激情バンドサウンドと叙情的日本語世界。宮崎在住3ピースバンドの新たな快進撃。
椎名林檎や山口百恵のカバーなどで絶えず話題を振りまいてきた、宮崎在住3ピースバンドGENERAL HEAD MOUNTAIN。メジャーデビューとなるシングル『羽』がいよいよリリースされる。メジャー1作目とはいえインディーズ盤の再録などはなく、収録の4曲全て新曲と意欲作。タイトル曲の躍動感ある“羽”、ポップさと後半のストリングスアレンジが印象に残る“傘”、遠距離恋愛をシンプルに描いたミドルナンバーの“恋”、激情的なアップテンポ曲の“糸”。シングルという限りある表現枠において、最大限に魅力や可能性が込められた1枚に仕上がっている。
彼らの曲は奥深く味わい深い、深度のある曲だ。聴き終わったあとには言葉が像を結んで脳裏をかすめ、かき鳴らされるギターの間で親しみやすさを残すメロディラインが耳にフィードバックしてくる。結ばれた像からはドラマが始まり、するすると広がっていく。“恋”で描かれる彼と彼女の出会いと別れについて。電話のその先に繋がる未来について。立ち上がっていくストーリーの中に、いつしか自分自身と重なる姿が現れる。気づけば“羽”で人生の岐路に立ち、“傘”で彷徨し答えに辿り着く。“糸”で自省的な気持ちに駆られる。そんな自分を投影できる普遍性があるのだ。それらストーリーは激情的なバンドサウンドの中で繰り広げられ、そのギリギリに感じられるバランスはスリリングですらある。作詞はボーカル/ベースとバンドリーダーを務める松尾。美しい日本語を紡ぐ彼は一昨年『窓辺より』という詩集も発行しており、その文学的才能と世界観を歌詞に限ることなく開花させている。また、ジャケットを飾るロゴデザインは画家/デザイナー/写真家と様々なジャンルにて第一線クリエイターとして活躍する筒井はじめ氏によるもの。以前インディーズ時代のアルバムでは『strawberry shortcakes』で知られる漫画家/魚喃キリコ氏にオファーしており、引き続き今作でもジャケットワークへのこだわりが現れている。
彼らのインディーズデビュー当時の印象としては、本当に尖っていて、触れてくれるなとさえ感じられるような、鋭利なイメージが強かった。しかし、今シングルを聴いてみて、人間味が増したというか、良い意味でとっつきにくさは薄れているように感じた。着実な活動を経てメンバー個々豊かな表現力を手に入れたことにも起因するだろうが、それだけではない内面の成長も裏にはあるように思う。当初から持ち合わせている他者の寄せつけない孤高な姿に、だからこそ纏えるオーラが求心力として加わっている。エモ・パンクと表現される彼らのライブは感情が交錯するステージだ。曲全てが生々しく体現され、血液をたぎらせ挑み掛からんとする姿勢とパフォーマンス。それは身を削っているようでもあり緊張感を伴った行為にも映る。今作リリース後は『GENERAL HEAD MOUNTAIN TOUR 2009「晩秋編」』と題されたツアーに出る彼ら。是非ともライブに足を運びつつ、次にリリースされるであろうアルバムにも期待したい。
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