ギター、ベース、ドラムがシンクロして奏でる、銃弾のような音が鮮烈なスリーピースバンド・空間現代。京都の劇団・地点とのコラボレーションが話題となったり、『京都メトロ』や『UrBANGUILD』でのライブなど、京都とは何かと縁深かった3人が、結成10周年を迎える2016年、ついに東京から京都に移住! そして9月には、メンバー自ら運営する制作スタジオ兼ライブハウス『外』をオープンしました。今回は、空間現代のメンバー・野口順哉さん(guitar/vocals)、山田英晶さん(drums)、古谷野慶輔さん(bass)とともに、『外』をはじめ、地点の拠点『アンダースロー』や本屋『ホホホ座』など、カルチャースポットが点在する左京区浄土寺エリア周辺を巡ります。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
外
京都の街中からバスで20分ほど。白川通沿いのバス停「錦林車庫前」下車すぐの、黒塗りレンガのクールな建物が、空間現代の新しいスペース『外』です。
野口順哉(guitar/vocals):最初物件見学に来た時は、自販機が置いてあるだけの「無料の休憩所」だったんだよね。
山田英晶(drums):そうそう。防音設備なんて全然整っていなかったし、本当にこのスペースをライブハウスにできるのか? と半信半疑でした。
建物全体のデザインはメンバー・スタッフ全員でアイデアを出しながらつくりあげたもので、『外』の特徴的なロゴは、野口さんと古谷野さんの大学の先輩であるデザイナー・石塚俊さん、看板は上賀茂のおしゃれな金物屋『BOLTS HARDWARE STORE』に別注。ホールを囲む長い廊下は防音のために後から作ったものだそう。深緑色に塗られ、夷川通のアンティーク照明店『PARABOLA』の照明が光り、独特の雰囲気が漂います。
ホールにはスペースの広さに対し余裕を持って音が出せるような、ハイグレードなスピーカーを導入。京都で有名なPA集団「Slim Chance Audio」が音響を担当しています。「音の良さには自信があります」と野口さん。
9月のオープニングイベントは、空間現代のワンマンライブを3夜連続で開催し、初日には地点の三浦基さんと批評家の佐々木敦さんのトークイベントも行われました。さらにPhewや山本精一、Hair Stylisticsなど空間現代が敬愛するアーティストを招致したり、関西拠点のMADEGGやYPY(goat)がコーディネートする企画を行うなど、毎週末イベントが満載。今後も空間現代のディレクションのもと、様々なアーティストを招いてライブを行う予定だそうです。
野口:僕らが面白いと思うアーティストたちとも関わりを持っていきたくて、その結果、様々な人を招くライブハウスという形態に辿り着きました。ただの貸しスペースにしたいわけではなく、『外』のクオリティや色をどんどん出していきたいですね。
ホールと廊下の間にあるコンパクトで温かみがある物販スペース。ここでは、オープンを記念して発売したカセットテープ作品『地面』をはじめ、TシャツやCDなどのグッズ、ドリンクが購入できます。
古谷野慶輔(bass):こんな狭いスペースしか取れなかったんだけど、いい感じにしたくて。だったら「キオスク」みたいなイメージでいこうとなったんだよね。
山田:工事中はずっと進捗が不安だったけど、バーカウンターができたときはほっとしたよね。これでオープンできるって。
空間現代はみんなお酒好きということで、世界最古の醸造所が作るドイツのビール「ヴァイエンシュテファン」や、メンバーお気に入りの「箕面ビール」など、ビール類は特に充実。
ちなみにもうひとつのお気に入りは、ホールの端にある脚立に板を乗せただけのカウンター。制作の間に3人が一息つく場所だそうです。
ライブの情報はホームページにて随時発表。面白い企画が続々更新されているので、ぜひチェックしてみてください。
ホホホ座
続いて訪れたのは、2015年にオープンしたカルチャー名所『ホホホ座』。松本伸哉さんが営んでいた古書店『コトバヨネット』の1Fに、山下賢二さんの新刊書店『ガケ書房』が移転してきて合体したユニークなスポットです。
山下:もともと空間現代が所属するレーベル『Headz』は、うちでも取り扱いがあったんです。「ファッツァー」(空間現代が音楽を担当した地点の作品)も観ていたから、空間現代のことはだいぶ前から知っていました。
野口:でも、直接お話ししたのは今年の春。僕が挨拶に行ったんです。なにしろ、僕らがこの場所(浄土寺周辺)でやっていこうと決心できたのは、『ホホホ座』のおかげですから(笑)。
山田:これは冗談ではなく、本当のこと。街中から外れた場所だけど、『外』に来るお客も『ホホホ座』と一緒に訪れてもらえるかもとか、いろいろ心強かった。
『ホホホ座』の面白いところは、本だけではなくCDや服飾雑貨、食べ物までありとあらゆるものが売っているところ。2Fではセンスの良い器など、生活雑貨も置いています。山下さんはそんな『ホホホ座』のことを、「本屋というよりはお土産屋さん」と表現します。
野口:この秋刀魚のトートバッグ、いいですね。
山下:お目が高い! ホホホ座のオリジナル商品なんですけど、ファッションエディターの祐真朋樹さんも愛用してくれているんですよ。
ということで野口さんは、トートバッグをお買い上げ。秋刀魚という奇抜な柄がトートバックにナチュラルに溶け込んでおり、じわじわと笑いが込み上がってきます。
京都のカルチャー界隈では知らない人はいないであろう存在の山下さん。『ホホホ座』の運営だけに留まらず、書籍の執筆から編集、ほかにも展覧会や音楽イベントの企画など書店の枠に収まらない、幅広い活動をしています。
野口:音楽イベントはどんな企画をしているんですか?
山下:落語に合わせて、ミュージシャンの山本精一がノイズを合わせるというイベントをやったり。そういえば、ちょうど今さっき山本さんはお店に来てたんやけど(笑)。
野口:面白いですね! 『外』でホホホ座プレゼンツのライブもやってもらいたいな。
山下:いいですね。今までは近所の集会所ややお寺などでイベントをやっていたから大きな音は出せなくて……。
11月には京都の三条大橋近くに新店をオープンし、まさに勢いに乗りつつある『ホホホ座』。いつ行っても「面白い!」に出会える、カルチャー好きに愛される新しい聖地です。
- プロフィール
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- 空間現代 (くうかんげんだい)
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野口 順哉(guiter / vocal)、古谷野 慶輔(bass)、山田 英晶(drums)からなるスリーピースバンド。 編集・複製・反復・エラー的な発想で制作された楽曲を、スリーピースバンドの形態で演奏。これによるねじれ、 負荷が齎すユーモラスかつストイックなライブパフォーマンスを特徴とする。2016年9月、活動の拠点を東京から京都へ移し、自らの運営するスタジオ/ライブハウス「外」を左京区・錦林車庫前で開始する。
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