本谷有希子やYogee角舘も参加する地上波テレビ『7RULES』とは?
『7RULES』という番組をご存知だろうか? テレビに出ることはなかなかないけれど、様々な分野で、そのキャリアを輝かせている1人の女性に毎回フォーカスし、彼女たちの生活にひそむ7つの「ルール」を紹介しているドキュメンタリー番組だ。
普段はテレビでの露出が少ない劇作家・小説家の本谷有希子がレギュラー出演し、Yogee New Wavesのボーカリスト・角舘健悟がナレーションを担当。主題歌に矢野顕子と忌野清志郎が歌う名曲“ひとつだけ”を起用している。
「関西テレビ放送 カンテレ」が制作し、フジテレビ系列で毎週火曜23時に放送されているこの番組には、本谷有希子のほかに、YOU、オードリーの若林正恭、俳優・青木崇高がレギュラー出演。『テラスハウス』や『ボクらの時代』を手掛ける松本彩夏もプロデューサーとして参加しており、現在までに30名近い女性と、彼女たちのルールに光を当ててきた。
「ルールが人生を映し出す」。そんなキャッチフレーズと共に、ダンサーやプロボクサー、歴史学者からロリータモデルまで、多様なキャリアを持つ女性たちに密着してきた『7RULES』。職種は違えど、2017年に第一線で活躍する女性たちは、一体どんなことを大切にしながら暮らしているのだろう? これまでに紹介された彼女たちのルールから、生活のヒントを探ってみようと思う。
足し算派から引き算派まで。身だしなみへのこだわり
これまでの放送回を思い返すと、番組に取り上げられた女性たちが皆、身だしなみへのこだわりを持っていることが窺える。例えば足元ひとつをとっても、臨床心理士の山名裕子は「ヒールは14センチ」というルールを持っているのに対し、シューズデザイナーの瀧見サキは「ヒール高は7.5センチ」とそれぞれのこだわりを持っている。さらに興味深いのは、多くの女性が仕事場での服装に関して意識的であるということだ。
フードデザイナー・細川芙美は「エプロンにイヤリングを合わせる」ことを自らのルールとし、何種類もの組み合わせを映像内で披露。「女の子に生まれたことを忘れないように」というささやかな心づかいだという。1992年生まれのプロサーファー・大村奈央も、大波に乗る時でさえアクセサリーは絶対に外さないと決めている。単にファッションのためだけではなく「試合中に見えたり、握ったりすると慌てていたりしても落ち着ける」お守りのような存在なのだそうだ。
何かを「足していく」タイプの彼女たちと対照的に、身だしなみの引き算にこだわっている女性も多い。宝石のような美しいパフェを作りだすパティシエールの岩柳麻子は、華やかなイメージと裏腹に、調理用白衣の下にジャージを着用していた。これは職場に到着後、すぐに仕事を始められるようにという心がけからだという。また、渡辺直美のスタイリストで、アイドルグループ・チェキッ娘の元メンバー、大瀧彩乃も「タレントより派手な格好はしないように」と心がけており、「パジャマみたいな恰好で(現場に)来てすみません」とカメラに漏らした。
単に見た目を着飾るだけでなく、自分の居場所で1番リラックスしていられる身だしなみを知ることが、彼女たちがしなやかに活動を続けられる秘訣なのかもしれない。
自分にとっての「美食」を知る
身だしなみと同じように、これまでに紹介された女性たちはしばしば、食へのこだわりも披露した。番組内では、「納豆は1日1個以上食べる」「制作するときは満腹にしない」「ラーメンの翌日は自炊」といった、食にまつわるルールが数多く登場している。
「本番前にお腹いっぱいにする」というルールを披露した上原ひろみ
だがこの番組は、単に「忙しいからこそ食を大事に」というメッセージを発信している訳ではない。『7RULES』を観て思うのは、自分の生活にとっての「美食」は何かということだ。
SF×不倫をテーマにした漫画『あげくの果てのカノン』を連載中の米代恭は、「考えるのが面倒くさい」とコンビニに毎日ファミチキと納豆巻きを買いに行く。『圏外編集者』など数多くの書籍の装丁を手掛けるブックデザイナー、佐藤亜沙美も「食べ物って基本毒盛られたらおしまいじゃないですか」と言い、信用している「小松さん」という女性のキッチンカ―から毎日のようにお弁当を買っていた。(番組内では佐藤の夫で芥川賞作家の滝口悠生にご飯を作ってもらう姿も捉えられている)。
例えば世界中を飛び回るジャズピアニスト・上原ひろみが「静岡産のお茶を常備する」理由と静岡に住む人がお茶を常備する理由はきっと同じものにはならない。まずは自分の生活を見つめ、自分にとっての「食」を知り、その中で「美しい」ありかたを探していくことが、現代の美食家になるヒントなのだ。
目には見えないものに寄り添う女性たち
ある日の放送で密着取材を受けた風鈴職人の篠原由香利は「FUCK」と書かれたTシャツを着ながら「THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが好きすぎてモッズスーツを作って、それで成人式に行きました」と話した。そんな彼女は、和やかな家族の食事のシーンで突然「今日は一粒万倍日だ」と口にした。一粒万倍日とは、その日にしたことが後に万倍になって返ってくるという、平安時代から存在する吉日だ。さらに番組内では、彼女が風鈴に絵付けするための筆をいつも大安から使い始めるというルールも披露された。
プロサーファー・大村奈央も、日本の部屋に貼ってあるカレンダーを、渡航の際は壁から外して持ち歩き、そこにときどきのモットーを書き込んでいるという。彼女たちにとって、暦とはどんな意味を持つのだろう?
思い返してみると、『7RULES』には「日曜日」に関するルールも多く登場した。「日曜日は公園で体を鍛える」「日曜日はパソコンを持たない」「日曜は早く閉店してビールを飲む」「毎週欠かさず『ちびまる子ちゃん』を観る」。ぼんやりしすぎたり、忙しすぎたりすると、曜日感覚がなくなったり、あっという間に一週間が過ぎていたりすることがある。しかし、活躍する女性たちに学ぶべきは、いつもそばにある、見えない流れにうまく寄り添い、心身をリフレッシュするタイミングを自ら作り出すことなのだろう。
気取らない姿や苦悩する顔も美しい、パネラー陣や番組の姿勢から学ぶこと
『7RULES』には、女性たちのルールのほかにも、学ぶべきポイントがある。
まずは、パネラー陣の見栄をはらない態度。ドキュメンタリー映像にまとめられた魅力的な女性たちの姿には、どうしても「すごいなあ」「素敵だなあ」というような気持ちを抱く瞬間がある。けれどVTR後にスタジオトークが始まると、そこでいつも「わたしの普段はどうだろう?」と考える時間が与えられるのだ。
例えば、フードデザイナー・細川芙美がお弁当を作る時、「色どりのためだけにミニトマトを使うことはしない」と言えば、スタジオで本谷有希子やYOUが「ミニトマト、使っちゃうわ」と見栄をはらずに打ち明けてくれる。そんな風に気取らず、自分の感覚や生活の様子を言葉に出来る出演者たちにも、私たちが学ぶべきところは多いのかもしれない。
2つめは、番組の制作姿勢。家具職人・武内舞子が密着された際、スタジオの青木崇高は「(彼女の)苦悩している顔が人として美しい」と男泣きをしていた。『7RULES』は、澄んだ川の水面に光をあてるように女性たちを映し出す。メイクが上手いとか、目鼻立ちがはっきりしているとかだけではなく、むしろ悩んでいる姿や、すっぴんの姿が美しい、と思えるような場面が数多く盛り込まれているのだ。
本谷有希子が女性の一生を「6日間」で描いた小説『自分を好きになる方法』の中で、主人公の女性は終盤、こんな一言を口にする。「知らない小道を発見して、幸せだと思えれば、他に何もいらないのかもしれないわね」。
『7RULES』は活躍する女性たちを通して、その輝きを押し付けるのでなく、わたしたちに「知らない小道」のヒントを提示してくれるような番組である。そんな映像を頼りに、自分なりの「ルール」を探してみることが、よりよい生活へのとびきりのヒントになるはずだ。
- 番組情報
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- 『7RULES』
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毎週火曜23:00~カンテレ・フジテレビ系で放送
出演:
青木崇高
本谷有希子
YOU
若林正恭
ほか
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