イラストレーター・谷小夏と巡る、京都市役所周辺のカフェ感覚で楽しめる酒場 その1

今年、京都精華大学を卒業したばかりのイラストレーター・谷小夏さん。花びらが舞い散る中でキスをする男女や、同じ服装に身を包む女性たちの像など、ポップでドラマチックな人物画が注目を集め、関西圏を中心にファンを増やしています。今回は、そんな谷さんにご登場いただき、カフェに行くような感覚で、お店の雰囲気ごと楽しめる酒場をはしごしてみることに。「実はお酒が苦手」という方も大丈夫。少量のワインやノンアルコールドリンクとともに、美味しい料理や店主との会話を楽しむというのも、京都の過ごし方の一つです。スタートは、谷さんがホームページのイラストを手がけた『Işıl ışıl(ルシュルシュル)』。谷さんの思い出の地でもある鴨川にも立ち寄りながら、京都市役所周辺のスポットを巡りましょう。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

Işıl ışıl(ルシュルシュル)

まずはじめに訪れたのは、谷さんがホームページのイラストを手がけたお店『Işıl ışıl(ルシュルシュル)』。

京都市役所前駅から北へ徒歩5分、トルコ語で「明るく輝く」という意味を持つ『ルシュルシュル』は、その名の通り、オフィスビルが並ぶ通りの中で夜になるときらめきを放ちます。夫婦二人で営んでおり、奥さんが料理を、旦那さんがワインを担当。アットホームな雰囲気でありながら、洗練された料理と良質なワインが揃う、大人のためのイタリアンレストランです。

谷:ホームページに掲載する料理写真の撮影の時に、ほとんどのメニューを試食したんですけど、どれも美味しくて、可愛いものばかり。

谷さんのオススメは、柔らかな食感に味がよく染み込んだ「タコのアッフォガート」。しかしこの日は残念ながら仕込み中で、代わりにマスターが用意してくれたのが、最初の一皿として人気の「ゆでたまごとアンチョビ」。たまごとアンチョビの間に挟まれた緑の香味野菜ソースが、複雑な味わいをプラスした逸品で、一口頬張るなり、「これは絶対お酒に合う」と谷さん。

谷:実は私、お酒はあまり飲まないんです。でも以前、個展を開いた際に「スナック小夏」というお酒のイベントをしたことがあって、その時、ルシュルシュルさんが作ってくれた、高知の土佐小夏を使った「生搾り小夏サワー」は大好きなんです。

すかさず、「今日は自家製のレモンチェッロがあるよ。炭酸で割ろうか!?」と提案する店主の旦那さん。

それをいただいた谷さんも「爽やかで美味しい!」と絶賛でした。

続いて、2皿目は「熊本の桜肉のカルパッチョ、赤ワインのソース」。真っ赤な馬肉に、卵黄の黄色、そして少量のチーズが彩りよく盛り付けられた、見た目も美しい一皿。これがまた、上品でお酒に合いそうなのです。

店主:この料理には、やっぱり赤ワインが合うよ。試しに飲んでみたら?

谷:飲めるかなぁ……あ、飲みやすい! 本当はお酒が飲めると、料理を味わう楽しみが広がる気がするから、もっと飲めるようになりたいんです。

店主:だったら質の良いお酒を飲むといいよ。それから、良いシチュエーションで楽しく飲むのが、悪酔いしなくていちばんだよね。

食事も進んだ所で、谷さんに『ルシュルシュル』との思い出を聞いてみました。

谷:初めてここに訪れた時、青いタイルのカウンターが印象的でした。だから、最初の一枚は、カウンターとその奥で働く土橋さん夫妻のイラスト。二人ともなかなか、似ていると思いませんか(笑)!? 今、ホームページで見られる絵は季節替わりで全部で12枚。料理を囲んでピクニックしている人々の絵や、空を飛んでいる女性の絵もあります。だんだんと描いているうちに、お店を描かなくても『ルシュルシュルを描いた絵』だとわかるようになってきたのです。

谷さんは描かれている人物たちが、どんなシチュエーションにあるかは決めずに描き出すそう。カウンターで会話に夢中になる男女の絵など、いったいどんな関係なんだろうと想像力が膨らむのも、谷さんの絵の魅力です。

恋人や友人と、少し背伸びして訪れたい『ルシュルシュル』。ホームページでは、お店のロゴをクリックすると、谷さんのイラストがランダムに表示されますので、是非そちらも合わせてチェックを。

Işıl ışıl(ルシュルシュル)
住所:京都府京都市中京区麩屋町通二条下ル尾張町225 第二ふや町ビル 1F
営業時間:17:00~24:00(L.O.22:45)
定休日:火曜・第3水曜
URL:http://lshlshl.com

まつは

そして次に伺ったのは、『ルシュルシュル』から徒歩すぐのところにある『まつは』です。

こちらは、骨董好きの西村姉妹が2014年にオープンした古民家カフェ。「一汁三菜」の体に優しいランチが地元の人にも京都らしさを求める観光客にも人気ですが、実は、夜のアラカルトメニューも姉妹が工夫を凝らした変わったものがたくさんあり、そちらもオススメです。

今回、ここに来るのが初めてだという谷さん。アンティークテーブルの席や畳に掘りごたつなど様々なタイプの席の中から、自然光が差し込む庭の前を選び、うっとり外を眺めました。

オーダーしたのは、「アメリカンチェリーのソーダ割り」「イチジクの胡麻だれ」「枝豆の八角醤油漬け」「実山椒のテリーヌ」の四品。甘みのあるイチジクを胡麻だれでいただく、高級割烹でしか見ないような一品に、定番の枝豆やシャルキュトリーも、他とは一味違う調理法で丁寧に手作りされています。そしてフルーツのシロップは、好みでアルコール有り・無しの両方オーダー可能です。

谷:甘いものが大好きだから、甘いカクテルは嬉しいですね。チェリーがまるごと入っていて、とても贅沢な気分です。

『まつは』は、骨董市や京都のアンティーク店、雑貨屋さんなどで集めているという、店内の小道具も魅力的。お店で使われている器は、白山陶器の茶碗や作家ものなどこだわりのものばかりです。なお毎月最終土曜日には、西村姉妹の審美眼で選んだ食器や小道具などが販売される「おふく市」も開催されています。

谷:素敵な器を見たら、妄想してしまうのが、陶芸の工房に行ってお茶碗を作るというデート。透明なガラスに絵付けとかもいいですね。

西村由佳(まつは):実は、谷さんが来店されるのを楽しみにしていたんです。私にとって『ルシュルシュル』は家族で行くお店。ホームページのイラストが可愛いなと思って気になっていて。

そして『まつは』からすぐ近くにある、西村さん行きつけのビストロ『フレンチバード』でも、谷さんの噂を聞いていたそう。

谷:そうやってイラストの仕事を通して、いろんな人に知ってもらえてとっても嬉しいです。

素敵な庭がある「まつは」は、季節感や外の空気を感じつつ、ほろ酔い気分に浸りたい時にオススメ。西村さんが仕事の終わりに立ち寄るという『フレンチバード』は、まつはの斜め前にあるので、是非併せて訪れてみてください。

3軒目は「みず色クラブ」へ。その2に続く

プロフィール
谷小夏 (たに こなつ)

1993年大阪生まれのイラストレーター、画家。2016 年京都精華大学デザイン学部ビジュアルデザイン学科イラストレーションコース卒業。色鉛筆を使った人物のイラストが、初個展 「MY LIFE」(kara-Sギャラリー、2015年2月24日〜3月1日)や「京都精華大学 卒業制作 展」(2016年2月 17日〜21日)で話題となる。現在、雑誌等で活躍中。



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