『クリエイターのヒミツ基地』

『クリエイターのヒミツ基地』Volume31 佃弘樹(アーティスト、グラフィックデザイナー)

『クリエイターのヒミツ基地』Volume31 佃弘樹(アーティスト、グラフィックデザイナー)

幾重にもモチーフの断片が重ね合わされた、
コラージュから始まる制作工程

平面作品だけでなく、プラモデルやフィギュアのパーツをコラージュした立体作品など、幅広い作風で注目を集めている佃さん。先ほどから端々でご紹介しているように、現在の佃作品でメインとなるのは、PC上でのデジタルコラージュを、手描きのペインティング作品に落とし込む方法です。幾重にもモチーフの断片が重ね合わされたコラージュ的手法は、佃さんの作風の特徴であり大きな魅力。アナログとデジタルを横断しながら完成する個性的な作品。その工程をご紹介しましょう。

紙に素材を描く

作業工程1:紙に素材を描く

制作の第一段階は、紙と鉛筆、定規を使った素材作りです。ここで描く下描き素材も、「そういえば、何かを真横から見た構図が多いんですよ(笑)」という佃さん。子ども時代からの一貫したイマジネーションが活躍します。

佃:まずはイマジネーションの赴くままに、紙に鉛筆や定規を使って作品の大元となる下描きをします。構図も大まかには決めますが、あとでコラージュしたり、構図を変化させることを想定して、この段階ではあまり1枚の絵として完成させないように気をつけています。あくまで素材を作る感覚ですね。

コラージュ&構図

作業工程2:コラージュ&構図

ここはデジタル作業。先ほどの下描きや写真素材などをPCに取り込み、Photoshop上で構図を決めながら、イメージの赴くままにコラージュしていきます。

佃:使う写真は自分で撮影したものが多いですね。日頃、旅行に行った際などに、面白い建物やオブジェ、植物や風景を見付けては撮影しておくんです。でも、そのまま使うことはまずありません。写真の一部、たとえば写り込んだ植物の形状などをパーツとして意外なところに使ったりしていますね。構図のパース変化などもこの段階で行います。今やっている個展の作品は、台形の構図に収めた作品が多いんですが、台形は僕の中で神性が強い形で、外の世界への扉も想起させますね。

手描きの線を描き足す

作業工程3:手描きの線を描き足す

コラージュによって完成された構図の上に、さらに手描き風の線をデジタルペイントで加えます。以前はマウスを使って描いていたという、佃さんならではの独特の工程は液晶ペンタブレットとの相性も良く、マウスとの違いに驚いていました。

佃:コラージュだけでは、作品としてはまだもの足りなく未完成です。そこで全体のバランスを見ながら、より自分の表現したいものに近づけるよう、白や黒の線を描き足していきます。手描き風の線は、おそらく画面内の直線に対してバランスをとるため、生理的にどうしても入れたくなってしまうんですね。

デジタルで完成した下絵を元に、手描きして完成

作業工程4:デジタルで完成した下絵を元に、手描きして完成

最後は再び、アナログでの作業に戻ります。PCで描き終えた下絵を、画用紙にトレース。白と黒のドローイングインクなどの絵具を使って手描きし、完成を目指します。

佃:小さな作品の場合はこの自宅でも作業できますが、大きな作品は別のアトリエで描きます。Photoshop上でも手描き風の線を足しましたが、ここでさらに線を増やすことはよくあります。使う絵具はモノトーンばかりですが、ドローイングインク以外にも、オフホワイトやグレー、シルバーなどの色鉛筆もよく使いますね。筆は「ナムラの緑の柄のヤツ」と呼んでいるくらいで、型番や品番もあまり覚えていないんです(笑)。

最近制作した作品を例に、作業工程をご紹介くださった佃さん。くっきりしたモノトーンの硬派な作品を描かれる方ですが、お人柄はとてもお優しく、フレンドリーでナチュラル。デジタルとアナログの面白い部分を横断して、独自の作品を作り上げられる柔らかな感性が、お人柄からも滲み出ていらっしゃいました。個展『BLACK OUT THUNDER STORM』では、二次元と三次元を融合した「外の世界」への新しい扉を開いた佃さん。世界中から受けるアーティスティックな刺激が、次はどんな作品を生み出すのか、とても楽しみです!

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