続いて、常設展示へ移動する。常設展示には至る所に科学コミュニケーターやボランティアスタッフが控えており、気軽に質問することも可能だ。
今回は「空間と時間への挑戦」コーナーを中心に見学。ここでは、我々が見ている宇宙とは、一体いつのものなのかを紹介している。例えば、1100光年離れた馬頭星雲の光が地球に届くまでには1100年かかる。つまり、ここに展示されている馬頭星雲の写真は、紫式部が活躍していた頃のものということ。だから、もし馬頭星雲が消滅していたとしても、それを知るのは1100年後のことになる。ちなみに我々が見ている太陽の光は約8分前のもの。タロウ氏「遠くの天体を見るということは、過去を見ていることと同じということなのか。なんだかロマンがありますね」。
次に、世界で最も遠くの星を見ることができる「すばる望遠鏡」の展示を見学。すばる望遠鏡はハワイのマウナケア山山頂(標高4200m)にあり、現在も様々な天体を観測している。望遠鏡に使われる鏡は直径8.2mで、世界最大級の一枚鏡。ここには1/50サイズの全体模型、実際の鏡と同サイズのオブジェ、光路モデルなどが置いてある。
これまでにすばる望遠鏡が観測したのは、最遠で129億光年先の銀河。宇宙の誕生が137億年前とされているので、限りなく宇宙の果てに近いところまで捉えていることになる。タロウ氏「もう少しで宇宙誕生の瞬間も見られるってことじゃないですか!? それは僕ら人類の起源ということでもありますよね。なんだか知ってしまうのが怖いですけど、今後の科学の進化に期待せずにはいられないですね」。
続いて見学したのは、ニュートリノの検出で小柴昌俊先生がノーベル賞を受賞したことでも知られるようになった実験装置「スーパーカミオカンデ」。実物は岐阜県の神岡鉱山地下1000mに設置されている。ここには1/10モデルと、その一部を切り取った原寸大の光電子増倍管が並ぶ壁面模型が展示してあり、1/10モデルは中に入ることもできる。「またPVを撮影したい場所が増えてしまいましたね」とほくそ笑むタロウ氏。実際の観測ではこのなかに純水を貯め、水の分子とニュートリノがぶつかったときに出る青い光を観測する。
素粒子の一種であるニュートリノは宇宙から飛来し、いま現在も我々の体の中を突き抜けている。重さも大きさも限りなくゼロに近いため、本当に存在していることが信じられないくらいだが、観測によりその存在を確かめることができた。ニュートリノをはじめとする素粒子の研究によって、宇宙の成り立ちや物質の起源を解き明かすことが可能になるそうだ。
「ニュートリノの大きさからしたら、僕らの体はザルみたいなもんなんですね。かたや137億光年の宇宙、かたや人間の体を突き抜けるほど小さな素粒子、まったく両極端な2つが密接に関わりあっているなんて、これぞ宇宙の神秘ですね」とタロウ氏も感動を隠せない。
一行は日本の月・惑星探査計画の全体像が一望できるガラスウォールの前へ。このガラスウォールには、惑星や探査機の模型が展示され、過去、そして今後の探査計画がイラストで説明されている。
今年6月には、地球と火星の軌道を横切るように公転している小惑星「いとかわ」まで到達した小惑星探査機「はやぶさ」が地球へ帰還予定。これが成功すれば月以外の天体から帰還するという世界初の記録となる。このほかにも、昨年6月まで活躍した月周回衛星「かぐや」や、今年夏に打ち上げが予定されている金星探査機「あかつき」、2013年打ち上げ予定の水星探査機「ベピ・コロンボ」(ヨーロッパとの共同プロジェクト)などについての説明がある。
タロウ氏「ここ、“濃硫酸の雲”とか、“ベネトレータの投下”とか、歌詞に使えそうな言葉がゴロゴロありますね。あかつきは今年の夏に打ち上げかぁ。探査機応援ソング作ろうかな(笑)」
冨田さんによると、銀河系だけで2000億以上の星があると言われているそうだ。そのなかには地球によく似た星も見つかりつつあるらしく、現在は地球外生命、すなわち宇宙人の存在を肯定する科学者も増えているとのこと。ただし、地球から現実的に行ける距離の惑星は見つかっておらず、例えば10万光年離れた星であれば、宇宙人と会うまでに光の速さでも10万年かかるため、会うことは難しい。そうしたことから、よくSFの世界ではワープという言葉が使われる。例えば、ウルトラマンの故郷M78星雲は、地球から1600光年離れた位置にあるため、ワープを使わなければ、地球に訪れることは難しいのだそう。
また、「探査への挑戦」コーナーには、海洋の探査に関するものも多く展示されており、深海にしかいないユノハナガニも水槽で飼育されている。深海は太陽の光が届かないため、深海生物の存在は、光が届かない場所で生物が生きられることの証明でもある。そのため、宇宙のなかでも、火山活動と海の存在が確認できる天体には、生命体が存在している可能性が高いそうだ。深海に住んでいる太陽光に依存しない生物たちの姿は、実は地球外生命体に近いのではないかという説もある。
最後に、日本科学未来館のシンボルであるGeo-Cosmos(ジオ・コスモス)へ。Geo-Cosmosは6階までの吹き抜け空間に浮かぶ直径6.5mの球体で、表面には約100万個のLEDが貼り込まれ、毎朝更新されるその日の地球の映像や、地球温暖化シミュレーションなど、様々なコンテンツを映し出す(写真は木星を映している様子)。ここに映し出された映像は、離れたところからクルクルと回転させることができ、一般の見学者も操作可能。タロウ氏も喜々としてGeo-Cosmosを回転させる。「惑星をこの手でまわすなんて、まるで神様になった気分ですね。これ、ミラーボールにしてライブしたいなー」。実際、ここのシンボルゾーンではライブが行われることもあるそうだ。果たしてavengers in sci-fiのライブは実現するのか!?
今回の宇宙の旅はここで終了。では、最後にタロウ氏に総括を。
「プラネタリウムの3D映像とか、常設展示で見た最先端の科学もすごかったんですけど、今日のキーワードはやっぱりダークマターですね。ダークマターの存在を知って、いままで信じていたものを全部覆されたような気分になりました。だって、まだ解明されてないダークマターやダークエネルギーが宇宙の96%を占めているんですよ。宇宙はかなり解明されているものだと思っていたんですけど、この事実はかなり衝撃的でした。でも、安心したといえば安心しましたね。そんなに宇宙は簡単に解明できるものではないんだって。解明されていないからこそロマンがある。確実にこれからの曲作りの目線も変わりそうです。いつか歌詞の中にダークマターが登場したら、日本科学未来館に行った影響だと思ってください(笑)」
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-