第一章「解説より解決」をモットーにしています
僕は前から自分のことを「巨匠」って言ってたんですよ。冗談ですけどね(笑)。
―今回の巨匠はご自身で考案したボディワークによって半年で30kg痩せ、ぜんそく・急性膵炎・アトピー性皮膚炎ほかの病気を克服した早川義修先生です。現在は会員制サロン「早川プロポーションラボ」を開き、多くの女性をきれいになさっています。
早川:(本連載の企画書を見て)「巨匠ism」か……。いや、僕は前から自分のことを「巨匠」って言ってたんですよ。冗談ですけどね(笑)。僕は凡人ですよ。このラボを出れば、ただの飲んだくれのオッサンだし。だからこそ、自分を実験台にして凡人でも変われるセルフケアを開発したんです。
―私、先生の本を読んで年明けからボディワークをはじめたばかりなんです。毎日ではなくてサボりながらだから、トータルで20日くらい。先生は「体が変われば心も変わる」と書いているけれど、正直、「ホントかよ」と思ってたんですよ。でも今、幸せなんです。昨年よりもかなり。
早川:「幸福とは体で感じるものだ」というのは僕が言い出したことではなくて、19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスのアランという哲学者が『幸福論』という本の中ですでに書いてるんですよ。さらには「ナイフやフォークの使い方一つにも体があらわれる」、要するに使い方によって体も変わるという今風な言い方をしているんです。
―確かにな〜。育ちのいい人は、だいたいにおいて育ちのいい人風の体つきをしているし。その人の生き方って体にあらわれちゃうんですね。
早川:そうですよ。僕の仕事の範疇は、一言で言えば「美容」だけど、美容整形みたいな「造形」はしないのね。しようがないもん。
―というと、その人本来の望ましい姿に戻す?
早川:うん。というより、体のほぐし方を得心のいくまで教えている。みんな学びにきているんですよ。僕が「こうやって揉むんだよ」と実際にやってみせるのが一番早いでしょう?
―そのレッスンがいま、60分で×円でしたっけ?
早川:よく知ってるね(笑)。60分っていう枠組みはちょっと想像と違うと思うけどね。僕の頭の中には時計がないし、60分より短いということは、まずありえないと思う。
―先生が「これで今回はOK」って思うまでやる?
早川:そこまでやれるかですけどね。毎回ヘトヘトですよ、そういう意味では。
―でも、そのヘトヘト感が……。
早川:だんだん楽しくなってくる(笑)。最初の入会カウンセリングの時、「何でも質問していいよ」と言うと、「私が一日の最後に予約を入れると、先生が疲れていて不利ですか?」と聞かれるけど、そうとも言えないよね。やっているうちにだんだん冴えてくることもあるから。
「あまりにダメな自分に気がついてしまった」という苦しみ(笑)。
―効果に個人差はないんですか? たとえば「体重100kg以上だと効果が出にくい」というような。
早川:僕は感じていないですね。体重は関係ない。僕のボディワークなら、誰でも変われるんです。なぜかというと、理屈が簡単で、誰かに応用できないということがないから。世の中に出回っているトレーニングには、「誰に対してもOK」というものがあまりないんですよ。僕が見ても「これは限られた人にしかムリじゃん?」って思うものが多いんです。手順を踏んだり、全部通してやったりするのはムリだろ、って。理屈も僕には理解できないものが多い。
「筋力を鍛える」とか「深層筋を鍛える」とか医学的に説明したとしても、医学にだってまだわからないことが多いんだしね。だから僕は「解説より解決」をモットーにしているんです。あまりこういうキャッチフレーズをつくっちゃいけないんだけど。まあ、僕らの仕事ではこれがあたりまえなんですよ。能書きを解説したってお金にならない。実現させて納得してもらって、それでお代をいただいてナンボなので。
―そうですよね。結果が出ないと……。
早川:「結果」というのともまたニュアンスが違う。結果が出なくても解決する場合もあるんですよ。うちにはいろんな人が来るのね。最近はスケジュール的にムリになったけど、悩み相談だけして帰っていく人もけっこう多かったんですよ。そういう人にあたりまえのことを言ってあげると、感動しちゃうんだよね。
―悩んでいるときに話を聞いてもらえたら、落ち着きますよね。
早川:そうそう。人間は弱いから、自己肯定するにはやっぱりつっかえ棒がいるでしょう? 「自分を応援してくれる人がいる」と思うだけで、かなり違うんですよ。だから僕は占い師って必要だと思うんです。僕だって話を聞いてほしいときがあるしね(笑)。
―先生は強い方に見えますけどね。
早川:いや、強くないですよ。昔はすぐに仕事を辞めちゃうような人間だったし(笑)。長く続いた仕事もあるんですけどね。「自分は何に向いているんだろう」と思って悩んだ頃が一番苦しかったです。
―それは体重が90kgに達して「クマさん」と呼ばれていた暗黒時代と重なるんですか?
当時のお写真
早川:ああ、あのときは別の意味で苦しかったね。それを抜けても苦しいです。
―独自のボディワークを練り上げてゆく「産みの苦しみ」ですかね?
早川:キレイに言うとそうなんだけど、僕は聖人ではないので自分の苦しみですよ。「あまりにダメな自分に気がついてしまった」という苦しみ(笑)。
―ああ、そういうことってありますよね。私つい最近、自分の歯磨きの仕方が間違っていることに気づいたんですよ。歯ブラシの持ち方すら違っていた(笑)。「今まで何年生きてきたんだ」という話なんですけど、それで返って新鮮な気持ちになって、生きているって素晴らしいと思ったんです。
早川:そう思えるといいよね。
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