多くの観光客や買い物客で賑わう週末の表参道や原宿の喧噪とはうってかわって、そこから隣接する青山や神宮前は、ゆったり過ごせるエリアです。1本中通りに入ると驚くほど緑が多く静かで、レトロなアパートや小さなオフィスをはじめ、お店やギャラリーなど、たくさんの個性的なスポットがあります。今回は青山〜神宮前エリアの街歩きスポットを紹介。まずは、南青山の『Buik』からスタートです。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
buik
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青山・神宮前エリアをぶらつく旅の出発点として最適な『buik』は、南青山にある隠れ家的なカフェです。店内は、オープンキッチンとテーブル席に分かれていて、オーナーシェフの増崎佳奈さんが提供する日替わりの朝食・ランチ・ティータイムメニューが楽しめます。
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2015年のオープン以来、『buik』はおいしくて手軽な料理を楽める場所としてその地位を築いてきました。朝食メニューでは、トーストしたての食パンに自家製のあんこを載せたものが、ランチでは週替りキッシュやサラダやスープが、そしてティータイムには、ケーキやスコーン、プリンなどの様々なスイーツを楽しむことができます。中でも、週替りのキッシュはとても人気で、「『buik』はキッシュ料理の専門店なのか!?」、と尋ねる人もいるほどだとか。
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増崎さんが、キッシュを好きになったのは、パリのベーカリー『Rose Bakery』で働き始めてから。パリでの経験から生まれた見た目も美しいカラフルなキッシュたちは、ランチタイムには、玄米サラダとグリーンサラダ付きで提供されるので、ちょっと早めの11時からのランチにもぴったりです。
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右:WAVES, Shimon Minamikawa 2016. Courtesy of artist and MISAKO&ROSEN.
店内の壁にある走り書きのペイントがユニーク。このペインティングは、ニューヨークを拠点に活動する南川史門さんの作品。ギャラリースペース『ミサコ・アンド・ローゼン』で行われていた南川さんの展示会を見た増崎さんが、カフェに「ちょっとパンクなものを取り入れたい」という思いでオーダーしたのだそう。都会の喧噪から離れた『buik』は朝8時から営業。朝の時間を優雅に過ごすのにピッタリなお店です。
はいいろオオカミ + 花屋 西別府商店
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『buik』を出て、青山通り方面へ歩いていくと、次のスポットである『はいいろオオカミ+花屋西別府商店』が見えてきます。アンティークものと生花を扱うこのお店は、シンプルな看板と道端にあるミニガーデンが印象的。その中をどんどん突き進んでいくと、ドライフラワーや、アンティークの額縁などがちらほら見受けられます。
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この小さなお店は、2014年からアンティークバイヤーでありインテリアデザイナーの佐藤克耶さん(はいいろオオカミ)と花屋の西別府久幸さん(花屋西別府商店)によって作られました。佐藤さんは以前からロシアや世界中から集めていたアンティークものを仕入れていて、西別府さんの野性的でエッジの利いた草木と掛け合わせることで、全く新しい世界が広がることを発見。何十年、何百年の時を経た家具や日用品が、草の根や土、草、樹皮の力を借りて、新しい命を授かったといいます。
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二人のコラボレーションぶりは、年季の入ったテーブルやディスプレイケースから感じる、「古」と「生」を組み合わせた作品の数々にも見て取ることができます。店内には、19世紀のミルクピッチャーにアジサイの花が挿してあったり、細い壁掛けの花瓶には実のなる枝が挿してあったりと、様々なたぐいの作品が陳列されていて、そのコラボレーションは見るものを飽きさせません。
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このお店はあまり人通りがない裏道の、さらに建物の奥に隠れているので、お客は口コミや、ポップアップイベントを通してやって来る人が大半のよう。そのおかげか、このお店には時間の感覚をなくしたような、静かな秘密の隠れ家のようになっています。何がみつかるかも、どこからやってきたのか分からない一品との出会いがあり、またそれが毎回の来店をより楽しみにしてくれるのです。
MAHO KUBOTA GALLERY
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最後に訪れたいスポットは、青山通りを渡り、外苑西通りを渡った先にある『MAHO KUBOTA GALLERY』。『はいいろオオカミ+花屋西別府商店』から歩いて15分くらいのところにあります。『MAHO KUBOTA GALLERY』は、『SCAI THE BATHHOUSE』の元ディレクター・久保田真帆さんが2016年の3月にオープンしたギャラリーです。
青山と原宿のおよそ中間に位置するこのエリアは、デザインや建築、ファッション関係の事務所が多くあったり、少し街歩きに慣れた人達が通うようなお店が点在している場所。
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久保田さんは、「アートは知識のある人だけが美術館で鑑賞するようなものでなく、毎日の生活の中にあるものであってほしい」と考えています。そのコンセプトの一環として、ギャラリーの企画展では、アートコレクターから一般の人々まで、様々な人に響くような作品を作るビジュアルアーティストを扱っています。
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これまでにも写真家・長島有里枝や、新進気鋭の画家・富田直樹、そして、取材時には米国を拠点に置くアーティスト・安部典子の展示が行われていました。
ギャラリーに入る前から荘厳な雰囲気を醸し出す一般的なギャラリーとは違って、『MAHO KUBOTA GALLERY』は、馴染みやすいロケーションと、開放感あるエントランスのおかげで、誰でもフラッと立ち寄るのに最適なギャラリーです。
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このエリアに10年以上住んでいる久保田さんも「すぐ近くにはお寺もあるし、そば屋さんやシャルキュトリ(ハムやソーセージの食肉加工品屋)もあります。お買い物の後や、ランチの後に立ち寄れるギャラリーにしたいんです」と話します。
まさに、街歩きと一緒に立ち寄りたいギャラリースペースです。
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MAHO KUBOTA GALLERY
住所:渋谷区神宮前2-4-7
営業時間:12:00~19:00
定休日:日曜日、月曜日、祝日
URL:https://www.mahokubota.com/
その他:2016年8月は休業、9月1日より企画展「TOKYO-LONDON-NEWYORK」開催予定
- プロフィール
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- ベン・デイビス
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オーストラリア出身の編集者。2010年より東京を拠点に活動。ローカルな視点から都市を紹介するオンラインマガジン「The Thousands」東京版の編集者としての経験をした後、2015年にCINRAに入社。ANAの訪日外国人向けサイト「Is Japan Cool?」にコラムを寄せるなど、地域の魅力を伝えている。
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