大名は「福岡らしい街」。宮野秀二郎が案内する、ベネとの大名散歩

福岡の街と言えば、博多、天神、その次に出てくるのは、おそらく「大名」でしょう。大名は、百貨店やファッションビルが集中する福岡の中心地・天神のすぐ隣にあり、徒歩10分ほどあれば端から端まで渡れるほどの小さなエリア。ファッションフリークにはお買い物スポットとしても知られており、週末は若い人で大賑わい。今回は、HereNow FUKUOKAのキュレーターでもあり、この街にアパレルショップを構える宮野秀二郎さんにエスコートをお願いし、ブログ「ベネの福岡!」でも知られる福岡在住のフランス人・ベネさんをゲストに迎え、大名を巡ってきました。「福岡が大好き!」と語るベネさんの目に、はたして大名はどのように写るのでしょうか……!?

本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

新店から老舗までが集まる、福岡の人気エリア・大名

待ち合わせは、大名の中心部「紺屋町商店街」。かつて城下町として栄えた通りで、現在はアパレルショップをはじめ、昔から続く老舗商店やレトロな建築物、人気の飲食店などがギュッと集中する約200mのストリートです。

今回の大名巡りのアテンド役の宮野秀二郎さんは、かれこれ20年以上前から大名で遊び、働き、そして自身のアパレルショップも同エリアに3店舗展開するという、生粋の「大名ッ子」。一方ゲストのベネさんは、フランス出身で現在は福岡でWEBデザイナーとして働く20代の女の子で、「まだ大名には4回程度しか来たことがない」とのこと。

宮野:大名はアパレルショップが建ち並ぶので昼間は若い子が多いけれど、飲食店もたくさんあって夜は夜でお酒飲みが集まる街なんですよ。あ、見て見て、あの店は古い和菓子屋でね、塩豆大福がすっごい美味しいから今度食べてみて。斜め向かいのショップはね、僕が20年前にアパレルの下積み時代を過ごした『NYLON』というショップが入ってた場所。そしてあのビルの2階にはね……

と、さっそく宮野さんの軽快な大名案内がスタートです。

NOBO(ノボ)

宮野さんがまず案内してくれたのは、紺屋町通りの北部にある古着ショップ『NOBO(ノボ)』。独特のオーラを放つ店主・ノボルさんがフランスで買い付けた古着を扱うショップで、福岡のショップスタッフやクリエイターなど、街のファッショニスタがこぞって訪れるお店です。ベネさんとは「フランス」が共通点ということと、大名の今のファッションシーンをリードするお店ということで、宮野さんは一軒目にここを選んだとか。

宮野:店主が本当に変わり者で(笑)。もともと僕の店のお客さんだったんですが、当時は学生だったけれどその頃から他の人とは違うオーラが漂わせていましたよ。ほら、彼が着ているパッチワークの洋服を見たら、型にハマらない自由な雰囲気が伝わりますよね。彼は大阪の古着屋で働いた後に、福岡に帰ってきて自身のお店を出したんです。

ノボル(店主):大名は僕にとって、ファッションに目覚めさせてくれた街ですからね。

宮野:うんうん。しかも、大名って若い人が出店にチャレンジできる街。ここで成功した人たちがやがて天神や東京に進出していくケースも多々あります。

『NOBO』ではメンズ6割、レディース4割をラインナップ。所狭しと並ぶヴィンテージウエアに初訪問のベネさんも興味津々! 洋服以外にバッグやシューズなどの小物もあり、「おもしろいバッジがある!」とベネさん。

ベネ:このバッジ、好き! 意味のないおかしなフランス語が書かれていて、クスッと笑えます。これは「カナダの糖尿病の会」だって。シュ〜ル〜。

宮野:おもしろ可愛いよね。ところで、ベネちゃんは普段どんな服を着るの?

ベネ:以前はドール系の可愛らしい服が好きでしたが、今は少しテイストが変わってきていて、シンプルなデザインを選ぶことが増えました。あと、通勤で毎日3kmくらい歩くので、ヒールパンプスよりスニーカー派になりました。あ、このフリルの白シャツ可愛いな! 『NOBO』さんはゴチャゴチャしてなくて、商品が見やすいですね。

宮野:『NOBO』はいわゆる古着らしい古着というより、独自の雰囲気をまとった服を揃えてるんだよね。ちょっと変わったものからキレイめまで、絶妙な色づかいのセレクトも魅力。店主のセンスがめちゃくちゃ良くて、東京でいうなら中目黒にありそうなイメージ。ノボ(店主)の接客しないスタイルにはびっくりしたけど(笑)、彼のそのスタンスが好きだね。

天井には杖を繋げたオブジェが飾られ、アーティスティックな空気感も醸し出しています。年に4〜5回の買い付けでは、特に縛りを設けず、現地の空気感や直感で自由にセレクトするのだとか。そんな店主のセレクトを楽しみに、学生から30〜40代まで幅広いファンが足繁く通っているお店です。

NOBO(ノボ)
住所:福岡県福岡市中央区大名1-11-25 駒屋ビル2F
営業時間:13:00~21:00
定休日:平日15:00〜20:00、土日祝13:00〜20:00
URL:https://www.instagram.com/nobostore/

Ace in the Hole

続いて二軒目は、宮野さんが営むレディースのヴィンテージショップ『Ace in the Hole(エース・イン・ザ・ホール)』へ。『NOBO』から徒歩3分、ビルの2階へとのぼり、店内へ一歩入るや否や、別世界の空間が広がります。広々とした店内には、アメリカから買い付けてきたハイデザインなインテリアやたくさんのオブジェとともに、色とりどりの古着がズラリ。ベネさんも開口一番に「可愛い!」と嬉しそうな表情。

ベネ:すご〜い、オシャレ! この建物は、もともとこういう内装だったんですか?

宮野:いや、この空間はイチから全部自分たちで作りました。おっきな椅子や照明を、アメリカから持って帰ってきてね。奥はヴィンテージルームにしていて、その横のフィッティングルームもぜひ見てほしいな。

ベネ:うわぁ、面白い! この壁のイラストは、アーティストに描いてもらったんですか?

宮野:そう。試着室は子ども部屋みたいなイメージで作りましたよ。

ベネ:広いし可愛いし、思わず試着室に行きたくなる感じ。普段は私、洋服屋さんでの試着が苦手なんですが、ここはワクワクするし、ゆっくりできそうで、他のお店とはちょっと違いますね。洋服もカラフルなものが多くて、見ているだけでも楽しい!

宮野:うれしいな〜。せっかくだから、宮崎店長にベネさんに似合う服を選んでもらおうか!

服や小物の買い付けは、すべて宮野さんによるもの。ディテールが凝ったものや、配色や柄で個性を表現できるもの、パンチのあるデザインからひとひねりが効いたデザインなど、女性心をグッと掴むラインナップ。ちなみに、日本中にファンがいる人気のインスタグラマー御用達ショップとしても有名で、「福岡に来たら絶対いく!」と県外客が口を揃えていうほど話題のお店。店頭に立つ店長の宮崎美香さんに服選びを相談すれば、きっと自分にぴったりのものが見つかるはずです。ベネさんも店長にトップスをピックアップしてもらい、いざ試着へ。

ベネ:着てみました。どうでしょうか?

宮野:かわい〜〜〜! すっごく似合いますね! 自分のものにしているなぁ。

ベネ:胸元のヒラヒラがタイプです。私はセーラー服のデザインが好きなので、このヒラヒラ部分が少し似ていて嬉しい!

宮崎(店長):ベネさんが白やネイビーが好きだと言っていたので、シンプルめの白い服を選びました。スカートにインして、例のヒラヒラを強調させてみました。

ベネ:ちょっと大人っぽいから、仕事の打合せにも着ていけそう♪

ベネ:このブレスレットとイヤリングもキュートですね!

宮野:ベネちゃん、アクセをつけた瞬間、表情がキラキラしたよ! そういうところが、女子ならではだね〜。

ベネ:店長さんが優しく洋服を紹介してくれて、人見知りの私でも安心できました。自分の中での新しいファッション観やスタイリング法を発見できるのは、とっても嬉しいこと。いつも同じお店でショッピングしがちなので、もっといろいろな服にチャレンジして楽しみたいです。

『Ace in the Hole』では、デザインが印象的なものや派手な服が人気で、若い子はもちろん、大人っぽいヴィンテージスタイルや、ゴツめのバングルの重ね付けを楽しむ30代女性の姿も。もちろん、古着なのですべて一点物。ビビッときたものは買い逃しのないようにしてください。

Ace in the Hole(エース・イン・ザ・ホール)
住所:福岡市中央区大名1-15-30 天神MIEZビル2F
営業時間:平日12:00〜20:00、土日祝11:00〜20:00
定休日:なし

リトルハニー 大名店

さて、歩き回って喉が渇いたところで、「僕のおすすめのコーヒーショップへ行きませんか?」と宮野さん。案内してくれたのは、入りくんだ細道やニッチな店が多い、何とも大名らしいロケーション。紺屋街通りから一本入った路地裏にあるコーヒースタンドの『リトルハニー』に来ました。

ここは、福岡を代表する自家焙煎コーヒーショップ『ハニー珈琲』の暖簾分けのお店で、スペシャルティコーヒー専門店。3〜4人入れば店内がギュウギュウになるコンパクトなスタンディング形式の作りで、店主の野方寿倫さんとカウンター越しに会話を楽しむ人や、サッとテイクアウトを購入して街歩きする人など、朝からお客さんが絶え間なく訪れています。大名にはこだわりのコーヒーを提供するカフェがたくさんある中で、宮野さんが同店を選ぶ理由は何でしょう?

宮野:やっぱり、店主・野方くんの人柄が良いからですよね。おすすめはなんと言ってもスペシャリティコーヒーと、苺の王様「あまおう」を使ったイチゴのスムージー。

なんと、ここで衝撃の事実が発覚。実はベネさんはコーヒーもイチゴも苦手…! となると、『リトルハニー』の二大看板を味わえない…!? と、一同がザワついたところで、店主・野方さんがニッコリ笑いながらひと言。

「実は裏メニューがあるんです」。

野方(店主):黒板の表面はコーヒーやラテなど、ごくごくシンプルなメニューを書いていますが、苦いものが苦手な方のために、裏面にキャラメルラテやジンジャー系などの甘いドリンク、リキュール系も用意しているんです。

ベネ:ジンジャー、大好きです!

野方(店主):屋久島のジンジャーシロップは、結構カァ〜ッと喉が熱くなる辛さです。でも柑橘の果物も使われているのでフルーティな甘さや風味が広がりますし、お湯割りができて、ジンジャーエールが好きな方はソーダ割り、もう少し甘さを出したいならリンゴ割り、あとはミルク割りやビール割りにしても合うんですよ。

宮野:いや〜、野方くん、ワクワクさせるねぇ。彼のこの、愛のある提案力が醍醐味なんです。

ベネ:う〜ん、どれも気になる…! どうしよう、じゃあ、ジンジャーシロップのリンゴ割りにしようかな!

宮野:僕はいつもの水だしコーヒーで!

宮野さんは毎朝ここへ来て、アイスコーヒーを飲んでお店へ出勤するのが習慣となっているそう。また大名界隈のショップスタッフも同様に、多くの人が出勤前や休憩中の一服を楽しんでいくのだとか。

ベネ:いただきます。わぁ、喉がカッとします〜。でも美味しい!

宮野:うん、今日も安定の美味しさ。ところでベネちゃん、今回の大名はどうだった?

ベネ:すごく楽しかったです。今まで勇気がなくて入れなかったオシャレなアパレルショップに潜入できて、洋服もすごく可愛かった! まだ4回しか大名に行ったことがなかったので、道や位置関係がわからなくて、実は今も迷路の中にいるような感覚です。

宮野:大名は、細い路地や似たような通りがたくさんあるからね。確かに、僕の店でも初めて大名を訪れたというお客さんの多くが、「大名は迷路みたいだ」と言っています。ここにひしめく路面のショップは、個人経営のお店がほとんどで、都心のファッションビルに入っているショップとはひと味違うんですよね。それが「福岡らしい街」だと僕は思っています。

ベネ:『リトルハニー』さんに行く途中の路地の雰囲気や古い建物に、この街の歴史と文化を感じました。今度、カメラを持って散歩したくなりました。

宮野:古いお店も新しいお店も横並びで繋がっていて、みんな仲が良いんです。このコミュニティ性が大名の魅力だね。

ベネ:都会の中にある「村」みたいな感じ?

宮野:そう! 良い表現だね、まさに小さな村。洋服屋をやってる僕らは、ここで育ったようなもの。やっぱり居心地が良いんです。

ベネ:今日宮野さんと大名を回ったことで、これからたくさんお気に入りのショップを見つけたくなりました。歩いていて気になる看板や景色、お土産に良さそうな小物を色々見つけたし、天神にはない面白いものがまだまだありそう。今度、私のブログで紹介したいです。

「次に機会があったら、違ったルートの大名案内をしますよ! いつでも連絡してください。そして僕と一緒に、店の前で人間観察しましょう(笑)。」と二人は約束を交わし、本日の大名案内、これにて終了。後日、ベネさんのブログで大名散策の模様がアップされるかもとのことなので、「ベネの福岡!」の更新もお楽しみに。

リトルハニー 大名店
住所:福岡県福岡市中央区大名1-3-5 ARKCUBE101
営業時間:11:00〜20:00 金土祝前日は21:00まで
定休日:月曜日
URL:http://www.honeycoffee.com/
Facebook:https://www.facebook.com/littlehoneydaimyo/
プロフィール
宮野 秀二郎 (みやの しゅうじろう)

ビンゴボンゴ・グループ代表。アパレル、飲食を運営する傍ら、大名地区を盛り上げる活動に取り組む。最近の主な活動として「Fashion Week Fukuoka」や「MUSIC CITY TENJIN」など、福岡を代表するイベントで大名地区を取り込む役を担い、日々奮闘中。また自身でも新たな名物イベントを作るべく、福岡市と共催で「SEA PICNIC」というイベントを開催。生まれも育ちも福岡な、福岡愛に溢れた男。

ベネ

1987年生まれ、フランス出身のWEBデザイナー。福岡の街の雰囲気や人の優しさに惹かれ、移住を決意し、2012年に福岡暮らしをスタート。仕事の傍ら、自身のホームページ「ベネの福岡!」で福岡や九州の情報発信を展開。100万人がアクセスする人気サイトに。夢は福岡・九州のPRやインバウンドの仕事、そして観光大使!



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