古川日出男×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION) 対談(前編)
古川日出男の長編小説『南無ロックンロール二十一部経』がついに完成した。「ロックンロール」をキーワードに、20世紀を捉え直すという大胆な試みが行われている本作は、古川本人が「自分の代表作になるという覚悟を決めて作った」と語るように、まさにこれまでの集大成と呼ぶに相応しい、濃密で、奇想天外な傑作である。その古川が今回対談相手として熱望したのが、後藤正文。言わずと知れた、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンだ。二人はかねてよりお互いのファンであることを公言し、2009年には古川の対談集『フルカワヒデオスピークス!』で一度対談を行っているのだが、そのときと今とでは、また大きく状況は変わっている。2011年の震災を経て、福島の出身ということもあり、そこにコミットした作品も発表している現在の古川と、自ら編集長を務める『THE FUTURE TIMES』の発刊など、オピニオンリーダーとしての側面も強まりつつある現在の後藤が、今改めて対談をすることには、とても大きな意味がある。それは実際にインタビューを行う前から、自明の理だったと言えよう。
かくして、二人の対談は軽々と2時間に及び、こうして前後編の形でお届けすることとなった。信頼を寄せ合う先輩・後輩のようであり、同じ表現を追い求める仲間であり、ときにはライバルでもあるような二人の関係性は実に理想的で、対談の司会を務めた僕の役目は、背中をツンと押すことだけ。そうすれば、二人の会話はポジティブな慣性の法則に従って、ぐるぐると勢いよく転がり出す。そう、古川の文章のように、アジカンの音楽のように、この対談もまた「ロックンロール」そのものなのだ。
CINRA.STOREで『南無ロックンロール二十一部経』をご購入いただいた方を抽選で『古川日出男 × 後藤正文 トーク&ライブセッション』にご招待致します。
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:田中一人
- 古川日出男
- 1966年福島県生まれ。98年、日本人少年のアフリカ大陸での色彩探求譚『13』で作家デビューし、2001年発表の『アラビアの夜の種族』がジャンル越境型の奇書として読書界の話題を集める。06年、『LOVE』で三島由紀夫賞を受賞。その他の著書に軍用犬の視点から二十世紀の戦争史を描いた『ベルカ、吠えないのか?』、東北六県の700年間の歴史を徹底した文学的ハイブリディティで浮き彫りにする大著『聖家族』、東日本大震災直後の福島での旅が綴られる『馬たちよ、それでも光は無垢で』等がある。朗読活動も積極的に行ない、現在は管啓次郎、小島ケイタニーラブ、柴田元幸と朗読劇『銀河鉄道の夜』を制作し国内各地で上演する。
古川日出男|著者|河出書房新社
- 後藤正文
- ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターであり、楽曲全ての作詞とほとんどの作曲を手がける。これまでにKi/oon Music (SONY)から7枚のオリジナル・アルバムを発表。2010年にはレーベル「only in dreams」を発足させ、webサイトも同時に開設。また、新しい時代やこれからの社会など私たちの未来を考える新聞「THE FUTURE TIMES」を編集長として発行するなど、 音楽はもちろんブログやTwitterでの社会とコミットした言動でも注目される。Twitterフォロワー数は現在223,000人を超える。
ASIAN KUNG-FU GENERATION オフィシャルサイト
only in dreams
TheFutureTimes
震災後の表現者ということを考えたときに、後藤さんと話すのが必然だと思ったんです。(古川)
―お二人は以前から交流があったと思うのですが、古川さんが今このタイミングで後藤さんと話をしたいと考えたのは、どんなポイントが大きかったのでしょうか?
古川日出男
古川:今回の『南無ロックンロール二十一部経』(以下、『南無』)は「自分の代表作になる」という覚悟を決めて作ったんですけど、その際、「自分たちが生まれてきた世界」を分析するキーワードが「ロックンロール」だったと。じゃあ、「ロックンロール」のことを誰と話したいかと見まわしたときに、やはり後藤正文の名前が浮かんだんですね。それとやっぱり『南無』は震災によって変形していったところがあって、震災後の表現者ということを考えたときに、後藤さんが『THE FUTURE TIMES』をやっていたり、アジカンの『ランドマーク』というアルバムで、震災後の何かを引き受けた音と言葉を鳴らしていたのも理由です。だから、このタイミングで後藤さんと話すのが必然なのかなって思ったんです。
―『ランドマーク』という作品は明確に震災以降の状況を反映した作品だったと思いますが、古川さんはあの作品からどんなことを感じられましたか?
古川:普通の音楽ジャーナリズムで言うと、歌詞の話をすると思うんですけど、僕が何回か聴いて思ったのは、後藤さんがとにかくあらゆる歌い方を楽しんでいて、すっごい気持ちよさそうなんですよね。震災のあとに必要なのは、もしかしたら思いっきり気持ちいいことを見せることなんじゃないかと思っていたので、まさにそれを見せてもらった作品でした。
後藤:今言っていただいた通り、『ランドマーク』を作っているときから、今回のツアーは歌に専念しなければいけないなって直感があったんです。ボーカリストにならないと、ちゃんと想いを込めないと、歌が言霊にならない。原発や震災についての歌もあるので、自分の魂と言葉が一緒にならないと、空疎に響いてしまうし、それを郡山とか仙台では鳴らせないなって。
右:後藤正文
古川:ああ、わかります。それを現地で鳴らすっていうのはすごいことですよね。
後藤:東北は2公演だったんですけど、その仙台と郡山が今回のツアーで一番ライブがよかったんです。観客とのやり取りがとても上手くいって、それは1年半ぐらいで積み重ねてきた想いを、違う火として燃やしてるような感覚だったというか。ライブが終わったらまたみんなそれぞれの生活のもとへと散らばっていくわけですけど、その火をどこかに宿しながら何かをやれたらいいなって。
古川:変な話だけど、人力の火ですよね。原子の火じゃない。
後藤:はい。なので、歌に注目してもらえたっていうのは嬉しいです。何を歌うかって大事ですけど、どう歌うか、どう鳴らすかということもやっぱり重要です。震災の後にいろいろな人から「どうして今のロックバンドは(忌野)清志郎みたいにやらないんだ?」って言われたんですけど、今この時代に、70年代のプロテストソングは伝わらない、響かないっていう直感があって。だから、時代に合わせてもう一度方法を発明し直さないといけないというか、アップデートしなきゃいけないと思って。
古川:表現者が発明し直さなきゃいけない時期に入ったっていうのは、僕も感じますね。既視感のある歌とか小説だと、すでにある選択肢の中でしょうがないからどれか選んだだけっていうか、自分らが選ぶのとは違いますよね。
『古川日出男 × 後藤正文 トーク&ライブセッション』
CINRA.STOREで『南無ロックンロール二十一部経』をご購入いただいた方を抽選で『古川日出男 × 後藤正文 トーク&ライブセッション』にご招待致します。
2013年7月21日(日)17:30スタート予定
会場:東京都 青山 某所
定員:100名(当選者のみ入場可、座席有・自由席)
料金:入場無料(2ドリンク制)
※ご入場時にドリンク代(1,000円)をいただきます
『南無ロックンロール二十一部経』刊行記念『古川日出男×柴田元幸トークショー』
2013年5月16日(木)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 東京堂神田神保町店6階東京堂ホール
ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ランドマーク』通常盤(CD)
2012年9月12日発売
価格:3,059円(税込)
KSCL-2122
1. All right part2
2. N2
3. 1.2.3.4.5.6. Baby
4. AとZ
5. 大洋航路
6. バイシクルレース
7. それでは、また明日
8. 1980
9. マシンガンと形容詞
10. レールロード
11. 踵で愛を打ち鳴らせ
12. アネモネの咲く春に
V.A.
『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2013』(CD)
2013年6月5日発売
価格:2,520円(税込)
KSCL-2246
Gotch
『The Long Goodbye』(アナログ7inch)
2013年4月20日発売
価格:1,000円(税込)
ODEP-003
1. The Long Goodbye
2. The Long Goodbye (P's O-parts Remix)Remixed by PUNPEE
※ダウンロードコード付き
The Long Goodbye / 後藤正文 | only in dreams
『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN CIRCUIT 2013』
2013年6月14日(金)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:京都府 京都 KBS ホール
2013年6月15日(土)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:京都府 京都 KBS ホール
2013年6月17日(月)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:愛媛県 松山市総合コミュニティセンター
2013年6月19日(水)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:熊本県 熊本 DRUM Be-9 V1
2013年6月24日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:新潟県 新潟 LOTS
2013年6月26日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 Rensa
2013年6月28日(金)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:東京都 水道橋 TOKYO DOME CITY HALL
ASIAN KUNG-FU GENERATION デビュー10周年記念ライブ『ファン感謝祭』
2013年9月14日(土)OPEN 15:00 / START 17:00
会場:神奈川県 横浜スタジアム
ASIAN KUNG-FU GENERATION デビュー10周年記念ライブ『オールスター感謝祭』
2013年9月15日(日)OPEN 15:00 / START 17:00
会場:神奈川県 横浜スタジアム
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