金閣寺、銀閣寺、清水寺などの王道も良いけれど、京都にはいわゆる素朴なお寺もたくさんあります。今回は、現役の僧侶と仏教ファンが運営している京都生まれの話題のフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」で『お坊さん日和。』を連載中の漫画家・みつざわひろあきさんと一緒に、お寺と住職さんを訪ね、街歩きをします。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
本山佛光寺
まずはじめに訪れたのは、下京区にある四条駅からもほど近い『本山佛光寺』。広い境内に一歩入ると、目の前に立つ存在感のある大きなお堂、真宗佛光寺派の本山です。ちなみに本山というのは、仏教の一宗派を統括する寺院のこと。木造の聖徳太子立像を所蔵していることでも有名で、重要文化財にも指定されている由緒正しいお寺です。まずは、お参りから始めましょう。
みつざわ:正面から右側が大師堂(御影堂)で、左側が阿弥陀堂。大師堂では親鸞聖人像、阿弥陀堂にはご本尊阿弥陀如来像が安置されていて、大きな御堂が2つあるのが特徴です。お寺に参ったら、片方だけではなくぜひどちらにも手を合わせてくださいね。手を合わせて拝むことを、“合掌”といいます。ただ手をあわせるだけで、心が静まり落ちつけるでしょう。
お堂から出るとその境内に、ショップ・ギャラリーとカフェ『D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学』があります。「本山佛光寺の境内にこのショップができた時は衝撃でしたね」とみつざわさんはいいます。ショップには、京都の工芸品やロングライフデザインの生活道具、本などが揃えられており、ギャラリーは月に1度のペースで展示内容が変わり、京都造形芸術大学の生徒の社会実習・発表の場としても使われています。
みつざわ:普通、お寺のお土産物屋さんって、定番のお菓子が並んでいるだけだったりしますが、ここは京都にちなんだデザイングッズなどが買えるところがいいですよね。
カフェでは、季節を味わえるメニューがいただけます。お茶所を改装した店内には、備え付けられていた仏壇もそのまま置かれています。お昼ご飯に100%美山産の「ゆう豆」を使った「美山のゆばうどん」をいただきました。
みつざわ:優しい味で美味しいですね。こうやってランチをしていると、お寺の境内にいるとは思えません。お寺にお参りするついでに買い物やカフェをしたり、またはその逆もあったり。お寺に訪れる若者の目線をきちんと考えられている場所ですよね。観光で行く寺とはまた違う魅力が凝縮されています。
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D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学
住所:京都市下京区高倉通仏光寺下ル新開町397 本山佛光寺内
電話番号:075-343-3217(ショップ)、075-343-3215(カフェ)
営業時間:10:00〜18:00(ショップ)、11:00~18:00(LO 17:00)(カフェ)
定休日:水曜日
URL:http://www.d-department.com/jp/shop/kyoto
大善院 / 大善院ギャラリー「おてらハウス」
続いて『本山佛光寺』から徒歩2分ほどの場所にある、『大善院』にお邪魔することに。『大善院』は、本山佛光寺の塔頭(たっちゅう)寺院という関係となっているお寺です。住職のご自宅の敷地内に併設されていて、まさに町のお寺という感じです。そして境内にある『おてらハウス』は、貸しギャラリーとして使われており、『大善院』の佐々木住職ご自身もマンガ家として活動されています。
みつざわ:『おてらハウス』には芸大時代の恩師の展示を見に来たことがあるんです。絵画やイラスト展など、趣向を凝らした催しをされていて興味深いですね。
佐々木住職:オープン時は11年前。うちのお寺は、家の離れのような場所にあるので、常時開けておくことが難しいということもあって、閉鎖的な状態になりがちでした。
みつざわ:なるほど。多くの地元の寺院が抱えている悩みですよね。
佐々木住職:だからこそ、ギャラリーでした。お寺の敷居を低くしたいという想いと、色んな方が出入りするオープンな場所になってほしいと。ひいては、仏教を身近に感じてもらえるきっかけにもなればと。障がい者福祉にも興味があり、障がい者アートの展示も多くおこなわれています。車椅子でも上がりやすいよう、バリアフリー対応にしていたり。昨年から、精進料理が食べられるカフェも1階にオープンしました。
みつざわ:継続的に開いているお店や場所があるというのは、大切ですよね。ご住職の工夫や想いが伝わってくるところが人間味溢れて面白いです。観光寺院にはない、こういう独自に頑張っている地元の寺院の存在をもっと知ってほしいですね。
京都 坊主BAR
次に訪れたのは、四条烏丸駅と大宮駅から徒歩10分くらいの場所にある『京都 坊主BAR』。織田信長で有名な本能寺の変の跡地もすぐ側にあります。『京都 坊主BAR』は、現役の僧侶が作務衣(さむえ)姿で迎えてくれるオーセンティックなバーです。会社帰りのサラリーマンや女性客、海外旅行客など幅広い層のお客さんが気兼ねなく訪れる人気店となっています。
みつざわ:実は、想い出の場所なんです。漫画家になりたいという夢と、仏教の勉強との両立に悩んでいた学生の頃、そんなもやもやしていた時期にお邪魔しました。羽田住職にかなり人生相談をしたかと思います(笑)。その時、お店のカウンターにあったフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」を手に取ったことから、漫画を冊子に描くという現在に至ったんですよ。
羽田住職:そうでしたか! それは嬉しいですね。
みつざわ:このお店を始めたきっかけはなんですか?
羽田住職:45歳のとき、お寺に人を呼ばなければいけない! お寺をもっと有名にしなくてはいけない! と考えていました。でもいつしか、一般的な形でなくても、僧侶としての役割が活かせる場があるのではないかと考え始めるようになって。お寺は敷居が高い印象がある。ならば目線を変えよう。敷居を下げて、多くの人が集まれるバーをつくってみては、と思ったんですよね。
みつざわ:なるほど。僧侶がいるバーということで、学生の時の僕みたいに悩み相談をするお客さんが多いんでしょうか?
羽田住職:少なくはないですね。だけど、一般的なバーとして使ってくれている方がほとんどです。ただ、仏教をもっと身近に感じてほしいという想いはいつもあって、帰り際に、仏教についてのちょっとしたお話を簡単にまとめたメモをお渡しします。バーに来てくださった100人のお客さんのうち、1人でも仏教に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。日々、お経を読むだけではない僧侶のあり方を探っています。
みつざわ:部屋の隅にも仏壇があったり、呼び鈴として仏壇に置かれる「お鈴」を使われていてユニークですよね。
羽田住職:お客さんに「お鈴をこんな風に使っていいの?」という反応をよくされます(笑)。これは、既存の価値観を取り払うことで心が自由になっていくという、仏教の教えに由来しています。バーでありながらも、様々な価値観が混ざり合うサロンのような場にしていきたいですね。
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京都 坊主BAR
住所:京都市中京区油小路通蛸薬師下る山田町526番地
電話番号:075-252-3160
営業時間:18:00~24:00 (LO.23:30)
定休日:日曜日(振り替えの場合もあり)
URL:http://www.bozu-bar.jp/
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フリースタイルな僧侶たち
これからの仏教のあり方を考える本物の僧侶によって運営されている、フリーペーパー・WEBマガジン。既成概念に固執することなく、日本仏教のあり方をフリースタイルに見つめ直していくために活動。「お坊さん=お葬式」というイメージを脱却し、仏教の持つ豊かな可能性に出逢っていただくためのきっかけ作りとして発行されている。
- プロフィール
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- みつざわひろあき
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1989年新潟県長岡市生まれ。真宗大谷派僧侶/漫画家。「フリースタイルな僧侶たち」のフリーペーパーにて漫画「お坊さん日和。」を連載中。仏教を「表現」することを目的とし、関西を中心に漫画発表・ニガオエ・ライブペイント・法話・お参りなど活動中。
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