宏のステージに登場。こちらはギターを抱えてサディスティック・ミカ・バンドの“タイムマシンにおねがい”を奔放に歌い上げ、大きな喝采を浴びていた。
『WORLD HAPPINESS 2017』撮影:TEAM LIGHTSOME
初作品では、仲井戸"CHABO"麗市と共にRCサクセションのカバーも
先日、自主レーベル「KAIWA(RE)CORD」を立ち上げることを発表したのん。会場では『KAIWA(RE)CORD OHIROME PACK』と銘打ったスペシャルパッケージも限定500部で販売された。こちらはカセットテープ「Special DJ show KAIWA RADIO」とリーフレットのセットで、カセットテープにはラジオ番組を模したのんのコミカルな一人語りと共に、“タイムマシンにおねがい”とRCサクセション“I LIKE YOU”の2曲のカバーを収録。みずみずしく可愛らしい歌声を聴かせてくれている。
『KAIWA(RE)CORD OHIROME PACK』。9月にEP版を発売することを発表した
彼女の音楽活動を支えるミュージシャン陣もとても豪華だ。“タイムマシンにおねがい”のレコーディングには、高橋幸宏、小原礼、佐橋佳幸、Dr.kyOnが参加している。この曲はオリジナルのサディスティック・ミカ・バンドが1975年に解散した後も、松任谷由実を歌い手に迎えた「サディスティック・ユーミン・バンド」(1985年)、木村カエラをフィーチャーした「サディスティック・ミカ・バンド・リヴィジテッド」(2006年)と、何度も歌い継がれてきている名曲だ。今回ののんのカバーも、まさにその系譜に連なった形と言えるだろう。
また、“I LIKE YOU”には仲井戸"CHABO"麗市がアコースティックギターで参加。高橋幸宏、小原礼、仲井戸"CHABO"麗市の三人は演奏だけでなくコメンタリーにも登場している。仲井戸"CHABO"麗市は、初対面だというのんとのトークで、矢野顕子が紹介役となったことを明かし、今回のカバーについても「清志郎にも伝えておくよ。きっと喜ぶと思う」と粋なコメントを寄せていた。
のんの活動をサポートする「CAMPFIRE MUSIC」とは?
そして、のんの音楽活動と「KAIWA(RE)CORD」をサポートしていくことを発表したのが、クラウドファンディングサービスのCAMPFIREが先日設立した「CAMPFIRE MUSIC」だ。
先日、CAMPFIREの音楽事業 / エンタメカルチャー担当執行役員の岡田一男に話を訊いたところによると、CAMPFIRE MUSICは「レーベルではない」という。先日CINRA.NETに掲載されたCAMPFIRE代表の家入一真と岡田一男へのインタビューでも「レコード会社でも事務所でもない、新たなあり方」と説明している(インタビュー記事:CAMPFIRE MUSICに訊く、歌手としての「のん」とどう関わる?)。既存の音楽業界の枠組みを侵食することなく、「アーティストやレーベルに寄り添う」ことを目指しているという。
左から:岡田一男、家入一真(インタビュー記事を読む) 撮影:永峰拓也
CAMPFIREはクラウドファンディングのプラットフォームだが、CAMPFIRE MUSICではクラウドファンディングはあくまで1つの手段と位置づけ、プロモーションなどを含めた音楽活動の総合的なサポート、またアーティストへの融資も視野に入れているという。当面は誰でも利用できるオープンなサービスとしてではなく、クローズドなプロジェクトとして進めていく予定だ。
クラウドファンディングが広まることで起きている、日本の音楽業界の変化
「音楽業界のエコシステムをアップデートしたい」。岡田はこう語っていた。実際、去年から今年にかけてCAMPFIREは多くのアーティストや音楽関連のプロジェクトに使われ、実績を重ねてきている。クラムボンが手掛けた「クラムボン×岩井俊二『日比谷野外音楽堂ライブ』映像化大作戦」は2700万円を超える資金を集めた。緒方恵美による、声優デビュー25周年を記念して国内と海外にCDをリリースするという企画も2500万円以上を集めた。10年目を迎えたアニメ×ダンスミュージックのDJイベント『Re:animation』がお台場で2日間の無料の野外DJフェスを開催するというプロジェクトも、1000万円以上を集めた。
THE NOVEMBERSやROTH BART BARONなどインディーレーベルを拠点に自らの手で活動の領域を開拓するバンドだけでなく、オウンドメディアを制作したぼくのりりっくのぼうよみ、入場無料ツアーを開催したKEMURIなど、メジャーレコード会社所属のミュージシャンも当たり前にクラウドファンディングを行うようになってきている。
クラムボン×岩井俊二「日比谷野外音楽堂ライブ」映像化大作戦(サイトを見る)
KEMURI “SKA BRAVO 無料ツアー” 開催プロジェクト(サイトを見る)
アイデアはある。きっと面白いことになるのもわかっている。しかし予算がない――。かつてはそういうプロジェクトは日の目を見ずに終わるのが当たり前だった。しかし、クラウドファンディングが普及したことで、その前提条件は変わりつつある。特に音楽の領域においては、CAMPFIREがその1つのブースターとして機能し始めている。
アーティストが成功させたプロジェクトの数々を見れば明らかなように、彼らには「やりたいこと」がある。それは単に曲を作ってレコーディングしたりライブをしたりという、既存の音楽業界のフォーマットでは収まりきらない活動であることも多い。そしてクラムボンが象徴的なように、アーティスト自身がプロジェクトの旗振り役となって、「やりたいこと」と「それに必要なお金」をきちんとファンに伝えているタイプのアーティストのほうが、より多くの「信用」を集めている。そして自身も『えんとつ町のプペル展』の開催プロジェクトのクラウドファンディングをCAMPFIREで行い4600万円以上を集めた西野亮廣が語るように、お金とは「信用の数値化」である。
こう考えていくと、特にミュージシャンやアーティストにとっては、クラウドファンディングによって新しい活動の領域が広がっていると言えるだろう。
のんとCAMPFIREが開拓していく新たな領域に期待
ちなみに、CAMPFIREは先日融資事業「CAMPFIREレンディング」を開始した。同サービスでクラウドファンディングを実施したプロジェクト実行者を対象に、支援者の集まり具合に応じてCAMPFIREからプロジェクト実行に必要な資金を貸し出すという。こちらも「やりたいこと」と「お金」の関係を変えていくような試みだろう。
昨年、「女優、創作あーちすと」として活動していくことを発表したのん。音楽活動は今回にとどまらず、秋からも随時リリースを予定しているという。そうそうたる面々がバックアップに集まったその体制も、1つの枠におさまらない「やりたいこと」を一杯に抱えた彼女の奔放な魅力に周囲が惹かれてやまないことが最大の理由だろう。
のんが先陣を切って開拓する、音楽の新たな領域。CAMPFIREが変えようとしている「やりたいこと」と「お金」の新たな関係。その双方に、期待してならない。
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国内No.1のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」(キャンプファイヤー)を2011年より運営。CAMPFIREはあらゆるファイナンスニーズに応えるべく、「資金調達の民主化」をミッションに、個人やクリエイター、企業、NPO、大学、地方行政など、様々な挑戦を後押ししています。 これまでに8,000件以上のプロジェクトを掲載し、プロジェクトに対する総支援者数は約28万人、流通金額は29億円に達しました。
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