耳に残る澄んだベース、エモーショナルなギターリフ、そしてメロディックなドラムスが特徴的な高雄出身のロックバンド『エレファントジム | Elephant Gym』。2016年には日本でもアルバムをリリースし、サマーソニックにも出演するなど、注目を集めています。そんな高雄で生まれ育ったメンバー張凱婷(ティフ / ベース)、張凱翔(テル / ギター、ピアノ、シンセサイザー)、涂嘉欽(トゥ / ドラムス)の3人が青春の思い出がたっぷりつまった高雄のベイエリアを案内してくれました。
>高雄の人気バンド・エレファントジムが案内する、ノスタルジックなベイエリア その2
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
今回エレファントジムの3人が案内してくれたのは、台湾南部の高雄市の西側に位置する西子湾エリア。夏には海水浴客でにぎわう西子湾海水浴場や、海品公園など海の風景を思う存分に楽しめる高雄の中でも特に人気が高いエリアのひとつ。また日本統治時代の面影を残す建築物が数多く存在する、歴史を感じられる場所でもあります。
書店喫茶・一二三亭
MRT西子湾駅から5分くらい歩くと、住宅街の中に突如白いのれんがかかった日本家屋が。ここ『書店喫茶・一二三亭』は、1914年台湾が日本に統治されていた時代に、日本人向けの料亭として建てられたお店。のれんをくぐり2階へ上がると、そこは大正時代にタイムスリップしたかのような空間が広がります。
今では珍しくなった木枠の窓から優しい太陽の光が店内いっぱいに広がり、また店の調度品もアンティーク調にまとめられ、日本と高雄の歴史を一度に味わうことができます。
長椅子のソファ席はゆっくりお喋りをするのにぴったり。テル(左)は台湾茶から作られたミルクティー、ティフ(中)は烏龍茶から作られたクラフトビール、トゥ(右)は緑茶をオーダー。
テル:もしライブツアーではなく個人的に旅行をするなら、こういう古い建物のお店をわざわざ探します。普段は、デジタルな世界に囲まれているから、重厚感あふれるアナログな場所に入ることでバランスをとることができると思うんです。
トゥ:玄関にのれんがあるようなお店は最高だよね。一枚の布で外と内を分けてくれて、内側にいると安心できる。
実は、ベースのティフとギターのテルは兄妹。エレファントジムの3人は、ティフとテルのおじいちゃんから譲り受けた古い家屋をスタジオ代わりに使用し楽曲の制作活動を行っているのだそう。そんな環境もあってか、同じく昔の面影を濃く残した『書店喫茶・一二三亭』では、肩の力が抜けた3人を見ることができました。
10月末でも、30度を超える夏日の高雄。3人は冷たいものを食べようと言い、街へと繰り出しました。
大碗公
続いてエレファントジムの3人が私たちを案内してくれたのは、高雄名物のかき氷のお店。
港町としての顔を持つ高雄には、大きな魚市場があり、昔から魚の鮮度を保つための氷の生産が盛んでした。この日、訪れたかき氷店『大碗公』は、もともと魚用の氷工場でしたが、夏場に漁師や学生たちに暑さをしのいで欲しいという思いから、かき氷店に転身したそう。取材当日も「涼」を求めて多くの人でにぎわっていました。
『大碗公』のかき氷は、氷の上に黒糖から作られた甘いソースを氷の上にたっぷりとかけ、その上にフルーツをのせていきます。ボウルからこぼれそうなほどのボリューム。
最後に小豆とプリンをぽんっと乗せれば、看板商品『大碗公かき氷+プリントッピング』のできあがりです。
学生時代3人は、友だちと下校途中、かき氷屋さんで1つのボウルを、よくみんなで分けて食べたそう。「台北よりもシロップが甘いのが高雄のかき氷の特徴なんです」とテルは教えてくれました。
エレファントジムは、元々高雄で結成し、一度台北で活動をしながらも、その後、また高雄に戻って、今も活躍するバンド。カキ氷を食べる彼らに、なぜ以前住んでいた台北からまた故郷である高雄に戻ることを選んだのかを聞いてみることに。
テル:最近は台湾だけではなく、海外でもライブをする機会も増えてきました。台湾の外に出るなら、高雄にも国際空港があるから不便は感じません。もちろん台北にいたほうがチャンスは増えるかもしれない。でも、僕たちがバンドを続ける理由は、お金のためではなくて音楽をしたいから。それなら家族が近くにいて、自分が自分でいられる高雄がいいと思って帰ることを決めたんです。
ティフ:私は音楽ができるなら、このメンバーで演奏ができるならどこでもいいんです。だから兄が「おい、帰るぞ!」って言ったとき、「うん、じゃあ帰ろう!」ってなりましたし。
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大碗公 創始店
住所:高雄市鼓山区濱海一路107号
営業時間:10:00~00:00
定休日:無休
電話番号:07 533 3228
最寄り駅:西子湾駅
URL:http://www.icebig.com.tw/
フェリーに乗って旗津半島へ
『大碗公』を出るとすぐそこにはフェリーターミナル『鼓山輪渡』が。ここから出港するフェリー乗ると『旗津半島』に行くことができます。夕暮れ少し前、船内は帰宅途中の学生や地元の人で溢れていました。
バイクに乗った人たちも一緒に乗り込みます。ローカルの人にとっても、高雄の生活に欠かせないフェリー。
3人は港内の景色を楽しむために外のデッキに。日が少し傾き、潮風がぱたぱたと彼らシャツの裾を揺らします。
ティフ:私は、高校生の時に剣道を習っていたんです。このフェリー乗り場の近くに道場があったから、ここに来ると防具の匂いとか青春時代のことがバッと頭に浮かんでくる。
テル:僕は高校時代にボランティアサークルの副部長をしていて、部員を連れてこのフェリーに乗って旗津に行き、ボランティア活動をしていました。
トゥ:テルは真面目な人だよね(笑)。僕は高校時代、ここに彼女とよくデートに来たなぁ。彼女が僕の腕を引っ張って一緒に船に乗り、旗津半島の海産街を二人で歩いて、最後は沈む夕日をぼーっと二人で眺めて。
たった10分ほどの短い乗船時間の間、波の音を聞いて、すれ違う船に手を振り、学生時代の思い出話を聞かせてくれた3人。ステージ上の表情とは全く違う、素の3人を垣間見れた気がしました。
- プロフィール
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- Elephant Gym
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2012年に結成、台湾高雄出身のマスロックバンド。メンバーは張凱翔(テル, Tell Chang)<Guitar, Piano, Synthesizer>、張凱婷(ティフ, Tif Chang)<Bass>の兄妹と、涂嘉欽(トゥ, Tu Chia-Chin)<Drums, Percussion>の3人。テクニカルなプレイと、ベースサウンドを主体としたセンスあふれる楽曲が評判を呼び、これまでにも数々のフェスに出演する。
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