タイは国民の9割以上が上座部仏教を信仰し、歴史・社会・生活のあらゆるものが仏教と関わりのある仏教国。その中でも王室専用寺院の『ワット・プラケオ』、 巨大な黄金の寝釈迦像で知られる『ワット・ポー』、三島由紀夫の小説の舞台にもなった暁の寺『ワット・アルン』は三大寺院とも言われ、タイ観光のハイライトの1つ。でも、タイの見逃せない寺院はこの3つだけではありません。タイ国内にはコンビニの数より多くの寺院があり、その数だけ物語が存在します。特に首都バンコクには、タイが近代化する過程で建立された個性際立つ寺院がたくさん。今回は建築や写真好きなら訪れたくなること間違いなしの、バンコクのフォトジェニックな寺院をご案内します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
タイの宗教美術と西洋の建築美が融合する『ワット・ベンチャマボピット』
最初に紹介するのは、ドゥシット地区チットラダー離宮近くにある『ワット・ベンチャマボピット』。 タイ近代化に寄与した名君ラマ5世によって1899年に建築が開始され、現在も姿を留めるその寺院は、タイの文明開化の時代を象徴する建築物の代表格の1つ。(注:ちなみにワットとは「寺院」のこと)
タイでは『ワット・ベン』との略称で呼ばれるこの寺院は、『大理石寺院(Marble Temple)』という別名を持つように、屋根瓦以外のほぼ全ての建材はイタリア産の大理石。建設には、イタリア人建築家がデザインに携わっており、凛とした印象を与えるシンメトリーの本堂は、上から見ると十字形になっています。また、インテリアにも西洋の建築技法が多く導入されており、窓にはめ込まれたステンドグラスや古時計などがある本堂は、ノスタルジックな写真が撮れるスポットです。
そして寺院内では、タイで最も美しいと言われているピッサヌローク県『ワット・ヤイ』のチナラート仏を模した本尊もお見逃しなく。その前の台座の中には、ラマ5世の遺骨が安置されています。
本堂と繋がる回廊にはインド、スリランカ、日本など世界各地の貴重な仏像がぐるりと設置。そんな本堂の真裏に位置する場所が、赤と黄金の煌びやかなフレームの中にぴったりと本堂が収まる、フォトジェニックな『ワット・ベン』が。日中はもちろん、夕焼けや雨上がりの後など、いつ訪れても雰囲気のあるその姿を拝見することができるでしょう。
5バーツ硬貨の裏にも描かれている有名寺院でありながら、団体ツアー客が時々立ち寄るだけで、個人の参拝者はごくわずか。時間に余裕を持って滞在すると、時々ひと気がなくなる瞬間にも立ち会える寺院です。
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ワット・ベンチャマボピット(大理石寺院) / Wat Benchamabophit
住所: 69 Si Ayutthaya Rd., Dusit, Dusit, Bangkok
電話番号: 02-282-2667
営業時間: 8:00 – 17:00(本堂は17:00まで)
入場料: 20B(外国人)
宇宙のような天井画の『ワット・パークナム』と、隣接する奇寺『ワット・クンチャン』
次に紹介するのは、近年フォトジェニックスポットとして、話題の寺院『ワット・パークナム』。正式名称を 『ワット・パクナム・パーシーチャルン』と言い、アユタヤ王朝(1351〜1767年)の中期に建立されたと言われる、パーシーチャルーン区に位置する王室寺院のひとつです。
入り口のゲートをくぐり、宿坊や学校などを通り過ぎた後に現れるのが巨大な白いパゴダ。2012年に完成されたこの建物の中はホテルのラウンジのような豪華な空間が広がり、博物館としての機能するフロアや、儀式や瞑想を行う部屋などもあります。その最上階の5階にあるのが、天井に描かれた仏伝図と、仏舎利が納められている仏舎利塔。ライトの光を透過させ緑色に輝くガラスの仏塔と、宇宙を描いたようなサイケデリックな天井画は、近代寺院ならではの優美さがあり、どの角度から切り取っても絵になります。
ちなみに『ワット・パークナム』は、瞑想を積極的に取り入れている寺院。煌びやかな見た目とは相反し、静寂に包まれた心落ち着く場所となっているので、ひと通り撮影した後はひんやりとした大理石の床に腰を下ろし、この幻想的な空間をじっくりと堪能してください。また寺院は誰でも無料で見学することができますが、お祈りや瞑想をする参拝者の妨げにならないように撮影を。金色の柱は手を触れないように気をつけて。
寺院の名前『ワット・パークナム』は、タイ語で「河口の寺院」と意味するように、同階のテラスに出ると、敷地が運河に囲まれている様子が一望できます。そこから見える対岸の寺院が『ワット・クンチャン』で、運河に続くひっそりとした裏路地を進み、小さな橋を渡るとたどり着きます。
『ワット・クンチャン』は、小さな敷地ながら、極彩色の奇抜な巨大な像が所狭しと鎮座している寺院。ここバンコクでもここまで巨大なものはめずらしく、皆既日食や月食の際に行われる催事になると多くの参拝者が訪れ、真っ黒な花や蝋燭を供えていきます。
とにかくカラフルでエンターテイメント性もある様々な像の中から、お気に入りの像を見つけ出すのが、この寺院の楽しみ方の1つ。自らの髪から水を絞り出して洪水を起こし、瞑想する仏陀を妨げる幻想の魔物(煩悩)を撃退したとされる大地の女神と動物の像がたくさん並ぶ一角のように、鮮烈なシーンが随所に展開されています。
道中や帰り道にも、猫や路地で遊ぶ子供、駄菓子屋など、裏路地の生活感溢れるローカルな風景が続くので、表通りまでふらりと歩いてみてください。
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ワット・パークナム / Wat Paknam
住所:Soi Ratchamongkhon Prasat, Pak Khlong Phasi Charoen, Phasi Charoen, Bangkok
電話番号:02-467-0811
営業時間:8:00 – 18:00
定休日:無料
URL:https://www.facebook.com/WATPAKNAM.BKK/
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ワット・クンチャン / Wat Khunchan
住所:1144,Thoet Thai Rd. 28, Talat Phlu, Thon Buri, Bangkok
電話番号:02-465-1901
入場料:無料
URL:https://www.facebook.com/watkunchan/
夕方がベスト! 360度の パノラマビューを望める黄金の丘『ワット・サケット』
バンコクで一番美味しいと名高いパッタイ屋『Thip Samai』と、2017年にミシュラン一つ星を獲得したローカル食堂『Jay Fai』も軒を連ねるMaha Chai Rd.のすぐ側、バンバット地区にある寺院が『ワット・サケット』。アユタヤ王朝の時代からある寺院が、今の名前に改名されたのは現王朝が創設された年である1782年。その後、幾度と改装が行われては頓挫し、19世紀中頃のラマ5世の時代になり、この人工の丘の上の寺院が完成しました。(注:1940年代に、侵食を防ぐためにコンクリート舗装されています)
丘の周りを300段以上の階段がらせん状に巡り、その頂上にある寺院の屋上には『ワット・サケット』のシンボルであるスリランカ由来の仏陀の遺物を祀った仏塔がそびえ立ちます。ここは地上から約80mあり、バンコクの街が一望できるため、かつてはチャオプラヤ川を行き交う船の監視にも使われました。時を経た現在でも、旧市街地には景観保持のために低い建築物しかないこともあり、頂上からはチャオプラヤ川対岸のワット・アルンや、シーロムの高層ビル群など新旧のバンコクの街を一望することができます。
この『ワット・サケット』で最も美しい時間が、日没から閉館となる夜7時までのマジックアワーの時間帯。空と街並みが刻一刻とオレンジから青色に変化していく様子はドラマチックで、旅情を誘います。お祈りと鐘の音が響く中、時折涼しい風が吹き抜ければ、バンコクの喧騒から離れて異国に来たような気分を味わえるでしょう。
また、この『ワット・サケット』は、訪れる度に違った表情を見せるのも面白く、新年や仏教祭日、11月のお祭り・ローイクラトンの期間には大勢の参拝客で溢れかえり、仏塔は赤い布で覆われます。
暑い日中に参拝する方に、ぜひ立ち寄っていただきたいのが、丘の中腹にあるカフェ『Golden Mount Coffee』。冷たいコーヒーがいただけるので、休息にどうぞ。
また、『ワット・サケット』は「黄金の丘(The Golden Mount)」と呼ばれるように、離れた場所から見ても、頂上の黄金の仏塔が圧倒的な存在感を放ちます。周辺には路上でステンレスの托鉢を製作する職人が見られるBan Bat Rd.など、旧市街ならではの街並みが広がるので、合わせて立ち寄ってみてください。
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ワット・サケット / Wat Saket
住所: 344 Boripat Rd. , Ban Bat, Pom Prap Sattru Phai , Bangkok
電話番号: 02-621-0576
営業時間: 8:00 – 19:00
入場料: 50B(外国人)
URL: https://www.facebook.com/watsraket
バンコク三大寺院の1つ。神秘的で幻想的な夜の『ワット・ポー』
最後に紹介するのが、冒頭でも記したバンコクを代表する寺院のひとつ『ワット・ポー』。『王宮(Grand Palace)』の横、また『ワット・アルン』の対岸に位置し、黄金に輝く全長46mの巨大な寝釈迦像と、境内にはタイ古式マッサージ総本山の学校がある地として知られています。
タイ国内の寺院では王族専用の寺院『ワット・プラケオ』に次ぎ最も高い格付けの寺院とされており、寝釈迦像はラマ3世の命により1832年に造立されました。寺院内の多くの建築物もこの時代に改築されたもので、タイ、中国、インドの様式が混在したスタイルを見ることができます。
お寺の入り口は、王宮に面したThai Wang Rd.側。果てしなく続く白い壁と、厳重な警備、トゥクトゥクのコントラストは、このエリアの風物詩です。広大な敷地を丁寧に見て回ると半日はかかるほど見所はたくさんあるので、道中疲れたら境内のマッサージで一休みを。
そして定番とは異なる、一味違った風情を感じられるのが、夜の『ワット・ポー』。閉館後、辺りもすっかり静まり返った頃に訪れると、寺院の南側Chetuphon Rd.の中ほどにある扉がひとつ、ひっそりと解放されます。ここから誰でも無料で敷地内に入り、深夜23時まで境内を自由に歩いて見て回ることが可能。寝釈迦像がある建物などは閉鎖されていますが、美しい建築物や回廊に並ぶ仏像、タイの伝統医療を記した資料や像など、見どころがたくさん揃います。
深夜の『ワット・ポー』は、ほとんど人とすれ違うこともなく、静寂そのもの。ライトアップと言うには薄暗い僅かな光を頼りに歩みを進めると、色鮮やかな大きな仏塔が現れます。日中に見える太陽の光とは逆の、下から照らす光は細やかなディティールを浮かび上がらせ、その神秘的で威厳ある光景に思わず足を止めて見とれてしまうでしょう。
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ワット・ポー / Wat Pho
住所: 2 Sanamchai Rd, Grand Palace, Pranakorn, Bangkok
電話番号: 02-225-9595
営業時間: 8:00-18:30 ※チケットの販売が18:30まで。
それ以降、23:00まで、南側(ChetuphonRd)の入り口から、一部無料で入場可能。
入場料: 200B(外国人)
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ワット・ポー
住所 : 2 Sanamchai Road, Grand Palace Subdistrict, Pranakorn District, Bangkok
営業時間 : 8:00-18:30(ワット・ポー)※チケットの販売が18:30まで。
それ以降、23:00まで、南側(ChetuphonRd)の入り口から、一部無料で入場可能。
8:00-18:00(マッサージ)
定休日 : なし(仏事、王宮行事などにより、全部・一部閉館になることもあり)
電話番号 : 02-225-9595
Webサイト(マッサージ) : http://watpomassage.com/
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