変態紳士クラブGeGが、FAKYのプロデュースを手掛けたわけ
今年3月に発表した“half-moon”と7月に発表された“half-moon feat. Novel Core”と合わせてのMV再生数が400万回を突破するなどして注目されている女性5人組、FAKYが新曲“ダーリン(Prod. GeG)”を8月26日に配信リリースした。
プロデュースを手掛けたのは、変態紳士クラブのメンバーとして活躍中GeG。変態紳士クラブは、若手筆頭のラッパーWILYWNKAと、新世代レゲエDJのVIGORMANをフロントマンにした大阪発の3人組。1997年の結成後、自主流通で発表した1st EP『ZIP ROCK STAR』が口コミで広まり、収録曲“好きにやる”はこれまでに総ストリーミング数が2000万回を超えるスマッシュヒットを記録している。(関連記事:変態紳士クラブは自らをJ-POPと謳う 根本に眠るジャンルへの敬意)
昨年は各自がソロ活動を展開して注目度を高めるなか、今年2月にメジャーデビュー。4月に配信したEP『HERO』はiTunesのJ-POPチャートで首位を獲得するなど、破竹の勢いでその名を全国に広めている。
変態紳士クラブという風変わりなユニット名とは裏腹に聴き心地のよいメロウな曲調とジャンルレスな作風で人気を集める彼らだが、下地にあるのはヒップホップやレゲエといったストリートカルチャー。そのユニットを支えるGeGと、ポップなアイドル的な魅力を併せ持つダンスボーカルグループFAKYとのコラボに疑問符を浮かべる方も多いかもしれない。
実は今回のコラボの前に、GeGと接触していたメンバーがいた。それは2020年冬クールに放送されたABEMAの人気番組『月とオオカミちゃんには騙されない』に出演して大ブレイクを果たしたHinaだ。もともと彼女は変態紳士クラブの音楽が好きで、緊急事態宣言下の外出自粛期間中にGeGの“I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin”を使った動画をTikTokに投稿。それを見たGeGと「いつか何かやりたいね」などとメッセージを交換していたのだという。
Hina:GeGさんがどういうふうにFAKYをプロデュースしてくれるのか、楽しみでした。GeGさんからは、女の子5人の、歌って踊る、ラップをしないガールズグループがどういうふうに見えるんだろう? って。想像できなかったぶん、ずっとワクワクしてました。
さらに、メンバーのLil' Fangは、FAKYとして活動する前は渋谷のクラブでソロシンガーとしてR&Bを歌っていた経験を持ち、キングギドラとTHA BLUE HERBを青春時代のヒーローとしているほどのラップ愛好者。もちろん変態紳士クラブもデビュー当初からチェックしていた。Lil' Fangは今回のコラボの始まりについて、こう語る。
Lil' Fang:確実にマッチすると思う人とか、やって大丈夫って思える人は、間を取ろうとして、結果、お互いのいいところをつぶし合う可能性もあるなと思っていて。その点、GeGさんはFAKYとのコラボが想像できないからこそ、面白い化学反応が起きるんじゃないかって思ったんです。怖さや不安もあるけど、GeGサウンドがかっこいいのはわかっていたし、それが好きだから、GeGさんの船に乗ろう! と大船に乗った気持ちで挑んだんです。
「ガールズパワー」全開のパワフルな5人から、新境地を開拓した今作
果たして、GeGがFAKYに用意したのは、持ち前のメロウネスをたっぷり含んだナンバー。GeGは生楽器による演奏を素材にしてトラックを組み上げる作り方を基軸にしているが、今回もその手法が採られていて、人肌の温もりをほんのりと感じさせるチルなサウンドになっている。
リリックはGeGが才能に惚れ込み、今年8月に自身とのダブルネームによる楽曲“Grow Up”をリリースした大阪出身のシンガーソングライター、Hiplinと、Shoki Kitauraと共作。勢いで別れてしまったけれど、思い出が忘れられない夏の終わりをテーマにしていて、未練と寂しさと諦めが揺れ動く胸の内が、実にエモーショナルに描写されている。
ここまでメロウな曲調、エモーショナルな歌詞はFAKYにとって初めてだが、それを表現するボーカルでも新境地を開拓。これまでは明るく元気な唱法や、ソウルフルに響かせる発声を基本にしていたが、今回は5人全員がウィスパーボイスに挑戦し、初のオートチューンも駆使して、まったく新しい顔をみせている。近年、チルアウト系のメロウな楽曲がTikTokやSNSを中心にティーンの間で人気を高めているが、その潮流を一早く掴み颯爽と「エモチル系ラブソング」を打ち出してきたFAKYの時代感覚、アンテナ感度には舌を巻く。
Taki:5人のFAKYになってからはガールズパワーをテーマにした曲を出してきて、“half-moon”はちょっとセンチメンタルな感じの曲だったけど、でも心が強い女性だと思うんです。この“ダーリン(Prod. GeG)”では初めて弱い部分を見せている。パワフルな5人だけど、たまにはこういう気持ちになるよっていうところを見せられたと思うから、いつもと違う感じで共感してもらえたら嬉しいです。
Mikako:私たちは毎回いろいろと新しいことに挑戦していて。これって自分たちのあの曲っぽいよね? っていうのがないんです。それは常に新しいことをしよう、常にグループ全体でステップアップしていこうっていう姿勢の表れだと思ってます。
「日本発の世界で活躍するガールズグループ」をめざして結成されたFAKY。豪華なクリエイター陣とのコラボの数々
2013年にデビューして以降、メンバーの脱退・卒業・加入を経て、2019年から現在の5人体制で3度目のスタートを切ったFAKY。HinaとTakiが新加入したこの3rdシーズンから彼女たちはギアを一段も二段も上げてめざましい進撃を続けている。とくに注目すべきは彼女たちの楽曲を手掛けるクリエイター陣の豪華さだ。
昨年リリースしたダンスシングル3部作の初陣となった“GIRLS GOTTA LIVE”のMVはビリー・アイリッシュやBLACKPINKなどのスチールを手掛けるアレクサンドラ・ギャビレットがディレクション。振付はカミラ・カベロの“Havana”をはじめ、リアーナやクリス・ブラウンなどのダンスを手掛けた世界的コレオグラファー、ゲイレン・フックスが担当している。
続く“ANTIDOTE”ではレゲエに挑戦し、リリックは日本のフィメールラッパー、Awichが書き下ろし。Awichはボーカルディレクションも務めた。そして3部作最後の“NEW AGE”はレーベルの先輩でもある倖田來未がキャリアで初めて他者に歌詞を提供。同曲の振付は、ジャスティン・ビーバーやティナーシェと共演経験を持つダンサー、ジョジョ・ゴメスによるものだ。
さらに彼女たちの人気を押し上げた“half-moon”は、安室奈美恵や三浦大知、AIなどを手掛けるUTAが作曲に参加。歌詞はHinaがコンセプトを出し、Lil' Fangが書き上げたもので、彼女たちがセルフプロデュース能力も持ち併せていることを示している。
もともと彼女たちは「日本発の世界で活躍するガールズグループ」をめざして結成。ゆえにメンバーも国際的で、第2期から加入したAkinaは生粋のカリフォルニアガール。そこに静岡生まれで幼少期はパリで暮らし、その後はフィリピンでタレントや女優として人気を博していたTakiが加入した。日本・ブラジル・スペイン系フィリピンのミックスであるTakiは、フランス語、英語、タガログ語、日本語のクアドリンガル。
FAKYはデビュー時から海外に向けた展開をしていたため、すでに海外ファンが多く、YouTubeには日本語以外のコメントもたくさん。昨年彼女たちはカナダ、ブラジル、スペインでライブを行ったが、MCを現地の言葉で話して、交流を深められることも強みだ。
5人を結ぶ五角形は、それぞれの個性・才能をそれぞれの方向に伸ばしながら、ぐんぐん広がり続けている
ストリートやアンダーグラウンドから生まれる音楽の方法論はポップスと呼ばれる音楽に吸収され、ポップミュージックの間口はどんどん広がり続けている。YouTubeなどの動画共有サイトやSNSを通じて今は誰でもグローバルに繋がれる時代になった。そんな時代にFAKYはいる。
華やかさと強さを武器にして、ポップネスを大事にしながら、キャッチーな要素を損なうことなく、ヒップホップやレゲエなど様々な要素を採り入れて、海外クリエイターが求めることにも十分に応えられる実力を持つ。これらを実現するFAKYの音楽は、今の世の中にフィットする当世のポップミュージック。その最新形が新曲“ダーリン(Prod. GeG)”だ。
Akina:今回の“ダーリン(Prod. GeG)”1曲で、今までのFAKYとは違う一歩を大きく踏み出せたと思っています。こういう方向はもっと広げていきたいし、こういう曲もできるじゃんって、この5人に自信を持てるようになったから、これからはもっともっといろんなジャンルにトライしたいです。
メンバーのHinaは、最近、モデル、タレント、ルミネエストのストアガールに就任するなど多方面で活躍中。Mikakoは持ち前のファッションセンスを活かしてアパレルとのコラボやモデル業に進出。TakiのTikTokは現在48万人近くのフォロワーを獲得しており、タレント性と多言語力で海外ファンにアピールしている。ダンスが武器のAkinaは今年7月リリースの“half-moon feat. Novel Core”のMVでコレオグラフを自ら担当。Lil' Fangは前述の作詞のほか、類い希なボーカル力とトーク力、リーダーシップでグループを牽引する大きな力となっている。
FAKYは、ルーツもスタイルも異なる5人が集まっているということで、自分たちのことをガールズグループではなく「ガールズユニオン」と定義づけている。そんな5人を結ぶ五角形は、それぞれの個性・才能をそれぞれの方向に伸ばしながら、ぐんぐん広がり続けている。そうして進化と成長を日々繰り返している今こそ、FAKYに注目すべき。やがて彼女たちは大輪の花を咲かせることになるはずだから。
FAKY“ダーリン(Prod. GeG)”を聴く(Apple Musicはこちら)
- リリース情報
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- FAKY
『ダーリン(Prod. GeG)』 -
2020年8月26日(水)配信
- FAKY
- プロフィール
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- FAKY (ふぇいきー)
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フェイクなフリしてとことんリアルに。ルーツもスタイルも異なる最強の5人が集結(=ユニオン)。2017年に発表した『Surrender』はSpotify Viral Top 50チャートにて日米Top 10入りを果たし、2019年7月には、ガールズパワーをテーマにしたダンスシングル3部作のリリースを発表。YouTubeのMVが、3作合計で700万回再生を突破。2020年2月には、ABEMA『月とオオカミちゃんには騙されない』に出演したHinaの心情を歌にした“half-moon”をリリース。七夕には、番組上でHinaと共演したラッパーNovel Coreをfeatに迎えた“half-moon feat. Novel Core”をリリース、8月26日には“ダーリン(Prod. GeG)”を配信リリースした。
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