アウトラインデータをあらゆる様式で出力し、複数人で細かく検証します。
例えば、「平成」という熟語のバランスは難しい。「平」は上に重心があって、「成」は下に広がっているので、「平」の重心をぐっと下げてバランスを調整しなければいけません。そういうバランスの調整を全文字に関して行います。その究極が「かな」です。モダンなゴシック体の新ゴは、マス目の中にきっちり輪郭をとっていくので、作りやすい。ところが、明朝体のオールド書体になると、「う」は縦長だし「へ」は平たいから、それを文字組したときにバランスを整える必要があります。それを全部やるのですから、たまに気が遠くなりますよ(笑)。
デザイン修正後、デジタルデータの細かな修正を行い、デジタルマスターが完成します。
「ファミリー」と呼ばれる、同じデザインコンセプトで太さの違うフォントは、コンピュータで自動的に生成するのですが、そのまま使えるわけではありません。ここでも改めて生成された文字を1字ずつ、部首や点などパーツごとに調整しなければいけません。そのため、原図作成の段階の時に、この行程をあらかじめ考えて、太さが変わっても対応できるような汎用性のある定型文字をデザインすることが必要です。
フォント開発では、文字自体のデザイン以外に文字を組む為のツメ組み用の情報なども同時に設計します。これらの情報は一旦テストフォントに組込んで、文章を組んでの検証を行います。異体字のデザインに相違がないかなども検証します。
異体字とは?
文字の意味と読みが同じ漢字のうち、一般的に使われる標準的な字体に対し、字体の異なる文字のこと。
フォントが使用される媒体を想定して評価します。例えば、雑誌の本文用にレイアウトしたり、ポスター用であれば自分たちでポスターを作ってみます。ウェブデザイン用のものはモニター上で検証し、最終的な確認をします。
次に、モリサワ文研(株)にて制作されたデジタルマスターをもとに、(株)モリサワのデジタルタイプセンターにて製品化の作業に入ります。
デジタルマスター検査・変換
モリサワ文研株式会社にて制作されたデジタルマスターを検査し、問題がなければ、Open Type Fontや組込デバイス向けフォント製品KeiTypeなど、各製品ごとに合ったフォントフォーマットに変換します。
変換後の検査・修整
フォントフォーマットやサイズを変換することで文字形状に影響がでていないかを検査し、必要であれば微調整を行い形状を整えます。KeiTypeの場合は、液晶で利用される表示サイズごとにも細かな調整を加えます。可能な場合は、実際に搭載される機器での検証も行います。
フォントの機能を付加・動作確認
詰め情報や異体字切替え機能などの、フォントとしての機能を付加します。
そして各OSの各バージョン、各アプリケーションの各バージョンごとに、所期の動作であるか検証を重ねます。
モリサワ文研(株)と(株)モリサワでの緻密な調整と入念な検証作業を終えて、ようやく完成です。企画から完成までに約4、5年間を要します。こうして作られた文字が、雑誌やポスターや道路標識などに使用されていきます。世の中にはたくさんの文字があるので、まずは、楽しんでみてください。
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