「文化庁メディア芸術祭浜松展」フォトレポート
会場では、「音を奏でる」「音を読む」「音を観る」の3つのゾーンに、さまざまなジャンルの約70作品が展示された。このフォトレポートでは、このうち来場者が作品を用いて遊ぶことができる「音を奏でる」のコーナーを中心に、展示の模様をフォトレポートにてお伝えしてみたい。
静岡文化芸術大学の入り口外に設置された、「文化庁メディア芸術祭 浜松展」の掲示。
会場に入り、早速「音を奏でる」のコーナーへ。いずれも訪れるプレーヤーを楽しませてくれる、インタラクティブな作品が揃う。
『fragments 2/4』(渡邊淳)は、ディスプレイのカラーバーをクリックすると同じ色の輪が登場して漂いだし、ぶつかると音を出すというもの。色合いがとてもかわいらしく、見ていてほっとする作品だ。
続いて、それぞれ手持ちのパソコンを接続し、画面の音叉をクリックすることで他のプレイヤーと共に演奏を楽しめる『Net Rezonator』(伊藤幸治、高木和夫、寺岡宏彰、柄沢祐輔)。美しい音色が響き合うさまを楽しむことができる。
Net Rezonator
伊藤幸治/高木和夫/寺岡宏彰/柄沢祐輔
©1998 Net Rezonator Project
こちらは、パソコンでDJ気分を楽しめる『Technics 1210 simulator』(iggy)。まるでレコードショップにいるかのように、リストから気に入ったレコードを探し出し、プレーヤーにのせて針を落とす。このお手軽なゲームをきっかけに、DJの面白さに目覚めるかも。
Technics 1210 simulator
Iggy
©Neal Davis 2003
そしてゲームセンターでもおなじみの、曲のリズムに合わせて太鼓を叩き高得点を目指す『太鼓の達人 タタコンでドドンがドン』(太鼓の達人プロジェクト 大石益也)。慣れるまでは難しいが、友達と一緒にカラオケ気分で遊ぶうちに、自然と上達できるゲームだ。
太鼓の達人 タタコンでドドンがドン
太鼓の達人プロジェクト 大石 益也
©2000 2001 2002 NAMCO LIMITED., ALL RIGHTS RESERVED
続いて部屋の奥へと進むと、そこには『TENORI-ON』(岩井俊雄)を5台集めた空間が。人気の作品だけに、どの台も混雑している。
空きが出たブースにすかさず接近。係の方が遊び方を丁寧に説明してくださった。『TENORI-ON』はタテ16個、ヨコ16個の発光するボタンを使い作曲ができる、という作品。音の出方や発光の仕方の異なる演奏モードが6種類あるらしいが、その法則性をすぐに理解することは難しい。
『TENORI-ON』
岩井 俊雄
©岩井俊雄 / ヤマハ株式会社
ただ必ずしも、操作方法を覚えようと頑張る必要はない。モードを自由に切り替えながら様々にボタンを押していると、思いがけぬ音色が出来上がるのが楽しい。いつまでもいじっていたくなるインターフェースだ。
続いて、「音を奏でる」コーナーの別フロアに移動。入って右側には「音を読む」コーナーが設置されていた。
映画化もされたマンガ『プライド』(一条さゆり)、大人気マンガ『NANA』(矢沢あい)などが所狭しとならび、自由に閲覧できるようになっていた。
まずは話題の一作、『雨刀』(勝本雄一朗)から遊んでみる。パッと見ただけでは、内部が青く光っている単なるビニール傘でしかないが、振り下ろすと「ジャキーン!」という日本刀で斬っているかのような音が鳴る。大人も子どもも夢中になって振り回してしまう一作だ。
お次は、鉄琴をたたくと、上から文字が落ちてくる作品、『言琴』(宮田静子/宮田洋 with Design Meeting(土枝文乃/菊池正助))。単語が成立すると、その意味に応じた形で落下していくという秀逸な仕組みだ。例えば「たらたら」という単語ができあがった場合、まさに「たらたらと」その文字が落ちていくさまは、見ていてとても面白い。
こちら、一見なんの変哲もない水道。でも、蛇口をひねると…。
「はぁ〜〜〜」と胸の奥底から吐き出したような大きなため息が漏れてきた。『ためいきまじり』(坂本のどか)は、蛇口の栓をゆるませることで、気持ちもふっとゆるめてほしいというメッセージがこめられた、自然なユーモア感覚のある作品だ。
こちらは、片手で円盤状の作品を持ち、片手で隣の参加者と手をつなぐと微細な電流が走り、ドラムのような音を鳴らすことができる『Freqtric Project』(馬場哲晃)。手をつなぐと、恥ずかしがりながらも自然と笑顔になる参加者たち。お客さん同士が仲良くなれる、楽しいアイテムだ。
6つの穴にブロックを差し込み、五十音の点字の位置になると、その文字の音がスピーカーから発される作品、『音点字』(福森みか/ development team)。ブロックを差し替えながら「ア、イ、ウ、エ、オ」と順番に音を出していくのが楽しい。
以上、「音を奏でる」コーナーで展示されていた作品の一部をご紹介してきた。友達どうしでも家族連れでも楽しめる、良質なコンテンツが揃っていた今回の浜松展。今年度の文化庁メディア芸術祭の入選作には、どのような作品が登場してくるのか、期待して待ちたいところだ。
SONIC Floor
石橋 素 + 真鍋 大度
©DGN+Rhizomatiks
機材協賛:カラーキネティクス・ジャパン株式会社
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