2000万点以上の収蔵品のほとんどが焼失か
9月2日にブラジル・リオデジャネイロにあるブラジル国立博物館で起きた大規模火災により、科学的、文化的に貴重な収蔵品の多くが焼失した。
開館から200年の歴史を誇る同館の建物は焼き尽くされ、2000万点以上の収蔵品のほとんどが焼失したと見られている。南米でも重要な文化機関の1つを襲った悲劇に際して、オンライン上にその記憶を留めようとする運動が、ウィキメディア財団が運営するデータベース「ウィキメディア・コモンズ」で始まった。
このキャンペーンでは、ブラジル国立博物館で撮影した収蔵品の写真の共有を一般に呼びかけている。収蔵品を写した写真を持っている人は、ウィキメディア・コモンズにアクセスし、その写真をアップロードすることで参加することができる。ウィキペディアのTwitterアカウントは9月5日の投稿でアップロードの手順が説明されている。
アメリカ・CNETによればウィキメディア財団のキャサリン・メアは「私たちはウェキペディアにおいて共有財産の現在進行形の記録をキュレーションすることに日々努めています」「この行動によって、世界中の人々が私たちのグローバルなコミュニティーに参加し、世界がこの悲劇から立ち直るのを助けてほしい」とのステートメントを発表している。
また9月7日には博物館側も支援の呼びかけを自身のSNSでスタートし、ウィキメディア財団のキャンペーンとは別に寄付金、作品の寄付、コレクションの写真などを募っている。
今年で開館200年。南米最古の頭蓋骨化石や最大級の隕石も収蔵
火災で失われた収蔵品の全容は現時点では明らかになっていないが、ブラジル国立博物館にはブラジルの自然科学、人類学にまつわる重要な遺産が収蔵されていた。
その多くが焼失したと見られる2000万点を超える収蔵品のなかには、エジプトの美術品やミイラ、恐竜の化石をはじめ、南米大陸で発掘された最古の人類化石とされる約1万2000年前の女性「ルチア」の頭蓋骨や、ブラジルで発見された最大の隕石「ベンデゴ」なども含まれる。
博物館はかつてポルトガルの王の宮殿だった歴史ある建物で、今年に開館200周年を迎えていた。
火災前のブラジル国立博物館の様子
「防ぐことのできた悲劇」として怒りのデモも勃発
火災は人々の心の中に悲しみだけでなく怒りも呼んでいる。出火の原因は現時点では明らかになっていないが、建物の老朽化に起因すると見られており、「防ぐことのできた悲劇」とする声もあるからだ。
博物館はかねてから資金不足に陥り、老朽化による補修工事の必要性を認識しながらも工事を進めることができずにいた。ブラジル政府は景気の後退や拡大する財政赤字に直面しており、博物館への予算も削減されていたという。ニューヨークタイムズは「この火災はいつか起こると知っていた」「博物館にいる全員が知っていた。私たちが一番恐れていたことだった」と話すキュレーターの声を伝えている。
火災が起きた翌日には博物館の前に多くのデモ隊が集まり、博物館の修復・改築に使うべき予算が政府によって流用されたと主張。数年にわたる政府の怠慢が今回の火災に繋がったと抗議した。
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-