もはや日常生活の一部となったデジタルメディア、ソーシャルメディア。それらがさらに進化を続けるなか、「デジタルコミュニケーションの未来型」とは? 本連載ではこのテーマに迫るべく、最前線で活躍するキーパーソンから、明日のデジタルコミュニケーションアーティストを目指す若手まで、さまざまな取材を通してその可能性を探ってきました。
そんななか、CINRA読者にとっても要注目のコラボレーションが始まりました。「ガーリーロックの新星」として評価も高く、最近ではファッションアイコンとして誌面に登場するなど表現力の幅広さを持つ女性ミュージシャン、bómi。彼女の最新ミュージックビデオを、デジタルハリウッドの「本科デジタルコミュニケーションアーティスト専攻」(DCA専攻)の学生たちが手がけるのです。しかも3チームが同時にチャレンジするという、学生たちの課題と呼ぶには難易度の高い……もとい贅沢すぎる、この企画。そこでこの連載では、彼らの奮闘の現場を2回にわけて密着レポートします!
bómi
1987年7月17日、アメリカ生まれ、大阪育ちのK系ガール。2011年、新鋭プロデューサーwtfと出会い、TOWER RECORDS限定ミニルバム『Gyao!Gyappy!!Gyapping!!!』、『OH MY POOKY!!!』をリリース。キッチュでポップでロックなサウンドに持ち前の歌唱力と、バンド形体でワーキャーで超ハッピーなライブパフォーマンスが話題に。また、そのキュートなビジュアルや独特のセンスでファッション界やサブカル界からも注目を集める。2012年6月にMajor First Mini Album『キーゼルバッファ』をリリース。
高速インターネットや動画ポータルサイトの発展は、ミュージックビデオ(MV)を取り巻く状況をも一変させました。いまやパソコンはもちろん、スマートフォンを使って、いつでもどこでもMVを楽しめる時代です。
キッチュ×ポップ×ロックなサウンドに乗せて、独自の世界観を歌いこなすbómiさんにとっても、MVは大切な表現手段。ミステリアスな洋館と美しい高原のコントラストも印象的な“iYo-Yo”から、映画『キック・アス』をも彷彿とさせる最新作“キューティクル・ガール”まで、毎回こだわりの世界観を見せてくれます。
bómi:MVは、監督はもちろん、カメラマン、メイクさん、衣装さんなど、関わる人みんなの作品。だけど「いい絵」をとるためには、やっぱり私自身がそこで輝けるかどうかも勝負ですよね。“キューティクル・ガール”でも相当ヘンなことをしてますけど(笑)、それも最終的におもしろいものができるのなら、っていう気持ちがあるからなんです。
普段からMV制作に高い意識で取り組んでいるbómiさんですが、今回は学生たちのチャレンジへの共感もあり、このコラボ案を快諾したそう。果たして彼らは互いにどんなやりとりを経て、どんな映像を創り出していくのでしょうか?
今回MV制作に挑戦するデジタルハリウッドのDCA専攻は、あらゆるメディアを自由に組み合わせて表現する「デジタルコミュニケーションアーティスト」を輩出すべく2011年に誕生。1年制と2年制があり、このMV制作に挑戦するのは2年制コースの第一期生です。すでに1年間、デジタルクリエイションのさまざまな知識や技術を身に付けてきた彼ら(連載第3回にも登場)。数人ずつで3チームにわかれ、bómiさんの新曲“PANIC☆アルバイター”の映像に挑戦します。
5月17日
まずは、とにかくbómiワールドを身体で感じようと、各チームが下北沢GARDENでのライブイベント『SOUNDBOND』へ出かけました。Acari、ecosystem、SCARLET、見田村千晴という個性派出演陣の中でも、bómiさんはフロアをひときわ盛り上げるステージを展開。学生たちも、そのキュートかつパワフルな音楽や、長い手足から繰り出される不思議なダンスを間近で体感。それぞれの生bómi体験を持ち帰りました。
5月22日
デジタルハリウッド東京本校で、学生たちによる制作会議。MV対象曲“PANIC☆アルバイター”は、バイト生活に明け暮れる女の子の等身大の悩みと、シュールな夢が交錯するbómiさんらしいアッパーチューンです。会議は、同曲のイメージと、ライブで得た本人の印象を出発点にしたアイデア出しからスタート。各チームには専任講師陣がつき、要所要所でアドバイスを伝えていました。いずれのチームも、さまざまなイメージをひとつの作品として束ねる「世界観」、またDCAならではの「独自性」をいかに創りだすかで、苦労している様子でした。
6月4日
3チームとも構想がまとまり、この日はbómiさんとレコード会社の担当者にプレゼンを実施。みなさん緊張気味ながら、なかなか堂々とした発表ぶりです。各々のコンセプトを伝えるべく、手描き絵コンテやビデオコンテが次々と披露されます。bómiさんスタッフ側からも「ラフ段階なのに、完成度がスゴい」と声が上がるシーンも。いっぽう、ビデオコンテの編集がギリギリになり緊迫したり、想定外の質問にうまく答えられず戸惑う一幕もありました。しかし、そのすべてが制作の生の経験なのです。
bómiさんたちからも各シーンについて「マイクの代わりに傘を持つなら、もっとヘンなものを持つのもおもしろくない?」などアイデアが飛び出し、プレゼンの場に活気が溢れます。各チームともこの方向性でOKとなり、話題はそのまま今後の進行日程に。撮影はbómiさんのスケジュールを丸1日空けてもらい、3チーム合同で順番に行うことも決定。制作は本格化していきます!
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