さらに講演後には、自分の絵を見てほしいという生徒たち数人が、MUGENUPの皆さんから直接アドバイスをもらえる貴重な機会も設けられました。先ほど登場したアートディレクターの越村さんと脇さん、さらに一岡さんも加わっての臨時の講評会です!
最初の男子生徒は、この春からこつこつ描き上げてきたイラスト群を披露。ゲーム機のコントローラーなどをモチーフにした装甲をまとった少女、いわゆる「メカっ娘」系の力作です。脇さんは「想定している光源の位置をもっと思い切って左右に振ると、影の明暗でキャラがより活き活きしてくるかも」とアドバイス。また越村さんは「しっかりした世界観から入っていくのはすごくいい。メカの描き込みもきちんとしていますね。同じくらい、女の子の描き方にも明暗を加えたら全体の魅力がもう一段階上がりそう」とコメントしました。
続く女子生徒が見せてくれたのは、ライトノベルのキャラクターたちを自分流に解釈して描いたもの。知人から依頼を受けてつくってみたものの、出来上がりにはOKがもらえず、少し悩んでいるようです。すでにある物語のイメージを壊さずに、自分のイラストの良さも出したい。そんな彼女に越村さんは「シンプルな彩色が好きでも、一度思い切ってやり過ぎなくらいやってみると、得るものがあるはず」と助言します。
最後の男子生徒は、すでにコミケでも精力的に発表をしているというのがうなずける、物語性を持った絵柄が印象的です。最初に見せてくれた作品は、少女が佇む和風の幻想空間をミリペンで細部まで描き込んだ一枚。越村さんは「女の子がかわいい!」と好評価。実は「このときの自分を超えられない」と悩むこの生徒さんに「ヘンに変えたり、崩す必要はないと思う。でも、彩色したらどうなるかもぜひ見てみたいです」と励ましました。
これを聞いていた一岡さんからも「画面全体に描き込んだ世界観はすごくいい。でも力の入れどころ/抜きどころのメリハリを巧く付けることで、実はもっと伝わることもある」と、多くのイラストを見てきたからこその助言が。さらに同じ生徒さんの別作品に「このキャラいいね〜!」と反応した一岡さんが、その場で連絡先を交換する一幕も。
一岡:僕はとにかく、優れた才能が1人でも多く生まれればと思っているんです。イラストレーターもいろいろで、自分の表現を追求したい作家タイプ、クライアントの要望を引き出して応えるのが上手なタイプ、ディレクションもできるタイプなど様々です。自分がどこで勝負したいかが決まったら、そこへ邁進すればいい。MUGENUPと共に成長したイラストレーターが、「卒業」して1人でやっていくならぜひ頑張ってほしいし、一緒にディレクションする立場になってくれれば本当に嬉しいです。
デジタルテクノロジーは個々のイラストレーションを描く行為そのものにも大きな影響を与えましたが、いまそこに、ネットワークを駆使したクリエイターたちの新しい働き方も生まれていると言えそうです。そしてこの可能性は、もともとこうした分業・チーム制で発展してきたアニメーションや映像部門をはじめ、他の多くの表現分野にもさらなる可能性をもたらすのではないでしょうか。そんなことに思いが及んだ今回の取材でした。
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