ユーザーを意識した作品に
魅力的なヒミツ道具を紹介してもらい楽しい気分になったものの、やはりモーショングラフィックスがどのようにして作られているのかは、素人には見えにくいもの。アニメーション制作など細金さんの仕事は多岐にわたっていますが、今回は基本的な作業工程の一端を分かりやすく紹介してもらいました。
ラフ書き
ほとんどの作業をPC上で行っている細金さん。しかし、クライアントとの擦り合わせのため、ラフを描いて企画を詰めていく作業はどうしても必要です。ただし、描き終えたラフをPCに取り込んでパス化するなどの作業は行わず、基本的には壁にラフ画を貼って、PC上で図形などのグラフィックを再現していきます。「絵が描けないから動画をやっている」と謙遜していた細金さんですが、その画力はなかなかのものでした。
After Effects上での作業1(描画)
IllustratorやPhotoshopでイラストなどを描くクリエイターもいますが、細金さんは図形や線を用いた作品が多いため、描画自体をAfter Effects上で行うことが可能だと言います。
図形や線の描画や色入れもAfter Effectsの画面を睨みながら、慣れた手つきでどんどん進めていく細金さん。これらの作業をすべてペンタブレットで行うことも特徴的で、外出先で作業する際にも持っていくとのこと。ペンタブレットでの作業が当たり前になっている細金さんにとって、絶対に欠かせないクリエイティブパートナーとなっていることが窺えます。
After Effects上での作業2(動画制作)
その後は、After Effectsのタイムラインやエフェクトを操作し、何度も調整を重ねながら絶妙な動きを表現していきます。さらに、1度色を入れた図形も、動作上ではイメージが変わってくることも多いため、動く図形をチェックしながら再度、色も微調整していきます。
『四畳半神話大系』では、絶妙な配色がほどこされた間取り図が、まるで生き物のように画面上を動きまわる映像が印象的。単純な図形で多彩な視覚的イメージを創り出すために、何度も調整を重ねて作品を作っていくのです。
別モニターでの確認
ヒミツ道具の章でも触れましたが、細金さんは作業効率をあげるために、サイズが大きく、高性能なモニターを使用しています。しかし、一流のクリエイターとして大切なのはエンドユーザーの環境に合わせて、作品を作ることでもあります。
細金:プロ仕様のモニターと、一般的に普及しているモニターとでは、まったく違った動きや色に見えてしまう場合が多々あります。ですから、最終的にはMacなど、誰でも使っているモニターで確認する必要があるんです。iPodで聴くことを想定して音楽を作るミュージシャンと同じ発想ですね。地味ですが欠かせない作業です。
ユーザーに届くことを想定した上で制作してこそ、プロの仕事。「セオリーを覆して視聴者を驚かせる」という信念を実現させるため、あえてディティールにこそこだわる細金さんの姿勢が印象的でした。今後細金さんの作品を観る際、新たな発見ができそうで楽しみですね。
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