岡崎体育がファンクラブシステムの改修案を自身のブログで発表した。2月2日に発表した新システムの導入を巡ってインターネット上などで賛否の声が挙がっていた。
「ファンの熱量を可視化」するシステムに批判
2月2日に新たなファンサービス「bitfan」を利用した新システムを自身のファンクラブ「Wallets」に導入することを発表した岡崎体育。
「bitfan」ではファンクラブへの入会や継続、ファンクラブサイトへのログイン履歴、ECサイトでのグッズ購入、SNS上などでの応援・拡散といったファンの様々な行動履歴を収集し、独自のアルゴリズムによってファンに「トークン」を付与。その「トークン」にもとづいたランキングが公開され、ファンは順位に応じた特典を受けられるというサービスだ。
岡崎体育はこのサービスを日本で初導入。ファンを「ワニ革」「サメ革」「ヒツジ革」「ウシ革」「合皮」「塩ビ」という6段階に分け、ランキング最上位のファンには2ショットチェキや握手会のチャンスを提供するなどのサービスを用意するとしていた。
岡崎体育のファンクラブページより(サイトを見る)
これが「ファンに優劣をつけている」ように見えることや、小中学生などお金のないファンは特典を受けたくても受けられてないといった理由から議論に発展。その後、岡崎体育はブログを更新 し、批判の声を「ごもっともです。皆さんのおっしゃる通りです」と受け止めつつも、「正直に言うと、ファンの人たちから『賛同』と『お金』を得ないとミュージシャンやアイドルは生きていけません」と記した。
その上で、本当は全てのファンクラブ会員に「+αのサービス」を受けてもらいたいが1人でやるには限界があるとし、「だったらせめて、一生懸命働いて稼いだお金をたくさん僕に使ってくれる人に少しだけオマケしてあげたいというのが僕の考えであり、このシステムを採用した理由です」と同サービスを導入した意図を明かしていた。
「ファンに優劣をつけるな!」という声についてはこれまでのファンクラブ会員が損をすることはなく、「+αの会員」がオマケをもらえるだけであると強調。また「+α受けたいけどお金ない」というファンには謝罪をしつつ、「+α以外のファンクラブコンテンツで満足させられるように、頑張ります。もっと言えば、音楽だけで満足させられるように頑張ります」と綴っていた。
改修案では「ランク」の文言を排除
昨日2月14日に更新されたブログで岡崎体育は「日本で初めての試みだったので説明責任として至らぬ点が多々あり、手探りのまま運営していたことでファンの方に不安や不信感を抱かせてしまったことが一番の過ちでした」と改めて反省の弁を綴り、ファンクラブの改修策を公表。
改修の内容としては、ファン活動で取得したポイントで順位づけられるランクの廃止や、これまで不明瞭だった、何をすればポイントが貯まるのかというレギュレーションの公開、お金のかからないポイント貯蓄システムの設立などが挙げられている。
「ファンに優劣をつける」と批判を浴びたランキングシステムについては「ワニ革」「サメ革」「ヒツジ革」「ウシ革」「合皮」「塩ビ」のランクは廃止するが、「『ポイントを多く貯めてくれた人になにか「オマケ」をしたい。』という僕の気持ちはどうしても譲れませんでした」という思いから、「ワニ革Wallets会員」と「Wallets会員」の2種のみの区別が設けられる。
そもそも批判されるようなシステムだったのか?
岡崎体育はランキングシステムの廃止によって「ファンに優劣をつける」という批判に対応し、また経済的に余裕がないファンの思いに対しては非金銭的ポイント貯蓄システムの導入で応えた形だ。批判の声に正面から向き合い、具体的な案でファンを安心させようとする真摯な姿勢が見受けられるが、そもそも岡崎体育の導入したシステムは批判されるべきだったのだろうか?
岡崎体育自身もブログに綴っていた通り、アーティスト活動を続けていくにはファンからの精神的な支援だけでなく、金銭的な支援が不可欠だ。
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)は2月3日にTwitterで今回の騒動に触れながら(ファンクラブは)「バンドやミュージシャンの活動を円滑にするための『資金集め』っていう性格が強い。と俺は思ってる。加えて、ファンとのやりとりも密にできるし、関係性も深まるというか。みんなwinじゃん?みたいな」「好きなバンドのパトロンになれるのって、悪いことじゃないと思う」と思いを明かしていた。
会費制のファンクラブってのはある種の発明だよね。バンドやミュージシャンの活動を円滑にするための「資金集め」っていう性格が強い。と俺は思ってる。加えて、ファンとのやりとりも密にできるし、関係性も深まるというか。みんなwinじゃん?みたいな。アジカンにはないんだけど。
— Gotch (@gotch_akg) 2018年2月3日
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のTwitterよりファンクラブがバンドやミュージシャンの活動の質を高めることはあると思う。なんだかんだ、楽曲制作って本当にお金がかかるから。好きなバンドのパトロンになれるのって、悪いことじゃないと思う。だから、ファンクラブ批判みたいな気持ちはひとつもない。
— Gotch (@gotch_akg) 2018年2月3日
好きなアーティストをサポートしたいというのは当然のファン心理だ。後藤が言うようにファンクラブに入ることでファンはそのアーティストのパトロンになることができ、アーティスト側はその金銭的な支援を受けた上で、支援をしてくれた人たちだけに向けてチケットの優先獲得権やファンクラブイベントなどの特典を与える形で思いに応えることができる。アーティスト側からすれば、多くのサポートをしてくれたファンにはその分返したいという思いも至極自然のように思える。
支援と見返りの新たな可能性
ファンクラブにおいてファンとアーティストを繋ぐのは、会費だけでなく相互を思い合う信頼関係だろう。今回の岡崎体育の件は、ファンの貢献度が可視化される仕組みによって「ファンの優劣」という言葉が独り歩きし、その信頼関係が崩れたと感じたファンがいたから起きた騒動なのかもしれない。
CDが売れないと言われて久しい現在、アーティストは様々な方法で活動資金を得る方法を模索している。またSNSやクラウドファンディングなどの普及によって、ファンの支援とアーティストからの見返りのあり方についても新しい可能性が次々と登場している。岡崎体育の導入したシステムも、多様化するファンとアーティストの関係性に一石を投じたことには間違いない。
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