第4回
浦上満いま、女性のあいだで高まっている春画の人気
その背景にある、21世紀の女性の心情
この連載は『21世紀の女子解放論』と題していますが、いまを生きる女性たちにとってのヒントが、春画にはあるように思います。
浦上:以前、森美術館で開催されていた『LOVE展』に春画を提供したことがあるのですが、同館館長の南條史生さんが「春画の人気が高まっているのは、現代が江戸時代の感覚に近づいているからかもしれない」とおっしゃっていました。最近は男性が女性化する一方で、女性は自分の気持ちを率直に出すようになりましたよね。それに、性の有り様が多面的になっているように感じます。だからこそ、男性よりも女性の方が春画に反応するのだと思います。
たしかに見せていただいた春画のなかにも、男と女の描写だけでなく、女性同士のカップリングの作品もあって驚きました。好きなジャンルを楽しむだけでなく、性の知らない部分に触れる扉が春画だったのかもしれませんね。
浦上:現代は性に関するものが「いかがわしい」と見なされがちですが、性というものがなければ人間の存在はありません。春画の中の、ある種の健全さをいかに見出すかが重要で、むしろ「見てはいけない!」と目くじらを立てる方がよほど不健全さを生んでいます。春画の中には、若衆と呼ばれる若い男性がよく登場しますが、彼らはある種のファッションリーダーでもありました。若い女の子にも、おばさんたちにも人気がある一方、男の人にも人気があったんです。つまり、芸を売り、色を売る、かっこいい存在だった。男女両方にとって、性を求めることに否定的な見方はなかったんですね。
実際、春画にまつわる会話は暗くなりようがないですね。人を明るくさせる力が春画にはあるし、春画の楽しみ方としてそれは正しいと思いました。
浦上:春画に限らず、美術の力って本当にそれですよ。老若男女、身分も関係ない。同じものが好きだといきなり話が合うから、社交辞令的な天気の話とかもしなくてもいい。それに、いいものを見ると自分の感性も磨かれる。だから、良質な春画に触れてほしいです。いい作品が身近にあることで、人はもっと素直になれるんです。
商品情報
『春画トークショー』
春画の魅力を歴史的、学術的な点からは勿論、現代の感覚から捉えた視点や西洋美術の観点からなど、縦横無尽に展開します。2015年10月5日(月)
会場:東京都 代官山 蔦屋書店1号館2階 イベントスペース
出演:
浦上満(美術商)
湯山玲子(著述家)
藤原えりみ(美術ジャーナリスト)
※18歳以上対象
『春画展』
2015年9月19日(土)~12月23日(水・祝)
前期:9月19日(土)~11月1日(日)
後期:11月3日(火・祝)~12月23日(水・祝)
※会期中展示替えあり
会場:東京都 江戸川橋 永青文庫 特設会場 2階~4階
時間:9:30~20:00(日曜は18:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館)
料金:1,500円
※18歳未満入場禁止
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