―5年間、すごく大変でしたね。ナカノくん本人も「俺は人間として最低なんです」って言っていたように、彼の言動に振り回された5年間でもあったと思うんですが、実際どうだったんですか?
伊藤:「わ〜!!俺、最高!!!」ってなった後に、「ダメだ俺なんて…」ってなる。アップダウンが激しくて、同じことをずっと繰り返してるんですよ、ナカノさんは。最初は慰めもしたけど、それに甘えて何度も同じようなことして、その度にバンドが解散しそうになる。そりゃ腹が立ちますよね、正直。
恒松:俺やクラッチ(倉地)はナカノくんに対して冷たいけど、伊藤さんはちゃんと向き合うから、特にケンカが激しかったんですよ。
伊藤:すぐにケンカして言い合いになる。それで家に帰ったあと、ナカノさんからすっごい長いメールが来る。うわーって思いながらも何とかそれに返事を返すと、今度は3倍位のメールがどーーんと戻ってきて…。それでもう、私がうへぇーってなる(笑)。
―うわぁ、大変そうだ。
恒松:ナカノくんは、ちょっとしたことを拾い上げて、自分流に解釈した上で、ものすごい再構築をして膨らませるんですよ。その過程で、こちらが意図していないような、とてつもない何かが彼のなかに出来上がってる。
倉地:俺もナカノくんからバンドをクビにされた時に、呼び出されて何度も2人で話したんだけど、その時に言われたことはトラウマレベルで…。
伊藤:その時のこと、絶対に教えてくれないもんね。多分すごいこと言われたんだと思うけど…。
倉地:今まで誰にも言ったことない。とにかく、なんでそんな事に考えが及ぶんだろう? って内容だったんです。あれはホントに信じられなかった…。
―なるほど…。恒松くんもやっぱり腹を立ててた?
恒松:俺は、俺も完全にダメな時期だったから最初のころの方のことはほとんど覚えてないんですよ。
―恒松くんも病気だったんですよね。どんな感じだったんですか?
伊藤:始めて発症したのは満員電車のなかだったよね。ようちゃんの手だけ見えてたんだけど、その手がどんどん真っ白になっていって。びっくりして取りあえず途中下車したら、ずっと「ハァ、ハァ」言ってた。それがあってから薬を飲み始めるようになったんだけど、そしたら今度は、起きてることがままならなくなっちゃって…。ずっと部屋で落ちてる感じ。それでも、スタジオ練習があるときだけは何とか起こして連れてきて。
恒松:だからその時は俺も全く機能してなかった。実務的には。
―理由はなんだったんですか?
恒松:それが、未だに分からないんです。「不安」が襲ってきちゃう感じで、今でも飛行機とかは怖くて、薬を飲んでぶっ倒れているうちに着く感じ。「分からない」ってこと自体が不安要素だったから、それから少しずつ活動できるテリトリーを広げていって、「ここは大丈夫だ」っていう場所を増やしていって。
伊藤:心の病気なんだよね。ナカノさんもそうだし、クラッチもそう。その頃はナカノさん以外の3人で一緒に住んでたから、私もやられそうになった。
―そっか。じゃあ、ナカノくんの気持ちも理解できるところはあったの?
伊藤:う〜ん。苦しいのはわかるけど、肯定は絶対にしなかった。バンド4人で頑張るって決めた以上はやらなくちゃいけないでしょ? でも頑張るのって大変で、誰だって苦しいのは嫌だから、安全な場所に逃げ込んで安心しようとする。ナカノさんもそうで、進もうとすればいいのに、「ダメなんだ、ダメなんだ!」って部屋にこもっているのがきっと心地よくて。頑張らなくちゃいけなくなると、何とか後退する理由を探しているように見えちゃう。そっちのほうがラクだし、みんなが優しくしてくれるから。そういうのが、最初の頃はずっと続いてたかな。
―苦しいのも分かるから、余計苦しかったでしょうね。でも、全員の足並みが揃わないとバンドが前に進まないっていう。
伊藤:うん。だから「すぐそういう所ばっかりに逃げてんじゃない!」って言うんだけど、ナカノさんも「そんなんじゃねぇよっ!」って逃げを認めようとしないし。もう本当にそんなことの繰り返しで、ちょっとずつ進んでは解散の危機を迎え、立ち直ってはストップしてた。
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