そのほとんどがじつはアナログな手作業?
レーザーカッター彫刻のヒミツに迫る
ここからは、「Plastic Painting」シリーズの中でも、最近スタートした「Plastic Relief」作品を例に、山口さんの制作過程を追ってみましょう。「Plastic Relief」は、レーザーカッターでアクリル板に現代アート作品のモチーフを彫刻するという、斬新なデジタル手法がポイントです。
トレース
まず最初は「Plastic Relief」のモチーフにしたい現代アート作品を決め、液晶ペンタブレット上でトレースします。
山口:「Cintiq 24HD touch」上で、素材をトレースする際は、全て手作業。ツールはIllustratorを使っています。デジタル作業だと、アプリケーションの機能を使って、絵を一気に線画化させることもできますが、それだとどうしても細かいノイズが紛れ込んでしまうんです。線の1本1本まで美しくトレースするためには、絶対に手描きが確実です。
レーザーカッター用のデータに変換
次に、トレースした線画データをレーザーカッター彫刻用のデータに変換します。ここでのポイントは、白黒反転!
山口:僕の作品におけるレーザーカッター彫刻というのは、いわゆる木版画とは逆で、トレースした線の部分を浮き出させるように、線以外の部分を削り取るんです。PC画面上で見て黒い部分をレーザーカッターが彫るので、白黒を反転させたデータを作ります。その際、線の太さ、細さも仕上がりに大きく影響するので、慎重に確かめながらデータ化していきます。
レーザーカッターで彫刻
作業工程のメインパートは、レーザーカッターによる彫刻です。アクリル板を削ると、かなり多くの細かい粉が飛び散るため、レーザーカッター作業は専用のアトリエで行っているそうです。彫刻が出来上がるまで、50センチメートル四方のアクリル板で約2時間、これから山口さんが挑戦しようとしている2メートル四方の作品だと36時間ほど掛かる計算だそうです。
山口:レーザーカッター彫刻は、試行錯誤の連続でした。アクリル板には、片方の面を削るとそちらの面を内側にして丸まろうとする張力が働きますし、どの程度の深さまで削って線を残せば、光が当たったときに美しく見えるのか? そもそも、人間が削り残した線を線として認識できる最細は何ミリなのか? そんなことの一つひとつを何度もテストし、トライ&エラーを繰り返して決めていきました。けっこう時間がかかりましたね。
水洗い&仕上げ
工程のラストは仕上げです。レーザーカッターで削られたアクリルの粉末を水で綺麗に洗い流し、最後に板の裏側に2箇所、釘で支えられるように壁掛け用のくぼみを作って完成です。
山口:細い線が重なるような作品は、小さな隙間にプラスチック粉が入り込みやすいので、丁寧に水洗いします。壁書け用のくぼみは手でアクリル板を削って作るんですが、ちょっとした僕のこだわりがあります。僕にとってはこの「Plastic Relief」は、現代アートという記憶を刻みつけた「現代の石版」。だから、壁と作品の間には隙間を作りたくないんです。なので、くぼみの深さもけっこう試行錯誤しました。
レーザーカッターで彫った作品と聞くと、機械が全てをやってくれるという印象がありますが、実際に山口さんの作業工程を見ると、ほぼ全てが手作業です。一つひとつの工程に、山口さんならではのこだわりと創意工夫が込められた「Plastic Relief」。「現代アート」を刻み込んだこの「現代の石版」は、山口さんのクリエイティビティーを未来に伝えてくれるに違いありません。
- 「wacom」
- 『Plastic Painting』
ペンタブレットの製品情報や活用ガイド
山口真人
2014年7月18日(金)~7月30日(水)
会場:東京都 代官山 GALLERY SPEAK FOR
時間:11:00~19:00(最終日は18:00まで)
休廊日:木曜
料金:無料
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