台湾の音楽通の若者が今一番注目している女性シンガーといえば9m88(中国語の読みで“ジョウエムバーバー”)で間違いないだろう。2017年夏に行われた台湾ツアーは全会場ソールドアウト、そして2017年12月からアメリカ、台湾、日本で公演を行うことが決定。プロのシンガーでもありながら、NYの名門校『The School of Jazz & Contemporary Music』に通う学生の顔も持つ彼女の素顔に迫った。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
1.「9m88」というアーティスト名にしたワケ
ー アーティスト名の「9m88」は、どういう意味なんでしょうか?
9m88:インタビューを受ける時は、絶対にこの質問から始まるんです(笑)。この名前の由来は私のイングリッシュネームと、それに学校のマイナンバー88をあわせて「9m88」にしたんです。最初に名前だけを見ると、私が女性か男性かも分からないでしょ?
ー 確かに。初めて名前を聞いた時、ソウルシンガーっていうのは想像もできませんでした。
9m88:ははは、よく言われます。でも記号のような名前にすることで、逆に覚えてもらいやすくなるんじゃないかと思って。疑問や違和感を持つところから、私に興味を持ってほしかったの。
2.ファンションの道から音楽の道に転向したのはなぜ?
ー 9m88さんは、元々ファッションの勉強をされていたんですよね?
9m88:大学はファッション専攻だったんです。デザイン、パターン、縫製からファッションショーまであらゆる工程を学びました。大学卒業後はNYのファッション関連の会社でインターンとしてしばらく働いて。
ー 今はNYで音楽の大学に通われているんですよね。ファッションを学んだ後、音楽の道に方向を転換した理由は何だったんですか?
9m88:ファッションはもちろん今でも大好き。でもNYでインターンとして働いていた時に、これが自分が本当にやりたいことなのかな? って思ったんです。
ー というと?
9m88:NYに来て感じたのが、台湾ではファッションデザイナーとして生きていくことは難しいだろうということ。台湾では欧米や日本にくらべると、デザイン性の高い高価な服を買う人が少ないから、台湾に戻ってデザイナーになったとしても先が見えない。それにファッションは大好きだけど、自分のデザイナーとしての技術には満足していなくて。だから自分が自信を持って表現できる「歌」で勝負したいと考えるようになりました。
ー 歌には自信があったと。
9m88:本当は小さいときから歌が大好きで、歌手になることを夢見ていたんです。だけど、どうせ自分には無理だろうとどこか諦めていた自分もいた。でも、ファッションの道で挫折を感じたとき、私は一体何をしたいのかと、自分にひたすら問いただした結果、自分が自信を持って表現ができるのが「歌」だと思ったんです。
ー ポップスではなくジャズやソウルミュージックを選んだ理由は?
9m88:高校生の時にヒップホップダンスをやっていたんですね。ダンスの先生がレッスン中に使った曲を、自分で調べてCDを集めて。それこそ、アリシア・キーズやTLCとかをよく聞いていて。大学に入った頃に偶然ジャズを知って、衝撃を受けたんです。
3.9m88がスタイリングにこだわる理由
ー 初めてのステージはいつだったんですか?
9m88:今でも鮮明に覚えているんですが、2016年年末に『閱樂書店』。そこで初めて知らない人の前で自分の歌を歌いました。
ー ということは、初ステージから1年にも満たないスピードで、台湾中の公演をソールドアウトさせるまでの人気になったんですね。
9m88:それは、やはりKAO!INCのラッパーLeo王とのコラボソング“陪妳過假日 Weekends With You”がきっかけだったと思います。すでに有名だったラッパーの彼と、一緒に曲を作ったことで私のことをたくさんの人に知ってもらえた。
ー YouTubeも200万回近い再生数ですよね。Leo王とはどのように知り合ったんですか?
9m88:もともと友達だったの? とよく聞かれるんですが、私から一緒にやりたいとコンタクトをして。シンガーになる事を決めてからは、色んなところにデモ音源を送っていましたね。そんな中、Leo王は私の申し出を快諾してくれて、すぐに一緒に楽曲作りを始めたんです。
ー それ以外に、9m88がここまで人気になった理由はなんでしょうか?
9m88:1つのスタイルに固執しなかったことが、色んな人の支持を集められた要因だと思っていて。歌に関してはファンがどんなことを求めているのかを、きちんと分析して臨機応変に対応しています。あと、私のファッションが好きと言ってくれるファンも多い。自分は、ファッション専攻だったので、スタイリングにはかなりこだわっています。それこそとことん「自分が似合う」ものを追い求めて、今のビンテージスタイルに落ち着いたし。
4.9m88流「自由な生き方」とは?
ー 9m88さんがいつも大切にしている考えとかってありますか?
9m88:私はいつでも自由でありたいと思っていて。私にとって自由とは「自分のやりたいという気持ちを信じる」ということなんです。やると決めた自分を信じることができれば、目の前にパーっと自由な世界が広がっていくというか。
ー その選択によって未来が拓けていくってことですね。
9m88:もちろん、海外の有名シンガーのコンサートに行くと「わぁすごい、絶対にかなわない」と思って、落ち込むことはあります。でもずっと落ち込んでいるよりは、もっと自分が良くなっていくために、今できることは何かを考えて動くべきだと思うんです。
ー 悩むよりもまずは行動することだと。
9m88:まさにそうですね。私は大スターになりたいわけではなくて。ただ自分がいいと思う音楽を多くの人に届けたいだけ。それなら一般的な評価や世間の目を気にすることはないと思っています。台湾ではいい大学に行くべき、いい会社に入るべき、何歳までにこれをすべきというのがまだまだ多い。
ー 社会からの要請が多い。
9m88:そう。特に女性に対しては、見えない大きなプレッシャーがありますよね。私は大学を卒業した後に、また進路を変更し、違う分野の勉強をはじめた。そして今は世界中の人に自分の歌を届けるという挑戦をしています。だからこそ、私の生き方やパフォーマンスを見て、こんな自由な生き方もアリかもって思ってもらえたらいいですね。正解なんてないんだよって言いたい。
ー では、最後に9m88の今後の目標を聞いてもいいですか?
9m88:今一番大きな目標は、日本の『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演すること! そのためにも1月の日本初公演をまずは成功させたい。今までと違って、言語と文化が違う環境で、不安はもちろんあります。でも歌には言葉の壁を超える力があると思うから、私にしかできないパフォーマンスを見てほしいですね。
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9m88 九頭身日奈 Vinyl Release Winter Tour
1/9 (火) 青山月見ル君想フ
出演: 9m88(band set)
and guest
DJ:spykee(2manyminds records)
料金:前売り 3300yen / 当日3800yen (共にドリンク代600円別)
時間:開場19:00 / 開演19:30
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