マテル社の人形やユニクロ「UT」、音楽を超えて広がるBTSのイメージ
BTSは4月に発表した最新アルバム『MAP OF THE SOUL: PERSONA』で、3作連続の米ビルボード200チャート1位を獲得した。彼らが初めて全米1位に輝き、世界にその名を轟かせたのが2018年5月。そこから3作連続での1位獲得に要した期間は1年足らずだ。3度の全米1位を1年以内に達成したアーティストは、メンバーが固定されたグループとしてはThe Beatles以来だという。
彼らはワールドツアーの一環として、6月1日と2日にその偉大な先人を生んだイギリスの地にあるウェンブリースタジアムでワンマンライブを行ない、2日間で12万人を動員する快挙を成し遂げた。もはやBTSが「世界的ポップグループ」であることは動かしがたい数々の実績が証明している。
そんな飛ぶ鳥も落とす勢いの彼らから届けられた最新コンテンツがモバイルゲームだったのには少し意表を突かれた。しかしゲームにとどまらず、バービー人形で知られるアメリカのマテル社から発表されたメンバーの人形や、BTSのキャラクター「BT21」とユニクロ「UT」のコラボなど、BTSのイメージは音楽以外のメディアでも世界中に広がっている。
マテル社から発表されたBTS7人それぞれの人形と同社のバービー人形
育成ゲーム『BTS WORLD』を世界でリリース。マネージャーとなって7人をスターへと育てる
BTSのモバイルゲーム『BTS WORLD』は6月26日に世界176か国でリリースされた。
BTSを世界的なスターへと成長させるストーリーの育成ゲームで、プレイヤーはBTSのデビュー前に遡って彼らのマネージャーとなる。ゲーム内では約1万枚の写真と約100編の映像が使用され、メンバーと1対1でテキストメッセージやビデオ通話を交わしたり、実際に交流しているかのような体験ができる様々なコンテンツが用意されている。
BTSのメンバーカードを集めて育成することでより多くのストーリーを楽しむことができるほか、各メンバーが主人公として登場するアナザーストーリーも展開。アナザーストーリーは「もしも彼らがBTSになっていなかったら?」というファンの妄想を形にしたような企画で、メンバーがホテルマンや名探偵になった姿を披露している。
ゲームとK-POP、テクノロジーとエンタメ。韓国2大輸出コンテンツの出会い
アイドルの育成シミュレーションゲームといえば『アイドルマスター』シリーズや、『あんさんぶるスターズ!』といった2次元のゲームは日本でも大きな人気を誇る。AKB48やK-POPアイドルなど実在の人物を題材にした恋愛シミュレーションゲームも少なくない。
また「ミュージシャンを題材にしたゲーム」というところでは、海外ではWu-Tang ClanやDef Jamの格闘ゲームが発売されていたり、かつてはマイケル・ジャクソン自ら監修したゲームも発売されている。第三者になって好きなアーティストと交流するにしろ、メンバー自身のキャラクターを操るにしろ、ゲームの中での接触はアーティストをより身近に感じさせるだろう。
『BTS WORLD』は世界176か国で配信されているが、1つのK-POPアーティストを題材にした大規模なモバイルゲームは史上初だという。世界の金融ニュースを配信するブルームバーグは『BTS WORLD』を「韓国が得意とするテクノロジーとエンターテインメントを結び付け、経済成長を押し上げる試みの一環」と分析する。
同ゲームを提供する韓国のネットマーブル社は『リネージュ2 レボリューション』『マーベル・フューチャーファイト』といった作品も配信しており、Google PlayとApple iOSのアプリ配信社としては昨年世界第5位の収益を上げている。同社はBTSの所属事務所BIG HITエンターテインメントの2番目の大株主だ。
韓国のゲーム産業の輸出額は近年急増し、2017年に世界シェア4位になったとの調査もある。『BTS WORLD』はゲームとK-POPという韓国が誇る2大輸出の強力なタッグという見方もできる。
欧米のユーザーにどれだけ響くのかは未知数だが、世界的に見てもモバイルゲームの市場は大きく、昨年はモバイルアプリのダウンロードの約3分の1はゲームだったという。2019年には世界の2.4億人がゲームにお金を払うと予測されている。
『BTS WORLD』をダウンロードするのはゲームファンというよりBTSファンだろうから一概にゲーム市場の動向に照らし合わせることできないが、『BTS WORLD』は配信開始から約半日で、北米やヨーロッパ、アジアなど33か国のApp Storeにおいて無料アプリランキング1位を獲得し、その注目度の高さを見せつけた。
多彩アーティスト参加のサントラを発表。ジン、ジョングク、ジミンはCharli XCXとコラボ
『BTS WORLD』をダウンロードするのはBTSのファン「ARMY」を自負する人々だけかもしれない。だがこのゲームには熱狂的なファンでなくても注目すべき要素がある。それが本作のサウンドトラックだ。
BTSは『BTS WORLD』の配信に先立って、ゲームのために制作された3曲の新曲を発表した。メンバーを数人ごとに分けたユニットによる楽曲で、いずれも欧米のビッグアクトをゲストに迎えている。
1曲目はジン、ジョングク、ジミンのボーカル組とCharli XCXのコラボ曲“Dream Glow”。BTSは最新アルバムでもHalseyとのコラボで話題を呼んだが、“Dream Glow”でのCharli XCXはより深く楽曲制作にも関わっている。
制作の裏話をCharli XCX自身がTwitterで明かしている。この曲は彼女のデモ曲として“glow”という通称で4、5年前から存在していたという。BTSとCharli XCXは2017年に出会ってコラボのアイデアが生まれた。もとはクラブで出会った人と恋に落ちる内容だったが、BTSは夢を追うこと、エンパワーされることを歌った曲に変えてみせ、Charliをそれをとても気に入ったと綴っている。
“Dream Glow”のプロデュースはノルウェーのStargateが担当。BTSの曲としてはありそうでなかったシンプルかつキャッチーなダンストラックだ。歌詞では韓国語と英語が違和感なく融合している。
ザラ・ラーソン参加の“A Brand New Day”はMura Masaがプロデュース
ボーカリストのV、ラッパーのJ-HOPEのコラボ相手はスウェーデンのポップシンガーであるザラ・ラーソンだ。プロデュースは日本でも人気の高いイギリスのMura Masaが手掛けた。
Mura Masaらしい音数の少ない軽やかなビートに、朝鮮の伝統音楽で使用される楽器「テグム」のフレーズが特徴的な“A Brand New Day”。歌詞だけでなくサウンド面でも東洋と西洋が混ざり合った独特の1曲に仕上がっている。
ラッパー陣はJuice WRLDをフィーチャーしたアーバンなヒップホップ曲
コラボの最後を飾るラッパーのRM、SUGAが参加した楽曲は“All Night”。昨年大ヒットした“Lucid Dreams”で知られるJuice WRLDをフィーチャーした。
総合プロデュースはRMが引き受け、Joey Bada$$を擁するヒップホップクルー「Pro era」のプロデューサー・Powers Pleasantが参加している。エモラップ的なメランコリックさと、BTSのスイートさが合わさったアーバンな楽曲だ。BTSとしてのデビュー前はアンダーグラウンドシーンで活動するラッパーだったことで知られるRMとSUGAのスキルも堪能できる。
さらにゲーム内でBTSを世界的なグループに育て上げる「マネージャー」へのご褒美としてメンバー全員が参加した楽曲“Heartbeat”も公開。DJ Swivelがプロデュースした同曲では、メンバー全員が最高のアーティストとして成長していく過程を描いている。
日本では新シングル『Lights/Boy With Luv』をリリース。来日スタジアムライブも
このような多彩かつユニークな楽曲群を正式なアルバムではなく、ゲームのサウンドトラックとしてリリースするところにも、ポップシーンにおけるBTSの特殊な立ち位置が表れているのかもしれない。これらの楽曲は、最新アルバム『MAP OF THE SOUL: PERSONA』で幕を開けた彼らの新章の行方を占うものなのだろうか。
その答えを知るには7人の動向を見守るほかないが、その前に彼らは日本での10枚目となるニューシングル『Lights/Boy With Luv』を7月3日にリリースする。表題曲“Lights”は日本オリジナル曲となり、シングルCDでは異例の世界同時発売が予定されている。
さらに来日も控えており、7月6日、7日には大阪・ヤンマースタジアム長居、7月13日、14日には静岡・エコパスタジアムでライブを行なう。『ビルボード・ミュージック・アワード』やウェンブリースタジアムといった大舞台を経た彼らのパフォーマンスを日本で目撃できるまたとないチャンスだが、チケットは即完売。最終日となる7月14日の静岡エコパスタジアム公演はライブビューイングが行なわれる。
- フィードバック 1
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-