―では最後に。Emeraldのメンバーのみんなには唐突かもしれませんが、通常のバンドインタビューではなく、あくまでも『音楽を、やめた人と続けた人』という連載記事の取材ということで、「音楽を続けていく」ということへのスタンスについて、うかがえればと思います。途中で話にもあがったけれど、CDをリリースして、評価がちゃんと集まってくれば、どこまでやるのか、やらないのか、選択をしていかなければならなくなると思います。自分はどうしていきたいと、思っていますか?
高木:僕自身は、バンドっていうより、ドラムを叩くことがすごく好きで、とにかくプレイヤーとして極めていきたいっていう意思はあります。もちろんEmeraldも、みんなが色んな音楽を教えてくれたり、ライブを観に誘ってくれたり、楽しいことを一緒に経験することができて、自分にとってプラスになることが多いんですよね。自分がバンドの方針に関わることっていうのはあまりないとは思いますけど、ずっと一緒にいい音楽が作れたらいいなっていう気持ちは、いつもありますね。
高木陽(Dr)
中村:僕も音楽が大好きで、一生やろうと思ってるんですけど、自分にとっての「すごい音楽」に、共通点があるってことに最近気がついたんです。それっていうのが、「バンドのメンバーの絆が深い」っていうことだったんですね。たとえばうちのメンバーが好きなロバート・グラスパー(1978年生まれのジャズピアニストで、『第55回グラミー賞』で最優秀R&Bアルバム賞を受賞している)のバンドなんて、学生ノリみたいな感じでバカなこととか言い合ってる。その延長線上に、バンドの音楽があって、単に仕事として音楽をやっている以上の空気感が、そこにはあって。
中村:そうですね。そういうことを追求できる場が今あるから、すごい楽しいんですけど、その追求を、死ぬまでやりたいですね。
藤井:僕はこの1年半くらいで、得るものも失うものもあって、自分の人生と音楽との関わりについて、すごく考えることが多かったです。だから心境の変化も大きいんですけど、最終的に思ったのは、とにかく後悔しない選択肢を選ぶこと。その時々で嘘つかないこと。自分がやりたいって思ったことに対しては、やっぱり自分が納得いくまでつきつめないといけなくて。それは音楽だけじゃなくて、全てにおいて言えることなんですけどね。でもとにかく音楽って、自分の生活や精神面とかが、全部が音に出ちゃうので。
磯野:自分は大学のときにすごい歴史のあるジャズ研にいたんですけど、50歳を超えるようなOBのプレイを聴いて、20歳、30歳とかじゃ音楽は到底極めることができないって、痛感させられたんです。だから僕は、長く続けられるやり方を考えたし、それが今のバンドになるんですね。だから消耗はしないように、誰かストレスが溜まってたら話し合って解決しようと思うんです。その上で僕は、ミュージシャンとして大きなステージに立ちたいし、その中で非日常体験をいかにできるのかっていうのが、目標ですね。
―長くやっていかないと生まれないアンサンブルって、絶対にありますよね。そしてこのバンドを作った磯野くんと中村くんが二人とも、同じところを見てるっていうのが素晴らしい。きっとこのバンドが長く続いていくイメージもちゃんと出来ているんでしょうね。では最後に、ナカノくん。
ナカノ:『音楽を、やめた人と続けた人』ですよね。正直、音楽をやめるっていう人生がまったく想像できなくて、本当に小さい頃から歌うのが好きで、今もただ歌いたいっていう衝動的人物だし、全ての目的も、自分の大好きな歌を歌うってことなんですね。
ナカノ:そうですよね。これまではずっと歌を盲目的に信じてきたし、その時々の自分を作品として焼きつけて残していきたいっていうことに、過剰なまでのこだわりがありました。でもそうやって自分のやりたいことをやってるだけじゃ、あんまり面白くないなと思ってる自分もいて。せっかくだったら、出来るだけ多くの人のiPodの中に入ってたいし、メンバーみんなと共有できる体験も、でかいほうが楽しいし。だから、そこで必要になってくるのは、人間的な成長なんですよ。
―音楽で成功するという目標があり、そのための課題が人間的成長だと。
ナカノ:はい、そう思っていますね。これから自分達のペースで、やり方で、たくさんの人たちに関わろうとしたら、もう絶対俺の人間的成長って必須じゃないですか。だから今までは自分の欲求に忠実に生きてたけど、そういう衝動を抑える必要もある。「抑えろ!」って、さっきみたいな話をしてくれるこのメンバーたちに言われたら、全然嫌じゃないんですよ。納得できる言葉と信頼がある。やれることとやれないことがあるかも知れないけど、対話をしながら、少しでも実現させていくことで、新しい自分に出会える。それを喜んでくれるお客さんを1人でも増やしたいです。
つい先日、8月28日のことだが、ナカノヨウスケは再び『exPoP!!!!!』の舞台に立った。PBLの破滅が始まったあの因縁の『exPoP!!!!!』から3年半。前話の記事を読んで、今のナカノを観に来てくれたお客さんも、少なからずいただろう。しかしナカノは、落ち着いて、いい意味で淡々と歌を歌い続けた。昔のナカノのように、感情が爆発して空回り、お客さんを置き去りするようなことはなく、Emeraldのグルーヴは、1曲毎にお客さんの気持ちをたぐり寄せ、最後には大きな歓声を集めていた。インタビューでメンバーが話してくれた事柄が、きちんと実を結んでいることがよくわかる、そういうライブだったと言っていいだろう。あの五人のアンサンブルが生み出すグルーヴは、もうすでに充分、人を引き込む力を持っているのだ。
しかし願わくば、この連載が、あなたや誰かの背中を押したり、寄り添えるものになっていたらと思っています。美しくて楽しいハッピーエンドではなく、苦しい現実を描くことが多い連載だったけれど、そんな現実にもぶつかっていきたいと思うほどに素敵なことが、この世界にはきちんと存在していることを、ナカノヨウスケは歌い、教えてくれたのだと、僕は思っています。
Emerald、ファーストアルバム発売!
Emerald『Nostalgical Parade』
2014年9月3日(水)発売
価格:1,804円(税込)
FLR-0004 / FunLandRyCreation
2. Nostalgical Parade
3. Brush
4. Summer Youth
5. フラニーの像意 -Album ver.-
6. Cryin' Climbing
7. ~Interlude~
8. TONIGHT
9. ふれたい光
10. ~Reprise~
Emerald Live情報
『インストアライブ』
2014年9月20日(土)START 20:30~
会場:東京都 TOWER RECORD 渋谷3Fイベントスペース
出演:Emerald
『FunLandRyCreation meets Littleize records-[Night Safari ~Acoustic~]- 』
2014年9月22日(月) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 笹塚 Littleize records
出演:
字引佑麿(fula)
中野陽介(Emerald)
tomodati(テングインベーダーズ)
TAKE-C(QUATTRO)
※こちらは中野陽介ソロでの出演となります。
『[kono yoru da]』
2014年9月29日(月) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
Emerald
SPANK PAGE
uri gagarn
『[Mix Tape vol.15]』
2014年10月8日(月)OPEN 18:00 / START 18:00
会場:東京都 新宿 MARZ
出演:
Emerald
TAMTAM
SANABAGUN
WANNA-GONNA(オープニングアクト)
DJ:SUGI-ZONE/佐藤栄太郎
『1st Full Album『Nostalgical Parade』Release Party』
2015年1月18日(日)
会場:新代田FEVER
出演:
Emerald
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