andropが開け放つ新たな扉とは?

プロフィールが公開されていないながら、次々と大型フェスへの出演を果たし、ライブをすればチケットは即ソールドアウト。さらには、2月16日にニューアルバム『door』をリリースし、大きな注目を浴びているandrop。彼らは一体何者なのだろうか。なぜここまでの支持を集めているのか。その原因を探ってみると、閉塞感漂う今の時代と、それに対する彼らのリアルな心情が見えてきた。10年代の音楽シーンはどこへ向かうのか、andropはその鍵を握っているかもしれない。

andropのホームページやMyspaceを見ても、そこに書かれているのはライブやリリースの情報だけ。Myspaceで音を聴くことはできるが、プロフィール的なものは掲載されておらず、メンバーの名前すらわからない。彼らのことが知りたくて、一生懸命ネットで検索しても、インタビュー記事ひとつ出てこない。その正体は謎に包まれているにも関わらず、彼らは2009、2010年と2年続けて『SUMMER SONIC』に出演し、昨年10月に行われたリキッドルームでのワンマンライブを即ソールドアウトさせた。さらに年末には『COUNTDOWN JAPAN 10/11』にも出演し、今年の2月16日、いよいよニューアルバム『door』をリリースする。

なぜこんなにも情報の少ないバンドが、ここまでの盛り上がりを見せているのか。その理由を彼らの音楽から分析してみようと思うが、その前に最低限の情報だけ記しておくと、彼らは男性4人組のバンドである。それはYouTubeで公開されているライブ映像を見ればわかる。また、ここまでにリリースされたCDは、2009年12月に発売された『anew』と、昨年4月に発売された『note』の2枚。いずれもロングセラーを記録。そして前述のニューアルバム『door』が3枚目の作品となる。




彼らの音楽性を端的に説明するならば、00年代の日本語ギターロックの系譜を受け継いだバンドとも言える。ただし、J-POP感の強いキャッチーな楽曲もあれば、反対に難解で緻密なアプローチをした楽曲もあり、より的確に言うなれば、「ギターロックを大きな振れ幅で拡大解釈したバンド」といったところだろうか。こうした00年代から10年代への進化を現在進行形で感じさせるサウンドは、彼らの魅力のひとつとなっていることは間違いない。特に照明や映像が一体となって表現されるライブは、斬新なインパクトを与えてくれるだろう。しかしながら、10年代という部分をより強く意識させられるのが、彼らの歌う詞世界である。



今、andropは何を歌うのか

彼らが描く世界はすごく繊細で、ちょっとした衝撃を与えただけで崩れてしまいそうな不安定さがある。そしてどの楽曲にも共通しているのは、何度も何度も繰り返されたであろう自問自答の形跡と、ほぼすべての楽曲に登場する「君」という存在。その詞世界はほとんどが「僕」の心の動きを綴ったもので占められており、誰ともつかない「君」に問いかけているのだ。真っ暗闇のなかで必死に小さな光を探しているかのように。

しかし一向に閉塞感の収まらない今の時代、こうした彼らの詞世界こそがリアルな世相を反映しているのかもしれない。不況ばかりが叫ばれ、どんなに声をあげようとも届かない今を生きていれば、「がんばれ」なんて歌われても他人事にしか聞こえないという人も少なくないだろう。むしろ“Q.E.D.”で歌われてるように「どうせ僕ら人類なんて/もうどうしようもない。」という言葉のほうがよっぽど自然である。

ただし、彼らは今の時代をただ悲嘆しているわけではない。“MirrorDance”で「いつもいつも付いていた嘘や/流れた涙のその理由も/やっぱり僕は人が好きだ/君にただ見てもらいたかったんだ」と歌っていたり、“Youth”で「暗い 暗い部屋の中/一人 君は話した/『離れたい』/離れたくもないのに」と歌っているように、表向きでは弱音を吐きつつも、その本意は正反対のところにある。歌詞のそこかしこからは決して諦めない強さを感じられるし、随所で強烈な輝きを放つメロディーからは、希望を捨てきれない気持ちが伝わってくる。彼らの歌を聴いていると、前述の“Q.E.D.”で歌われている「どうせ僕ら人類なんて/もうどうしようもない。」という言葉も、「どうしようもないけど、どこかいいところがあるはず」と言ってるように聴こえるのだ。

彼らの音楽を聴いていると、どんな暗闇の底に陥ったとしても、どこからか小さな光が差し込んでくるような気がして、その光をつかみ取ろうという力が湧いてくる。未来の見えない現代社会だからこそ、こうした要素こそが共感を呼び、andropの音楽を求める若者が増え続けているのではないだろうか。より大きな舞台に立った彼らが、今後どのように進化し、どのような評価を得ていくのか、それは10年代の音楽シーンを占ううえで、大きな鍵を握っているのかもしれない。

information

door

androp
『door』

2011年2月16日発売
価格:2,300円(税込)
WARNER MUSIC JAPAN/unBORDE.respire WPCL-10892

1. MirrorDance
2. Alpha
3. Amanojaku
4. Puppet
5. Youth
6. Q.E.D.
7. Clover
8. March

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andropワンマンライブツアー 『angstrom 0.3 pm』

andropワンマンライブツアー
『angstrom 0.3 pm』

2011年5月3日(火・祝)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪府 心斎橋BIGCAT

2011年5月7日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:宮城県 仙台 darwin

2011年5月14日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡県 福岡 DRUM Be-1

2011年5月22日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 CLUB QUATTRO

2011年5月28日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 渋谷 SHIBUYA-AX

料金:3,500円(ドリンク別)
チケット一般発売日:2011年3月26日



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